6. 王都
王都・アルディア。
石造りの大通りは人で溢れ、白い塔と黄金の旗が空に映えていた。
これまで見てきたどの街とも、格が違う。
「……すご」
思わず本音が漏れる。
同時視聴者数:18,400
『ここが王都か』
『文明レベルが一気に上がったな』
『配信映えしそうだな』
映えとか言うな。
⸻
◆ 王都入り
「灰原カナト殿。こちらです」
隣を歩くのは、騎士団団長エイリン・ノクティエル。
今や彼女は、俺の公式護衛という立場になっていた。
が、こんな可愛い子がずっと横にいてくれて嬉しい反面危険も伴うためいささか複雑である。
――神に選ばれし観測者。
そういう触れ込みらしい。
「国王陛下は、あなたに直接会いたいと」
「ですよね……」
コメント欄がざわつく。
『さっそく王とご対面か』
『絶対白髪のテンプレじぃさんだろ』
『おまいらゲームしすぎな』
『適当に相づちうっとけば終わる』
おいおい、勝手に盛り上がりすぎ。
⸻
◆ 王城・謁見の間
王城は、異様なほど静かだった。
玉座に座るのは、やはり白髪の老王。
その両脇には、重装備の近衛騎士と、ローブ姿の宮廷魔導師たち。
視線が、一斉に俺に向く。
「……こちらが、神に観測されし者か」
王の声は、重く、低い。
「はい。灰原カナトと申します」
深く頭を下げる。
同時視聴者数:20,000
『ドキドキ...』
『緊張感あるな』
『王の反応気になる』
『ここで試されるぞ』
「余は、信じぬ」
王は、はっきり言った。
「神は人に語りかけぬ。
だが……」
王は、俺の手にあるスマホを見る。
「最近、不可解な現象が多すぎる」
宮廷魔導師が一歩前に出る。
「王都近辺で、異常な魔力反応が観測されています」
「……異常?」
「国境方面。敵国――
ルグ=ネイア帝国の動きが、活発化している」
その瞬間。
コメント欄が、一斉に反応した。
『来たな』
『敵国イベント』
『王都襲撃フラグ』
『王都、詰みだろ..』
やめて、フラグ立てないで。
⸻
王は、玉座から立ち上がった。
「……灰原カナト」
王の目が、鋭く光る。
「余は、そなたに問う」
「もし王都が危機に晒された時――
そなたは、我が国に力を貸すか?」
重い沈黙。
俺は、スマホを見つめ――
ゆっくりと息を吸った。
「……貸します」
「でも」
「俺一人の判断じゃない」
カメラを、正面に向ける。
「視聴者の皆さん」
「次の配信、
王都防衛戦になりますけど――」
「参加、してくれますか?」
コメントが、爆発した。
同時視聴者数:30,000
『参加するに決まってる』
『本番だな』
『これは神話になる』
その時、城の奥で――
警鐘が鳴り響いた。
(第六話・完)
次回もお楽しみに!




