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看板娘の花言葉 ~緑の乙女は家族とのんびり暮らしたい~  作者: 芽生 1/15『裏庭のドア』3巻・コミックス1巻発売!


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第19話 実る果実と未来への希望 

三寒四温とはいいますが、寒暖差は体調を崩しやすくしますね。

お体にお気をつけください。


「本当にたくさんの植物がここにはあるんですね……」


 花屋である店頭はもちろん、裏庭にもまた見事な花々や植物が広がる。

 そんな様子を見たブリジットの感嘆まじりの言葉に、エイミーはにこりと微笑む。

 先日、ボタンの花を贈って以来、ブリジットはメイドのクレアを伴って、店に顔を出すようになった。

 相変わらず、口数は少ないが同世代の友人のいないエイミーには大きな刺激だ。


「いいか? 油断するなよ。あのお嬢ちゃん、おめぇが自分のほうを向いてねぇときには鋭い視線で睨んでるからな」

「クロウ! 聞こえるでしょ?」


 エイミーに注意され、舌打ちをしつつ、クロウは木の上へと避難する。

 その光景に使用人のアルフィーと弟のルークが視線を交わし、言葉を話す鳥という奇妙な存在をどう説明するかを考え始めた。

 だが、ブリジットから出たのは予想外の言葉だ。


「喋る鳥……エイミーさまはそれを従えていらっしゃるのですか……!」


 エイミーは驚きの表情で自分を見るブリジットに困ったように笑いかける。


「うーん、従えるっていうか、長い付き合いになるかな……」


 クロウとの出会いは孤児院にいた頃になる。

 そのことを恥じるエイミーではないが、わざわざ人に伝える必要もないだろうと判断したのだ。

 クロウはもちろんだが、ルディ、そして兄との出会いもその頃になる。

 少々、説明するにはややこしい話題なのだ。

 

「――エイミーさまは喋る鳥を長きに渡って従えていらっしゃるのね……。喋る鳥は南国にいると聞いたことがあります。でも、あの鳥は自らの意志で言葉を紡ぐ……希少な存在とお見受けしました。おまけに黒を忌む方もいらっしゃる中で、それを従えるだなんて革新的!」

「お? そうなんだよ! 自らの意志で言葉を紡ぐ希少で価値のある美しき鳥! それがこの俺、クロウ様よ!」


 エイミーの言葉をどう捉えたのか、ブリジットからは彼女を称賛する言葉が続く。

 おまけにクロウまで調子に乗る姿に、アルフィーとルークが再び視線を交わす。

 ここ最近、二人が気付いたのはブリジットがやたらにエイミーに好意的なことだ。

 ボタンの花の件以来、会うことが増えたブリジットの口からは毎回、エイミーを褒め称える言葉が出る。

 それは姉を慕う弟のルークから見ても行き過ぎた発言が多いのだ。


「……姉さまを見る彼女の視線、鋭いっていうより――」

「お嬢さまの行動を一つも見落とすまいとする熱量を感じますね」


 ルーク、アルフィーの意見は一致する。

 以前、エイミーに向けられた鋭い視線。それは敵意からではなく、過剰ともいえる熱意からだったのだろう。

 二人にも、そしてエイミーにすら理由はわからないのだが、ブリジットはエイミーを慕っている様子だ。

 嬉しそうなブリジットににこやかに庭の植物の説明をするエイミー、楽しげな二人の姿をアルフィーとルークは見つめるのだった。



*****

 


「町長さんのお孫さんがいらしていたのかい。年齢が近い友人ができるのは心強い。よかったね、エイミー」

「えぇ、ブリジットさまはまた来てくださるって」


 ブリジットが訪れていたことを聞いた父ジョセフの言葉に、エイミーも笑顔で頷く。その様子にルークも嬉しそうに笑う。

 以前、いた街では裕福な商家であるスタンリー家を見る人々の視線は尊敬に近いものであった。

 それは父の功績であるのだが、一方で同世代の少年少女達も自分に対して、少し遠慮をしているのをエイミーも気付いていた。

 そんなエイミーにとって、ブリジットは友人といえる初めての存在なのだ。

 しかし、ブリジットの会話の中で気になったことがエイミーにはある。


「食べられる植物も育てていると話したら、ブリジットの表情が曇ったの。気になって聞いたら、最近この村で育てている野菜の育ち具合が悪いんですって」

「そうなんです。この村だけではなく、王都でもそうだって言っていました」


 エイミーとルークの言葉にジョセフの表情が曇る。

 そんな父を見上げたルークは気がかりであったことを尋ねる。


「ねぇ、父さま。そうなったら、食物の価格が上がって皆が生活に困るのではないでしょうか」

「ルークは賢いね。そのとおりだよ。もし、周辺国も似た状況になっていれば輸入も難しい。一説では魔法や科学に頼り過ぎた結果、大地の力が弱まっているというとも言われているんだ」


 魔法や科学に頼る各国では自然に携わる職業もその力で開発を続けている。

 それは進歩であり、効率的ではある。しかし、一方でこの世界では自然にも魔法の力が宿るのだ。

 大地の力が弱まれば、いくら優れた魔力を持っていても科学的な対応をとろうとも成果には繋がらないだろう。

 これが国や教会が『緑の乙女』を探し始めた大きな要因だ。

 周辺国が恵みを得られない中、時刻を潤すことで外交的にも強く有利な立場になるのだ。


「実はね、教会の教室でも似たような話題が出ていてね……」

「子ども達がですか?」


 エイミーの問いかけにジョセフは頷き、再び眉根を寄せる。

 先程のブリジットの話は村長の孫である彼女の元に、集まってきた情報である。

 しかし、教室で聞く情報は子ども達が父母から聞いたもの。それだけに実感や不安を伴ったものになるのだ。


「やはり、畑の状況は良いとは言えないようでね……天候にも問題はないし、害虫や病気の影響もみられないそうなんだ。理由がわからないほうが人の不安は高まっていく。大人たちの不安を子どもたちも感じ取ってしまうようだね」


 子どもたちに文字や計算を教えるようになったジョセフは、娘のエイミーから見てもいきいきとした表情が増えている。

 そんな彼の憂う表情を見たエイミーはハッとする。

 自分にできること、今持つ能力を活かすことができると気付いたのだ。


「今、ちょうど果実のなる植物を育てているの。その世話を教室でもしてみない?」

「――教室で育てるのかい?」


 エイミーの提案が予想外であったのだろう。ジョセフもルークも目を丸くする。

 しかし、百合であったことをより鮮明に思い出したエイミーにはそこまでおかしなことには感じない。

 情操教育の一環として、学校などで植物を育てることは前世ではよくあった。

 保育園には色とりどりの花が植えられていたし、夏休み前にあさがおの鉢を持ち帰ったものだ。


「そう。ブルーベリーの苗を鉢植えにして育ててきたの。たぶん、もう少しで花が咲くし、そしたら実がなるでしょう? 少しでも気持ちの負担が軽くなるんじゃないかな……それに美味しいしね!」


 笑うエイミーに釣られ、ジョセフもまた口元を緩める。

 ルークの興味を引いたのだろう。目を輝かせながらエイミーに問いかける。


「それは僕も食べていいんでしょうか? あ、もちろん手伝います!」

「そうね。村の子たちと一緒に育てるのも楽しいはずよ」

「レンゲの花のときみたいに、皆が喜ぶかもしれませんね!」


 以前いた街ではレンゲソウを育て、そこから養蜂を始めたことでそこに住む人々を潤すこととなった。

 今回はそこまで大規模な話ではないが、子どもたちが自分たちで育てた果実を食べるというエイミーの案は健康的な解決方法にジョセフには思える。

 父母から伝わってくる不安、それを自分たちの手で植物を育て、苦労して出来上がった果実の味を友人たちと共有する。とても好もしい提案だとジョセフには思えるのだ。


「――ありがとう。エイミー」


 既に楽しそうにはしゃぐルークの姿、自身を見て微笑むエイミーの姿を眩しいものを見るように目を細めた。




 

 



お楽しみいただけていたら嬉しいです。

更新、…に確定申告にと奮闘中です。

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