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身分を隠して執事をしている王子と恋に落ちました

作者: 井上さん
掲載日:2026/08/29

名前を借りました


フィクションです

 私は小説のヒロインであるバーマンに転生した。




ラガマフィン侯爵がメイドに手を出してできた子で、それまでは平民として市井で母と暮らしていた。

 元メイドの母親が亡くなり侯爵家に引き取られた。



…今日から貴族だ!



 小説では、姉にいじめられている所を、執事に何度も助けられ、姉が学園を卒業する時に、姉が私をいじめたことで断罪される。

 私は、本当は王子だった執事に求婚され、幸せになる…


 これからバラ色ヒロインライフの始まりよ!!




 大きくて豪奢な邸に連れてこられて、父であるラガマフィン侯爵から、夫人と姉を紹介された後で、使用人も紹介された。


お金持ちっぽい!家具も豪華だし、部屋もたくさんある。


あっ!執事服のイケメンがいる!!


…これが王子が身分を隠している執事か…


早速攻略しよ!


 まずは、侯爵夫人を泣き落として、煽てて味方につけた。チョロい。




 あてがわれた豪華な部屋。豪華な家具。肌触りの良い新しいドレス。

今まで住んでいた家が丸ごと入るし、なんなら学校の教室より広い。


さっすが貴族!


高そうなお茶を飲んだあと、イケメン執事を探す。


…いた!イケメン執事!


私は目を潤ませて、執事に訴えた。


「お姉様が意地悪するの!」


 上目遣いで見ると、イケメン執事が


「大丈夫ですか?お嬢様」


 と心配そうに言った。


「私の事を守って…」


 イケメン執事の胸元に飛び込んだ。


「お任せくださいお嬢様」


「ありがとう」


 私はまた上目遣いでイケメン執事を見た。


「ずっとそばにいてね」


…チョロい。チョロ過ぎる。

これで、王子は私のものよ。



 イケメン執事は、私専属になった。


やった〜!毎日イケメン見放題。イケメンを侍らせるなんて、すごい優越感。


王子は私のもの!




 私は、事あるごとに、姉にいじめられたとイケメン執事に訴えた。


そのたびに、イケメン執事に抱きついた。

イケメン執事は、優しく私の頭を撫でてくれた。


 実際には、姉は意地悪をしてこなかった。

もしかして、姉も転生者で、断罪されたくないのかも?


私から王子を奪うつもりかもしれない。

…そうはさせないわ!

徹底的に潰してやる。


姉には気を付けておかなくちゃ!






※※※


 私バーミーズ・ラガマフィンの執事は2人いる。


イケメンのコラットと地味眼鏡のラグドール。


妹としてやって来たバーマンは、イケメン執事を優遇し、自分の執事にしたが、本当の王子はラグドールのほうだ。


 コラットを王子っぽく見えるようにしたから、王子だと思ったのだろう。元々イケメンだったし。

小説だとヒロインは転生者だから、妹も転生者なのだろう。



 ラグドール王子は第2王子で、第1王子より優秀だと思われそうになったから、王太子に持ち上げられないように、急病で離宮で療養している事になっている。

実際は、我が邸で執事をしているが。


 身を隠しているのだから、王子に見えないようにするのは当たり前なのだ。




 ヒロインの姉である私バーミーズは転生者だ。


ヒロインが意地悪姉から、執事に助けられて王子妃になる小説のストーリー。



 だが私は、バーマンから王子を守る為に執事を2人にして、わざと王子を地味眼鏡にした。



 小説では、ヒロインは学園で、色々な男子生徒と仲良くなる。


 姉に意地悪される可哀想な妹をアピールして、執事だった王子に姉を断罪させ、王子と結婚するが、散財はするし、浮気もする。

 そして、浮気相手の子を身籠るのだ。


ヒロインは、チヤホヤされるのが好きだった。


学園で公爵令息や騎士団長の子息を侍らせていた。なのに、結婚後の浮気相手は別にいる。


 そんな我儘ヒロインに振り回されて、王子は苦労する。




ラグドール第2王子は、私の初恋の君。


 苦労するのが分かっていて、放ってはおけない。






※※※


 ラガマフィン侯爵家の執事の私コラットは、いずれ侯爵家の養子になり、跡継ぎになる予定だ。


 バーミーズお嬢様の親戚で、将来、お嬢様が嫁に行くから、養子になる私が侯爵の跡を継ぐ為、勉強しているのだ。


 だが今は、執事として過ごしている。

どちらにしても、領地経営を勉強するのだから、問題は無い。元は男爵子息なのだから、待遇はたいして変わらない。


 時期が来たら、侯爵家の養子にするから、とバーミーズお嬢様に頼み込まれた。

お嬢様は、自ら侯爵の後継者としてのマナーや教養を教えてくれた。


私を執事にしたのには、何か理由があるのだろう。




 もう1人、一緒に執事になった地味眼鏡のラグドールがいる。


勉強しなくて良いんじゃないかというくらい頭が良く優秀だった。ちょっと、ライバルとして意識しているが、相手にされていない。

ラグドールも、お嬢様を慕っている。




 ある日、ラガマフィン侯爵家に女がやって来た。


 侯爵がメイドに手をつけてできた娘らしい。市井で囲っていたが、母が亡くなり、引き取ったのだという。


…バーミーズお嬢様と1歳しか違わない。


妻が妊娠中に浮気したのか?


貴族とは、そんなものなのか?




 その女、バーマンが


「お姉様が意地悪するの!」


 と言って来た。


まさか、バーミーズお嬢様が意地悪などする筈がない。浮気相手の娘ごとき、何の価値も無い。


 話を合わせて別れたあと、お嬢様にその事を伝えた。


…お嬢様は、バーミーズお嬢様しかいない。

愛人の娘はお嬢様と呼びたくない。


バーミーズお嬢様は


「悪いけど、あの子の相手をしてあげて。あの子の話を聞いてあげてほしいの。母親を亡くして、気が動転しているのよ」


 何て優しいお嬢様。一生お嬢様について行きます!!




 私は、コラットに抱きつかれながら、お嬢様のお願いを思い出し、心を無にして耐えた。


 だって、俺が本当に好きなのは…






※※※


 私は、本当はこの国の第2王子ラグドールだが、身分を隠して、ラガマフィン侯爵家で執事をしている。


兄より優秀だと思われそうになり、私が王太子に祭り上げられないように、急病で離宮暮らし…ということにして、侯爵家で世話になっている。


 この家の令嬢バーミーズお嬢様は、私ともう1人の執事コラットと共に、領地経営を学んでいて、最近は執務をしている。

 男爵子息であるコラットに、マナーや教養を教えていて、素敵な淑女だった。


 コラットを、キラキラ王子様風に見せ掛け、私には眼鏡を掛けさせた。

 地味だから、誰も王子とは思わないでしょ、と、こっそり言われた。

…私の事情を知っているらしい。


 バーミーズお嬢様は、努力家で、きさくで優しくて可愛い。


お嬢様なら、王子妃もやれるんじゃないか?


いつか父上に相談してみよう。




 ある日、お嬢様に妹ができた。


侯爵がメイドに手をつけてできた娘らしい。

市井で囲っていたが、母が亡くなり引き取ったとか。


お嬢様と1歳しか違わない。


…私なら絶対に浮気しない。


 妹のバーマンは、コラットに


「お姉様が意地悪するの!」


 と言っていた。


まさか。バーミーズお嬢様がそんな事をする筈がない。嘘つきめ。


コラットは、バーマンと別れたあと、お嬢様に報告していた。


「悪いけど、あの子の相手をしてあげて。あの子の話を聞いてあげてほしいの。母親を亡くして、気が動転しているのよ」


 とお嬢様が言っていた。


コラットを頼りにしているのか…


…私も、お嬢様に頼られたい。


もっと勉強して、剣も練習してお嬢様を守れるようになって、お嬢様から頼られたい!




 バーミーズお嬢様とは、小さい頃に出会った。


母親同士が学園時代の友人だから、よく、王妃である私の母に呼ばれて、お嬢様の母が王城にお茶会に来ていた。

 お嬢様も連れてこられて、私と遊んだ。

つまり、幼馴染だ。


私は、お嬢様に一目惚れした。


こんなに可愛い人がいるなんて…


だから、お嬢様に釣り合う男になりたくて、勉強も剣術もがんばった。


そうしたら、兄上を剣術で負かしてしまった。


 兄上より優秀だと言われ、王太子として祭り上げられたら、後継者争いの種になると母に言われ、私は急病に掛かった振りをする事にした。離宮に閉じ籠もる理由が必要だった。


 それを可哀想に思ってくれたお嬢様の母が、執事をしないか、と言ってくれた。

お嬢様と一緒に勉強して、兄上の王太子の立場が盤石なものになるまで待つと良い、と言われ、承諾した。



…お嬢様と一緒にいられる。



それが全てだった。






※※※


 学園に通う事になった。


ここが舞台の学園か!何だかキラキラしている。


姉は2年生、私は1年生。


早速、姉を貶める作戦開始よ!

私は学園に通うなり、クラスメイトに


「お姉様に意地悪されるの…」


 と、泣き真似をしてみせた。


クラスメイトは同情してくれた。


チョロいなぁ。


その中に、公爵家の令息サイベリアン・メインクーンがいて、泣き落として煽てて味方につけた。


 チョロい。

本当にヒロイン最高!!


サイベリアンが、何度も姉に抗議しに行くお陰で、姉の噂は学園中に広まった。


 サイベリアンがそばにいて守ってくれる。

顔も良いし性格も良いし身分も高い。


王子と結婚したら、愛人にしてあげようかな?


 王子は、私にメロメロだから、愛人くらい許可してくれるだろう。






※※※


 愛人の娘バーマンが、お嬢様に意地悪されていると嘘をつき続けている。


 敬愛するバーミーズお嬢様を侮辱されて、気分が悪くて、相手にしたくない。

でも、バーミーズお嬢様からのお願いだ。我慢だ。


性悪女は、ラガマフィン侯爵様にも嘘をついた。


 侯爵様は、正妻の娘バーミーズお嬢様より、愛人の娘を大事にした。母親を亡くしたから気を使うのは仕方ない。だが、バーミーズお嬢様本人から話も聞かずに注意するのは、どうなのか?


 夫人だって、自分の娘を大切にしろ。

煽てられたからと愛人の子を可愛がるのは仕方ない。


「私の可愛いバーマンが優しくて可愛いのを妬んでいるのね」


 じゃないよ。優しくて可愛いのはバーミーズお嬢様だ。そいつは嘘で人を貶める腹黒だよ。地獄に落ちれば良いのに。


しかも、そいつは、夫の浮気の成果だぞ。気付けよ!許すなよ!!


 早く養子になって、成人して侯爵位を継いだら、侯爵も夫人も愛人の娘も、纏めて領地に閉じ込めてやる。




 性悪娘がまた、嘘泣きして抱きついてきた。


お嬢様の命令だから仕方ないが、本当に気持ち悪い。






※※※


 バーミーズお嬢様の悪い噂が、学園に流れているという。


大方、愛人の娘が流した嘘の噂だろう。


 何故、噂を真に受けて、真実を調べないんだ?

貴族ともあろうものが、嘘の噂に踊らされるなんて、恥ずかしい。


そんな不忠者は、王家には要らないな。


 バーミーズお嬢様付きのメイドが、お嬢様の事を色々教えてくれる。


だから、噂の事を知れたのだ。

大切なお嬢様。絶対に守りたい。


私の正体を知っているのは侯爵と執事長だけ(の筈だが、お嬢様は知っているようだ)。


 執事長に、学園でバーミーズお嬢様の嘘の噂を流しているのが、愛人の娘だが、どう対処したら良いか相談した。


 執事長から、国王にも相談してみると言われ、少し安心した。

それなら、と、私は国王への手紙を託した。




 ある日、愛人の娘と邸の廊下ですれ違った時に言われた。


「そんな不細工で生きてる意味あるの?」


 不敬だな。

その前に、人としてあり得ない。


「あっ!私の王子様!」


 愛人の娘は、コラットを見付けて走り寄った。


 あいつを王子だと思っている?

何で王子だと思った?


あいつには悪いが、その性悪女に絡まれずにすんで助かった。


 地味で目立たなくしてくれたお嬢様のお陰だ。


お嬢様が幸せに暮らせるように、何とかしたい。






※※※


 小説では、姉が断罪されるのは、卒業パーティーで、だった。


私は今2年生。卒業は3年生。

あと1年ちょっとだ。でも、嘘の噂の中で白い目で見られながら学園生活を送りたくない。


 勿論、噂を信じずに、私が無実だと理解してくれる者もいる。

実際に私と過ごすクラスメイトだ。


 だが、私と関わらないほとんどの生徒は、公爵子息サイベリアン様の発言を信じた。


他人を貶すのは、楽しいのだろう。


 わざわざご注進にやってくる正義感の強い猛者もいる。


根本から間違っていると知ったら、どんな反応をするのだろう?




 とにかく、私は早く卒業する為に、猛勉強して飛び級をした。


卒業後はどうしようかな?


 卒業後は、まず、コラットを我が家の養子にして、後継者になってもらおう。コラットには苦労をかけている。


 ラグドール王子はどうするんだろう?

小説では、断罪の後、王宮に戻り王子として執務をし、妹と婚約。


 妹は、まだ学園生だったから、婚約してからも学園で、公爵子息と騎士団長の子息と、こっそり逢瀬を楽しんでいた。

マメな事だ。


 公爵子息と騎士団長の子息が、王子の婚約者、からの王子妃と浮気なんて、この国の将来は大丈夫なのか?




 いっその事、どこかの国にラグドール王子と2人で留学でもするか?


留学するなら、早めに準備をしないと。


ラグドール王子にも、希望を聞かないとね。






※※※


 2年生になった。

サイベリアンの他に、騎士団長の子息ラパーマを味方につけた私は、無敵だった。


父である侯爵も、夫人も、私の味方。

イケメン執事である王子も私の味方。


姉は、味方がいない。

ざまぁ見ろ!


夫人を煽てれば、ドレスも宝石も買ってもらえる。

チョロ過ぎる。


本当にヒロインって最高!!



 姉に意地悪されていると噂が広まっているから、周りから私は同情され、チヤホヤされて絶頂期に入っていた。


 1年ちょっと後の姉の卒業式は、断罪をするから楽しみだ。

 姉に恨みは無いが、私が王子と結婚して幸せになる為に犠牲になってもらおう。


 前世では彼氏がいなかったから、今世では、いっぱい楽しもう。


王子はイケメンだし、サイベリアンもラパーマもイケメンで、最高だ。


ヒロイン最高!






※※※


 バーミーズお嬢様とラグドールがいない事を知らない愛人の娘こと性悪女。


国王の許可を取った2人は、お嬢様が学園を卒業してすぐに留学する為に隣国へ行った。


 ラガマフィン侯爵は知っているが、夫人と妹は留学を知らない。

…家にいない事すら気付いていない。


「お姉様が意地悪するの!」


 隣国にいるお嬢様がどうやって意地悪するのか。

聞いてみたいものだ。




 私は、正式に養子になり、跡取りとして教育を受け続けていた。

執務は、ほとんど私がやっている。


18歳になったら成人で、侯爵位を継げる。


 もう1人の執事が実は第2王子で、後継者争いを起こさない為に身を隠していたと聞いた。


第1王子が王太子として立場を固めるまで、留学するという。


帰国したら、2人は結婚するらしい。


…お嬢様への想いは、墓場まで持って行こう。


 第2王子の居場所として、侯爵家は残したいが、侯爵も夫人も、お嬢様の悪い噂を放置した。流した性悪女は許し難い。


 だから私が成人したら、王家からの命令で、私が侯爵位を継ぎ、侯爵達3人を領地に閉じ込める事になっている。


あと1年の辛抱だ。


「お姉様が意地悪するの!」


 今日もまた、我慢の時間がやって来た。


お嬢様は、元気にしているだろうか?






※※※


 学園で、バーミーズお嬢様が妹をいじめているという噂が広まり始めた頃。


どうにかできないかと悩んでいたら


「飛び級をして、卒業したら隣国に留学に行こうと思うの」


 と、お嬢様が言った。


え!?隣国に留学!?

お嬢様と離れたくない。


「貴方はどうする?」


 と聞かれた。

どうする?とは?一緒に行って良いのか?

それなら。


「お供します」


 と、すぐに答えた。


お嬢様のそばにいたい。


 すぐに、執事長を通して国王に、お嬢様が飛び級で卒業後、2人で隣国に留学に行きたいと相談した。


私がお嬢様を好きな事は既に報告してある。


 お嬢様の悪い噂を流した妹と、それを放置する侯爵夫妻をどうにかしてほしいと相談した時だ。




 私は、お嬢様と一緒に隣国へ留学する事になった。


ラガマフィン侯爵家の親戚の、伯爵子息という事にしてある。


 お嬢様と2人で隣国の学園に通う事になった。




 国王から、学園の近くに邸を用意してもらい、私とお嬢様と、お嬢様付きのメイド、複数の使用人と護衛の騎士達と暮らしている。


 私は何度も頼み込んで、お嬢様と婚約した。

他の男に取られたくないからだ。

 お嬢様は驚いていたが、私はそばにいたかったから諦めなかった。


お嬢様のお陰で、執事になったけれど、毎日楽しく、ずっと一緒にいられて嬉しかった。


だから、何度も求婚した。


「初めて会った時から好きだった」


 と言ったら


「私もです」


 と言われた。


…え!?本当に!?


嬉しくて、思わず抱きしめてしまった。

夢のようだ…




 学園に通うのは初めてだが、お嬢様がそばにいるので安心だし、幸せだ。


勉強も楽しい。初めての友人もできた。


なにより、お嬢様と婚約できた。

お嬢様の婚約者として堂々と振る舞える。

お嬢様を狙う不届き者は、すぐに蹴散らしていった。




 卒業したら結婚する。今は、婚約期間を楽しんでいる。






※※※


 姉の卒業式での断罪は、行われなかった。


イケメン執事の王子は、邸で執務をしていた。


 断罪は、姉の卒業式ではなく、ヒロインの卒業式だったのか?


ま、良いか。私はヒロイン。幸せは確定している。


 私は、学園ではサイベリアンや、ラパーマと遊び、邸では王子と一緒に過ごした。


 どういう訳か、王子は最近、執事服を着ていない。

 ま、いっか。




 ある日、王家から使いが来て、王子が侯爵になり、侯爵と夫人と私は、領地の邸に幽閉と言われた。


私は学園を退学になったらしい。


「どうして!?」


 私は叫んだ。


「国王からの命令ですよ。従ってください」


 え?なんでよ?


王家からの使いの言葉に、王子を振り返った。


「貴方第2王子でしょ?何とかしなさいよ!」


 私はまた叫んだ。


「何を言ってるんです?私は男爵家の子息で、ラガマフィン侯爵家の養子になっただけですよ」


 王子が言った。


「はぁ?!」


「貴女は第2王子に『そんな不細工で生きてる意味あるの?』と言い放ったそうですね。不敬ですよ」


 王家からの使いが言った。


「はぁ!?」


 意味が分からない。


「第2王子は、もう1人の執事のほうですよ」


 王子…王子じゃなかった?が言った。


「え!?嘘よ!あの不細工が!?」


 そんな訳無い!


「無礼者!」


 王家からの使いが、私の腕を掴んだ。


「不敬罪で投獄する!」


「え?待ってどうして!?」


 意味が分からない。


私は、城の牢に入れられた。


どうして!?


私はヒロインなのよ!?

王子と結婚して幸せになるのよ!?

未来の王子妃に対して無礼よ!

早く牢から出しなさいよ!




 その後、私は、侯爵と夫人と共に、領地の邸に閉じ込められた。


侯爵…元侯爵と夫人は領地から出るのを禁止されただけだが、私は邸から出るのも禁止された。


 私はヒロインなのよ!


でも、あの不細工が王子なら、結婚したくない。

 どうしてイケメンが王子じゃないのよ!




 そうだ!サイベリアンかラパーマと結婚しようかな?


2人に手紙を出したが、返事は来なかった。






※※※


 邪魔な妹と両親が片付いた。


妹は、悲劇のヒロイン気取りで本当にウザかった。


 母と妹は、ドレスや宝石を買い漁っていた。

そのお金がどこから来るのか分かっているのか?

領民の税金だよ?

収入以上に使ったら、領地の為のお金が無くなるじゃない。


 父は何も言わなかった。

母と妹が、湯水のように、夫人予算と妹の予算以上に、お金を使っているのを知らなかったのか?

 父は、新しい愛人を作って遊び呆けていて、貢いでいた。だから、2人に興味無かったのか?


 領地経営は、私とコラットとラグドール様で、ほとんどやっていた。

 収入も無いのに浪費して、本当に邪魔な人達だ。だから、領地に幽閉になって、本当に良かった。


ラガマフィン侯爵家は、有能な、イケメン元執事コラットが継いでくれて、もう心配は無い。


 領民が困る事も無い。


私は安心して勉強していた。


 あとは、第1王子が、王太子として立場を固めてくれれば良い。


それか、このままこの国に住んでも良い。


「お嬢様」


 ラグドール様が声を掛けてきた。

今は、邸の庭で、お茶をしている。

爽やかな風が吹き、庭に咲く薔薇の香りが漂ってくる。


「お嬢様はやめてって言ってるでしょ」


 この国に来てから、名前で呼ぶように言っている。


一応、婚約者なのだ。


ラグドール様が求婚してくれるとは思わなかった。

正直に言って、嬉しい。

初めて会った時から、カッコいいと思っていた。



 妹は知らないが、顔が良いから、わざと眼鏡をかけさせ、前髪を下ろして地味に見せかけていたのだ。

妹は、ラグドール様に『不細工』と言ったらしい。

 見た目だけで、本質を理解しないから、王子を逃した。

まぁ、私には関係ないけど。



 ラグドール様は、勉強も剣術も努力して、王子に相応しいと思っていた。


そのせいで、我が邸で執事をする事になって、申し訳ない気もしたが、一緒にいられて嬉しかった。


 絶対に守ろうと思った。


「…バーミーズ」


 ラグドール様が、恥ずかしそうに私の名を呼ぶ。嬉しいが、こちらもつられて恥ずかしくなってしまう。


「夢みたいだ…バーミーズのお陰で私は、安心して暮らせるし、沢山学ばせてもらっている。バーミーズと婚約できたし…本当にありがとう」


 ラグドール様は、私の手の甲に口付けた。

幸せそうな顔をしている。


我儘浮気女と結婚して、苦労する筈だった第2王子。


 幸せそうで何よりだ。

読んでいただきありがとうございます



ヒロインが主役と思いましたか?


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