婚活勇者
15分短編です
この戦いが終わったら、私にはもう一つ、壮大な戦いが待っている。私にとっては、その戦いの方が、とても大切なのだ。
「ようやく、ようやくここまで来た」
「長かったわね、勇者」
「えぇ、でも魔王を倒して、この戦いもようやく終わる」
魔王城の最上階、私はここで、真の勇者になる。
重い扉を開くと、大きな荘厳な装飾の椅子にずっしりと圧を出しつつ座る魔王の姿があった。
「魔王め!余裕でいられるのも今の内だ!いくぞ!勇者!」
戦士がそう叫んでいるけど、私は動けなかった。脚が出ない。
「勇者、どうした!?」
「ちょ、ちょっと待って・・・」
魔王の顔が、あまりにも私のタイプ過ぎた。
「え、めっちゃ格好いい」
「はぁ!?」
「タイム!」
「タイム!?」
私はパーティーのみんなを引き連れてドアの向こうに一旦退散した。
「どうしたんだよ勇者」
「ちょ、まって、あんな格好いいなんて聞いてない」
「はぁ!?」
いや、本当に、あれ魔族!?めっちゃ格好いいんだけど。精悍な顔立ちにがっしりした筋肉質な体。こんなの惚れないほうが無理なんだけど。
旅の道中、両親に無事を知らせる手紙を書くようにしていたんだけど、その返事には必ず、「ところで、パーティーの中にいい人はいないの?」と書かれるようになった。母もそりゃぁ気になるはずだ、もうすぐ34歳になる娘に浮いた話が一つもないんだから。
そりゃぁ、パーティーを組んだ時、戦士やほかの職業のメンバーがほぼ男だから、私だって期待はした。したけど、どいつもこいつも私が勇者ってことで気が引けてしまっているのか、それとも私に魅力が無いのか、全然手出ししてこない!まぁ、魔王を倒す旅の途中に惚れた腫れたなんてやってる場合じゃないのはわかってるんだけどさ。
一度だけ、前任の魔法使いと少し良い仲になったけど、魔族に襲われて帰らぬ人となってしまった。今の魔法使いは後任の女性だから、私の選択肢からは外れる。
だからこそ、魔王を倒すまでは、恋愛をしないと、決めていたのに・・・。それなのに・・・。
魔王がドタイプ過ぎるんだけど!?どうしよ~!!
「おい、勇者、アイツは魔王だぞ!?」
わかってる、アイツは倒さないといけない相手。でも・・・これを逃したら、もう自分が好きになれる相手に出会えるかもわからない!
揺れる乙女心・・・。
「魔法使い、もういい、勇者はおいて俺たちだけでも魔王を倒そう」
「まって、話し合い、話し合いで解決できないか、相談してみましょう!」
「何言ってるんだよ!そんな悠長な事を言っている場合じゃないだろう!?」
「でもほら!話せばわかるかもしれないじゃない!?そしたら、無駄な血を流さずに済む!」
「いや、そりゃぁそうだけど・・・」
15分ほど相談した後、一度だけ、魔王との会話を試みることになった。
「あ、あの・・・えっと」
「ほら、勇者!はやく!」
「わかってるわよ!!・・・」
どうしよう、まず何を聞くべき?えっと、ええっと・・・。
「あの・・・ご趣味は!?」
「そんなこと聞いてどうするんだよ!!」
「だ、だってぇ!!」
どうしよう、えっと・・・だからぁ・・・
「あ、そうだ!!好みのタイプは!?」
「何聞いてんだよ!!」
「「筋肉質ないい男」」
ん?今の魔王の声?
——あと趣味はぁ、ガーデニングぅ♪——
あ、えっと、そちらの方?




