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看板娘の花言葉 ~緑の乙女は家族とのんびり暮らしたい~  作者: 芽生 1/15『裏庭のドア』3巻・コミックス1巻発売!


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第17話 過去と未来の狭間

明日で2月も終わりですね。

なんとか毎日更新を続けてこられました!

3月は週2、水土で更新予定です。まずは確定申告と戦ってきます…。


 夜、目覚めたエイミーが驚いたのは、自身の目から零れ落ちていく涙だ。

 体を起こし、拭っても涙はほろほろと落ちていき、止まることはない。

 頭に浮かぶ温かく優しい母の笑顔、これは今の母グレースのものではなく、前世の記憶の中にある母だ。

 

「おいおい、大丈夫かよ」

「わふっ!」


 エイミーの様子に驚き、クロウもルディも彼女の近くに寄りそう。

 

「……うん、ごめんね。びっくりさせたでしょ?」


 そう言いつつもエイミーの心の中には小さな不安がある。

 これは幼い頃から抱く不安。今と過去、二つの記憶、なぜ転生したのか、なんのためにこの力を持っているのか、エイミー自身にもわからないことは多いのだ。

 クロウとルディと出会う前、孤児院でもエイミーはよく一人で泣いていたものだ。

 そんなとき、支えてくれたのが記憶の中の母の笑顔だ。

 今はあの頃とは違い、家族もいる。

 だが、あの頃抱いていた謎が消えたわけではない。

 ルディの柔らかな毛を撫でながら、エイミーはまだ涙の残る目を伏せるのだった。



「どうかなさいましたか? お嬢さま」

「へっ?」


 仕事中、めずらしくぼんやりしているエイミーにアルフィーが声をかける。

 エイミーは慌てて、背筋を伸ばす。

 どんな花がいいかと客に相談を受けていた最中なのだ。

 幸い、客である女性はエイミーがどんな花がいいかと真剣に考え込んでいると捉えたのだろう。こちらの様子に気を留めてはいない。

 少々、気まずさを感じつつ、エイミーはにこやかに微笑む。


「お客さまのご希望をもう一度、確認してもよろしいでしょうか?」

「はい。お恥ずかしいことに花束といっても数本しか買えなさそうで……それでも贈る相手には失礼になりませんか?」


 問いかけにエイミーは笑いながら頷く。

 ちょうど今の時期に咲く花の中に、希望に適したものがあるのだ。


「そうですね……。今の時期ですとアルストロメリアはいかがでしょう? エキゾチックな雰囲気のある花で、一本に複数の花をつけるんです」


 小ぶりな花が幾つも咲くアルストロメリアであれば、数本ほどで華やかなブーケになるだろう。そう思い、提案したエイミーの言葉に客の女性もほっとした表情を浮かべた。

 エイミーが手早くブーケにしたアルストロメリアを手に、客の女性は店を後にする。その後姿を見送るエイミーに、アルフィーが心配そうに声をかける。


「……お嬢さま、なにか気にかかることなどありましたか?」

「えっ、あぁ! ちょっと寝不足なのかもしれないかな」


 エイミーは嘘は言っていない。

 あのあと、なかなか寝付けないエイミー、そんな彼女を気遣ってか、いつも以上に口が多いクロウ、それにはしゃぐルディとなにかと騒がしかったのだ。

 しかし、寝不足の理由を口にすれば、ただでさえ面倒見のいいアルフィーのことだ。心配するだろうし、その際には兄のエドワードまで報告があがるかもしれない。

 

「あ、そうだ! あたし、お母さまにご報告したいことがあるんだった! お店、少しの間、お願いね!」

「……かしこまりました」


 これ以上、アルフィーと一緒にいれば、ボロが出てしまうだろう。

 そう考えたエイミーはその場を足早に去っていく。

 今の自分が抱える不安、それを悟られるのが怖いのだ。

 そんなエイミーの後姿を見つめるアルフィーは、困ったように眉を寄せるのだった。

 


「あ? おめぇ、仕事はどうしたんだ?」

「わふっ!」


 駆けだしたエイミーは庭の裏へと向かった。

 樽や桶などが並ぶここには用がなければ、足を運ぶことはない。

 そこでのんびりと休憩しているクロウ、そしてその下にいるルディに見られたのだ。


「……クロウ! ルディ!」

「わふ?」


 ぎゅうぎゅうと抱きしめられたルディだが、理由はわからない様子で嬉しそうにもふもふっとしたしっぽを振る。

 

「おめぇ、仕事はどうしたんだよ?」

「うっ……!」

「あ、あれか? しんどくなって逃げだしたのか? まったくよぉ、自分で始めたことなんだ。最後まで責任持たねぇといけねぇだろうが」

「うぅ……!」


 ルディを抱きしめるエイミーの腕が強くなる。

 そう、自分自身が始めた仕事であり、そこには責任が生じる。

 エイミーも十分にわかってはいるのだ。

 しかし、夢で過去の記憶を思い出したエイミーは揺らいでいる。

 そもそも、この力をどう使うことが正しいのかという迷いがあるのだ。

 以前の土地では、そこに住む人々のために使い、感謝されてきた。その笑顔に、自分がここにいていいと安堵する想いを抱いていた。


「――結局、あたしはなんなんだろう」

「あん? エイミー、お前今日はいったいどうしたんだ?」


 素直、悪く言えば単純なところがあるエイミーだが、周囲のためを考え、動ける少女でもある。

 そんなエイミーにクロウもまた救われたことがある。

 エイミーの今日の様子にクロウも心配そうに、止まっていた木から舞い降りる。

 そのとき、エイミーの体がぐらりと揺れる。


「おい! おい、エイミー! しっかりしろ!」


 倒れ込んだエイミーの体をルディが支える。

 エイミーの頬がいつもより赤いことに気付いたクロウは、早く家の者を呼ぼうと再び空へと舞い戻るのだった。

 

 




皆さんに楽しんでいただけていたら嬉しいです。

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