表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

意外な戦果

今日は朝から巨大昆虫集めに勤しんでいる。



「ふぅ、結構増えたな。」



ゴブリンの足元で百足モドキ達が蠢く。


使役魔法を駆使して昆虫集めに精を出した結果、そこそこ頭数は揃ってきた。


戦力としては大した事ないが、駒としては役立つ。


狼モドキ達は斥候以外休ませてある。



ーガサガサー



近くの草むらが揺れて、斥候に出していた狼モドキが顔を出していた。



どうやら敵が動いたようだ。



近くの木によじ登り確認すると、5匹のゴブリン達が森の中を歩いているのが確認できた。



(多分食料集めの狩り部隊だな、あんだけの集落じゃ食い物もたくさん必要だろうから。



)


予想した通り敵は部隊を出してきた、各々武装はしてるが5体なら戦えるだろう。


敵がある程度集落から離れ方角を確認したあと、木から飛び降りる。



「お前達は先回りして合図を待て。」



「ガウ!」



脚の速い狼モドキ達には招集をかけ先回りさせると、ゴブリンは百足モドキ達と共に走り出した。


敵が少数になるのを待ったのには、いくつか理由があった。


戦いになったとき現勢力で勝つためと、自分の使役魔法がゴブリン相手に通じるか確証が持てなかったからである。


ゴブリンを魔法で配下にできれば、相手の戦力を減らした上にこちらの戦力を上げる事ができる。


まさに一石二鳥だ。


ある程度走ったあと速度を緩め辺りを警戒しながら進むと、先の方からギャーギャーと声が聞こえてきた。


眼を閉じ己に魔力を込めると、狼モドキ達の居場所を確認する。


敵の前方に扇型に広がり、合図を待っているようだ。


まだ気付かれていないが、敵の察知能力が分からないので先に百足モドキ達を突撃させる。


敵がいたであろう場所が騒がしくなったのを確認してから、自分も急いで魔法の届く距離まで走ると木によじ登りゴブリン達を視野に捉える。


既に百足モドキは4匹になっていたがなんとか善戦しているようだ。


呪文を唱えると、一番近くにいた槍を持つゴブリンに向かって魔法を放つ。





ービクンー




槍を振るっていたゴブリンが、その場に倒れて痙攣しだした。




「かかった!」




効果があったのを確認すると、次の目標に向けて呪文の詠唱を始める。


2体目が倒れ痙攣しだしたところで、敵もこちらに気付いたようだ。


こちらから逃げるようバラバラに撤退しだす。


見た事もないような魔法で、仲間が二人も倒れた状況では逃げるのが得策なのは分かるが判断が遅すぎだった。



「今だ囲め!」



出番を待っていた狼モドキたちが、ゴブリン達を一斉に取り囲む。


退路を断たれたゴブリン達は、ギャーギャー言いながら元いた場所に戻される。



あとはこちらの一方的な展開だった。



包囲網を突破できず、こちらに近付けない内に使役魔法を唱える。


最後の一体が倒れるまで、大して時間はかからなかった。




こちらの被害は、最初に突撃させた百足モドキの5体のみ。


最初から相手を混乱させるための捨て駒としか考えていなかったので、特に痛手ではない。


逆に狼モドキ達に被害が出なかったのは幸運だろう、狼モドキ達は貴重な戦力なのだから。


一応魔法が効かなかった時は百足モドキの奇襲で相手が混乱している内に、後方から狼モドキ達に襲わせるつもりだった。


多少こちらの被害も覚悟はしていたが結果は逃走阻止の役割だけで済んだ。



「立て、ゴブリン達。」



5体のゴブリン達がのそのそと立ち上がる。



「全員付いて来い。」



狼モドキ達にも付いてくるよう言う。


集落からある程度距離をおいたので戦闘には気付いていないと思うが、ゴブリンの別部隊や他の魔物が近寄ってこないとも限らないため場所を移した。


少し開けた場所が見つかったので狼モドキ達に辺りの防衛を命じたあと、自らの前に並ぶゴブリン達を観察する。


各自、棍棒や短剣といった武器を所持していた。


ただ素人目に見てもどれもボロボロであり、短剣には刃こぼれが目立つ。


鎧に関しても鉄の鎧など装備している者はおらず、何かの皮なのであろうがどす黒く変色した鎧を着ていた。


自分で使うそうなのといえば棍棒と鎧くらいか。



「お前ら言葉は話せるか?」



半ば無理を承知で尋ねてみる。



(まぁ無理か…)



「オレ ハナセル。」



周りより一回り体の大きなゴブリンが、一歩前に出てきた。



「お前話せるのか!話せるのはお前だけか?」



少し興奮して声がうわずってしまう。



「ホカノヤツ ハナセナイ オレダケ」



どうやら突然変異か何からしい、他より一回り大きい体もそのせいか。



(自分は特別だと思っていたが、まさか話せるやつがいるとは…これは良い拾い物したかな?)



体もデカいし人間で言えばそのガタイはプロレスラーみたいなものか。


情報が欲しかったので集落のことなど幾つか質問したが、集落で生活している人数などは聞いても分からなかった。


そもそも数を数えるという知識がないようなので、仕方のないことだった。



(突然変異のやつで知能は小学生くらいか…頭が悪いというか知らないだけみたいだし、教えればイケるかもしれないな。)



「お前名前とかあるのか?」



「ナマエ ワカラナイ。」



どうやら名前という概念もないようだ。



「よし、今日からお前の名前はザンギだ。」


「ザン…ギ」



「そうだ、ザンギと呼ばれたらお前が来いよ。」



プロレスラーみたいな体をしてたので、某格ゲーキャラから名付けてみた。


自分よりデカいゴブリンを配下に加えたと思うと、何か満足感のようなものを感じる。



(私も器が小さいな。)



ザンギに幾つか命令をし、ゴブリン達を一旦集落へ帰した。


手ぶらで帰すのもあれだったので狼モドキ達に狩りをさせ、角兎を2匹土産として持たせた。


せっかく得た戦力を手元に置けないのは残念だが、集落に潜伏させスパイとして最大限役に立ってもらう。


今日は魔力を使い過ぎた、周りは狼モドキ達に見張らせ角兎でも食べながら寝ることにする。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ