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異世界で配信してたら神々がスパチャしてきた  作者: default


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4/17

4. チャンネル登録


広場の熱気が、まだ冷めきらない。


歓声。ざわめき。

そして――俺のスマホ画面だけが、異様な静けさを保っていた。


《魔王ゼル=ヴァルド》

『……』


コメントが、止まっている。



「……えっと」


俺は喉を鳴らし、カメラに向かって言う。


「初見さん、いらっしゃい?」


我ながら、平常心を装った挨拶だと思う。


だが次の瞬間。


《魔王ゼル=ヴァルド》

『面白いものを見せてもらった』


空気が、凍った。


(神々)

『……来たな』

『魔王本人か』

『これは想定より早い』



「魔王本人!?」


思わず声が裏返る。


エイリンが、俺の異変に気づき小声で囁いた。


「……カナト殿。何か、起きているのか?」


「えっと……」


どう説明しろと。

間近で見るエイリンの可愛さも相まって思考停止状態。


その時――


【スーパーチャット ¥2,000,000】

聖淡水(ゴッドエール)を獲得」


《戦神バルド》

『落ち着け。とりあえず飲め。』


いや、ドンペリか。




《魔王ゼル=ヴァルド》

『貴様が“神に観測されている人間”か』


「.......」


《魔王ゼル=ヴァルド》

『なるほど……世界の外側からの干渉か』


コメント欄が、ざわつく。


『理解が早いな』

『流石は魔王』

『頭が切れるタイプだ』


「ちょっと待って。俺は一体どうすればいいのか考えて!」


《魔王ゼル=ヴァルド》

「安心しろ。今すぐ殺すつもりはない」


安心できるか。


《魔王ゼル=ヴァルド》

「むしろ――興味がある」


画面右上に、見慣れない通知が表示された。


【魔王ゼル=ヴァルドがチャンネルを登録しました】


「……は?」


完全にフリーズする俺。


同時視聴者数:12,500


『草』

『チャンネル登録者になったw』

『新しい時代だな』




《魔王ゼル=ヴァルド》

『神々よ。貴様らの遊戯に、我も混ぜてもらおう』


空気が、ピリつく。


【スーパーチャット ¥3,000,000】

《全知の神オルメギア》

『魔王よ。立場を弁えよ』


【スーパーチャット ¥3,500,000】

《戦神バルド》

『出てくるなら戦場だ』


火花が散るような緊張。


だが、魔王は笑った(気がした)。


《魔王ゼル=ヴァルド》

「違うな。これは――“配信”だ」


《魔王ゼル=ヴァルド》

「力を誇示する場。信仰を集める場」


《魔王ゼル=ヴァルド》

「そして――世界を動かす場だ」


……こいつ、完全に理解してる。


俺は、乾いた笑いを浮かべた。


「……えっと」


「魔王さんも、視聴者ってことでいいんですか?」


一拍の沈黙。


次の瞬間。


【スーパーチャット ¥4,000,000】

《魔王ゼル=ヴァルド》

「初見祝いだ。取っておけ」


……は?


広場の石畳が、黒く染まる。


魔力の塊が、実体化して俺の足元に沈み込んだ。


《魔王スパチャ効果:魔王属性耐性(中)を獲得》


体の奥に、ぞっとするほど冷たい力が根を張った。


『魔王スパチャは草』

『敵側からの投げ銭』

『世界が壊れてきたな』


エイリンが、呆然と呟く。


「……王国は、どうすれば……」


俺は、スマホを見つめたまま答えた。


「たぶん……」


「もう、俺一人の判断じゃ無理です」




《魔王ゼル=ヴァルド》


「――人間、カナト


次の配信も、楽しみにしている」


コメント欄が、再び流れ始める。


『完全に次章突入』

『神々 vs 魔王軍』

『配信者乙w』


同時視聴者数:15,000


俺は、覚悟を決めた。


――これはもう、

異世界を舞台にした、神と魔王の代理戦争だ。


しかも、その中心にいるのは。


「……俺かよ」


スマホのカメラに映る自分の顔は、

引きつりながらも――少しだけ、笑っていた。


(第四話・完)


次回もお楽しみに!

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