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集落襲撃

ゴブリン達をスパイとして送り帰してから一週間が経とうとしていた。


この一週間何もしてなかったわけではない。


ゴブリン達を村へ帰すとき、ザンギにあることを命令しておいた。


それは集落から狩りに出掛ける時、部隊に加わりこちらのテリトリーへ仲間を誘導することである。


集落に30体前後いたとしても、食料調達の五体程の部隊ならチョロいもんである。


ゴブリン達は大体2日に一度の間隔で部隊を出していたので、ザンギに使役魔法のかかっていない仲間を連れてこさせ、次々とこちらの配下に取り込んでいった。


正確な数は分からないが今では集落の半分程がこちらの手に落ちている状態だろうか。



(そろそろ出るか。)



さすがに待つだけというのも飽きてきたので、そろそろ出ようかと思う。


ザンギに作戦は伝えてある、配下のゴブリン達にもザンギの命令を聞くよう伝えてあるので準備万端だろう。


既にこの戦いは掃討戦ではなく、いかに敵の被害を抑えて勝つかに変わっていた。



言葉にしてみると何かおかしなものである。



夜になるのを待ち進軍する、程なく集落が見えてきた。


木の寄せ集めで作ったようなあばら家が数軒ある、あの中で何も気付かず寝ているのであろう。



思わず口角が上がる。



大木の元で寝ているやつもいるようだ。


手元に1匹おき、残りの狼モドキ達は集落を囲むように散開させる。

集落側も見張りは立ててたみたいだが、全てこちらの配下の者だった。



手間がかからず助かる。



見張りのやつらに命令して各自あばら家の中へ行かせる。



ーギェギィー



一軒のあばら家の中から声が響いたのを切っ掛けに、次々と辺りから叫び声が上がり出す。


配下にして送り込んでいたゴブリン達が魔法のかかっていないゴブリン達を襲い出したようだ。


死なない程度にいたぶれとは命令しているが、まぁ全てのゴブリンに通じたかどうかは半信半疑だ。


あばら家から逃げ出すように出てきた1体のゴブリンに、使役魔法を放つ。


ここ一週間腹いっぱい魔物を食べて睡眠を取ってきたので、魔力は満ち溢れている。


先程のゴブリンが痙攣しだしたのを目の端に捉え次に向かうと、飛び出してくるやつに片っ端から魔法をかけまくる。


中には奇襲をすり抜けこちらに襲いかかってくる者もいたが、護衛の狼モドキが動きを牽制し魔法の詠唱時間を稼ぐ。


森へ逃げようとするものには、周りを囲む狼モドキ達が吠え立て中央へ押し戻す。


それでも無理矢理突破しようとするものには、狼モドキ達の鋭利な爪や牙が容赦なく突き立てられる。


仲間だと思っていたものに突然寝込みを襲われ、何が起きたか分からぬ内に殴られ昏倒する。


次々と倒れているゴブリン達に魔法をかけて回る。


実に快調な滑り出しだった、このまま行けば予定より早く戦いは終わるだろう。


ただ順調過ぎただけに油断があったのかもしれない。



ーヒュンー



頬に鋭い痛みが走る。


振り返ると矢が地面に刺さっていた。



「チッ!!」



慌てて弓者を捜すが見つけたときには矢をつがえ、こちらに向けて狙いを定める状態だった。


呪文を放つが同時にあちらも矢を射る。



(くっ、やられるっ!)



相手を殺すよう命じられた矢は、その役目を果たそうと唸りを上げて目標へ突進む。



ードサー



なんだか動きがスローモーションに感じる。


体から血の気が引いていく。



あぁ死んだのかと思った。



ただ消えていった命は私のモノではなく、盾となり首元に矢を受けた狼モドキのモノだった。









時間にすれば30分くらいであろうか。


敵であったほとんどのゴブリン達が地面に伏した状態になっている。


辺りを静寂が包み、戦いの終わりを告げた。


こちらの被害は反撃されやられた配下のゴブリンが2体と、盾となり死んでいった狼モドキの1匹。


ほとんどのゴブリン達は使役魔法により配下に加えることができた。


ただ執拗に逃走を計ったゴブリン2体と、必死に抵抗したのか殴られ過ぎて瀕死のやつは自分の手で殺した。


今は辺りに隠れているものなどがいないか配下の者たちに探させている。


思えばこちらの世界に来て、死というものに一番近い瞬間だったかもしれない。


いくら神から特別な能力を与えられても、それは万能でないのだ。



今思えば油断があった。



慢心していた。




圧倒的に自分より強者のものが多く、容赦なく牙を向けてくるこの世界で油断などしてはならないのだ。


横たわったままピクリとも動かない狼モドキの首元から矢を引き抜くと、その首筋に自らの牙を突き立て肉を喰らう。



「私は死になどしない…死んでたまるか!」



口元を真っ赤に染め弱き魔物は夜空に吠えた。



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