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異世界で配信してたら神々がスパチャしてきた  作者: def
番外編

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39/39

維持神(仮)の戸籍問題


朝。


王都アルディアは平和だった。

パンのにおい、

小川は流れ、

子供達の騒ぐ声。


「……なあエイリン」


カナトは、役所の前で立ち尽くしていた。


「俺、入れないんだけど」


石造りの建物。

重厚な扉。


その前で、受付の魔導結界が淡く光っている。


《個体認証:拒否》


「……は?」


《理由:存在状態が不定》


「不定ってなに」


後ろで、エイリンが腕を組む。


「……あなた」


「もしかして」


「世界救った代償で、

社会的に死んだ?」


「やめろ」


「割とリアルだから」


中から、役人が出てくる。


眼鏡。

真面目顔。

一切、事情を知らない一般人。


「失礼ですが……」


「あなたの名前、

台帳にありません」


カナトは指を立てる。


「いや、そんなはずは」


「確実に」


役人は首を振る。


「ありません」


「過去にも」


「未来にも」


「……存在しません」


エイリン、沈黙。


カナト、沈黙。


世界、平和。




その頃――

神々の臨時会議。


《全知神オルメギア》

『んー.....』



《精霊王イリシア》

『え?』


《戦神バルド》

『何だじじぃ?』


オルメギアは淡々と続ける。


『灰原カナトは』


『そもそも

この世界の戸籍体系に

一度も登録されていない』


『理由は単純』


『現世からの転生個体だからだ』


《魔王ゼル=ヴァルド》

『……ああ』


『最初から無いのか』


《笑う神チョケ》

『最初から無戸籍!!』


『それ一番めんどくさいやつ!!』


《天輪評議会・観測官》

『確認』


『当該個体は

世界法的には

「存在していない」』


『ただし』


『世界維持への寄与率が

極端に高いため』


『削除も不可』


『よって――』


一拍。


『放置が最適解』


《戦神バルド》

『クソ解決法だな』


《全知神オルメギア》

『ま、助けてやるがな』



役所前。


「……つまり?」


カナトが言う。


「俺」


「無職?」


エイリンが即答。


「無戸籍・無職・無税」


「最強の不審者ね」


「泣くぞ」


その時。


空気が、ふわっと揺れた。


エイリンだけが、気づく。


「あ」


「来た」


誰も見えない。

声もない。


だが――


役所の書類が、勝手に一枚めくれた。


白紙。


そこに、文字が“成立する”。


【参考情報(削除不可)】

名前:灰原カナト

出自:異世界(現世)

職業:維持神(仮)

所属:未定

備考:

・世界が壊れそうな時に必要

・普段は特にいらない

・戸籍は作れない



役人が、ぽつり。


「……あれ?」


「書類あったっけ?」


カナト、汗。


「ある」


「今できた」


役人は、深く頷いた。


「そうですか」


「では、問題ありません」


問題だらけだ。


エイリンが、カナトを見る。


「まぁ」


「結果オーライ?」


カナトは、少し考えて――


頭を抱えた。


「俺、

無戸籍・無所属・謎職業?」


エイリンは呆れてフォローする。


「でもさ」


「世界的には

一番“必要”なんでしょ?」


カナトは、少しだけ考えて。


「……まあ」


「配信者より維持神のほうがカッコいいよね?」


エイリンはにやっとした。


「維持神なのに....」


「社会的に一番不安定な存在....」


空が笑っている気がした。



《笑う神チョケ》

『あーーー腹痛い!!!』


『神話で一番しょうもないエンディング!!!』


世界は、今日も保たれている。


戸籍は、ギリギリ。



維持神(仮)の戸籍問題:完


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