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異世界で配信してたら神々がスパチャしてきた  作者: default


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7. 開戦


警鐘は、王都全体を引き裂くように鳴り響いていた。


「――敵襲! 敵襲だ!」


城壁の方角から、怒号と足音が重なって聞こえてくる。

玉座の間の空気が、一気に張り詰めた。


「……来たな」


俺の呟きに、エイリンが即座に反応する。


「カナト殿、こちらへ!

謁見は中断です、王都防衛に移ります!」


同時視聴者数:38,200


『始まった』

『マジで来やがった』

『王都襲撃イベント本番』




城壁の上に出た瞬間、理解した。


――数が、違う。


遠くまで続く黒い影。

重装歩兵、魔導部隊、そして異様な巨大兵器。


空を裂くように、帝国軍の旗が翻る。


「……多すぎだろ」


『包囲されてるな』

『正面戦力だけで王都の三倍はある』

『普通に詰み』


宮廷魔導師が顔色を失って叫ぶ。


「帝国魔導兵団です……!

王都結界を解析されつつあります!」


王が、拳を強く握りしめた。


「……やはり、狙いはここか」




俺は、無意識にスマホを見た。


同時視聴者数:40,000


……静かだ。




帝国軍が、動いた。


魔導砲の光が収束し――

次の瞬間、城壁に向かって放たれる。


「来るぞ! 防御魔法、最大展開!」


轟音。


結界が軋み、光が揺らぐ。


「……耐えきれない!」


城壁の一部が、砕け散った。


「突破されたぞ!」


同時視聴者数:45,000


『うわ』

『王都、ガチでやばい』

『まだ神スパチャなし』


帝国兵が、雪崩れ込んでくる。


剣戟。悲鳴。血の匂い。


俺は、その場に立ち尽くしていた。


「…..状況ヤバくね?」


その瞬間。


王が、前に出た。


「――灰原カナト」


振り返る。


「余は、そなたに賭けた」


老王の声は、戦場の中でもはっきりと響いた。


「神も魔王も動かぬなら――

人の意志で、時間を稼ぐしかない」


エイリンが剣を抜く。


「王都騎士団、前へ!」


騎士たちが、咆哮を上げて突撃する。


……皆、命を懸けてる。


エイリンを....

死なせたくない!


俺は、歯を食いしばった。


「……わかった」


スマホを、強く握る。


「なら――」


カメラを、戦場に向けた。


「視聴者の皆さん」


「ここから先は……」


「俺が死ぬか、世界が変わるかです」


一瞬の、沈黙。


次の瞬間....


《魔王ゼル=ヴァルド》


『.........チッ』


『愚かな帝国だ』


その一言で、空気が変わる。


『魔王、来た』

『魔王キレてね?』

『敵国ご愁傷様』


《魔王ゼル=ヴァルド》

『我が推しに、死なれると困る』


続けて――


【スーパーチャット ¥10,000,000】

《魔王ゼル=ヴァルド》

「戦場干渉・第一段階」


王都の外、敵軍の先頭が――

影に沈んだ。


地面から伸びる無数の黒い手が、兵を引きずり込む。


城壁の上が、どよめく。


「な……何だ、あれは……」


同時視聴者数:50,000


『うわ』

『魔王ムーブ早すぎ』

『雑魚共乙w』


――その時だった。


【スーパーチャット ¥12,000,000】

《戦神バルド》

『調子に乗るな、魔王』


空が、割れた。


赤い稲妻が、敵軍の中央に落ちる。


爆風。

衝撃。

地形が、変わる。


『神も来たぁぁ!』

『待ってました』

『もう戦争じゃん』


続けて、静かな文字。


【スーパーチャット ¥15,000,000】

《全知の神オルメギア》

『戦局を開示する』


俺の視界に、半透明のウィンドウが重なった。


《敵戦力:帝国正規軍+魔導兵装+禁呪部隊》

《王都側勝率:0.8%》

《介入後勝率:――計算不能》


「……計算不能って何」


《運命の女神リラ》

『ふふ。楽しくなってきましたね』


【スーパーチャット ¥20,000,000】

「確率操作・開放」


王都上空に、淡い光が降り注ぐ。




城壁の上で、国王が震える声で呟いた。


「……これは……神話だ……」


俺は、スマホを正面に構えた。


同時視聴者数:60,000


「……えーと」


「王都防衛戦、始めます」


コメントが、爆発する。


『開戦!』

『神vs帝国』

『魔王も味方とか世界終わるだろ』


俺は、苦笑した。


「言っとくけど――」


「俺、指示役とか無理だからね?」


その瞬間。


《戦神バルド》

『大丈夫だ』


《魔王ゼル=ヴァルド》

『貴様は、立っていろ』


《全知の神オルメギア》

『とりあえずお前は、死ぬな』


《運命の女神リラ》

『一番大事ですから』



王都の空に、光と闇が交錯する。


――ここから先は、

人の戦争ではない。


(第七話・完)


次回もお楽しみに!

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