35. アカウント乗っ取り事件
同時視聴者数 100,000,000
数字が、跳ねた瞬間だった。
世界の裏側で――
何かが、外れた。
一本
二本
十本
⸻
闇の世界。
光も、音も、時間も、方向もない。
破壊の権化。
そこに――
無数の鎖が、絡みついていた。
錆なきの鎖。
世界が生まれてから、
一度も役目を失わなかった拘束具。
それらを、創造神ラグニエルは
常に生成し続けていた。
壊される。
繋ぐ。
壊される。
繋ぐ。
その繰り返し。
⸻
カナトは、呟く。
「解放したら」
「俺のアカウントを
乗っ取らせろ」
「全部くれてやる」
ラグニエルは、目を閉じた。
そして。
スパチャ欄が、更新される。
⸻
【??????????】
金額:測定不能
内容:
《破壊権限・全域ログイン》
⸻
その瞬間。
カナトの配信画面に、
見たことのない通知が表示された。
「別端末からログインが検出されました」
《え》
《今の通知なに》
《乗っ取り!?》
《後に語られる事件》
カナトの視界が、反転する。
世界が、上下を失う。
――だが、意識はある。
(……いる)
(中に)
カナトの体が、
ゆっくりと立ち上がった。
だが、動きが違う。
無駄がない。
感情がない。
配信者の体をした、破壊。
形ある王が、初めて後ずさる。
「……何だ、それは」
カナトの口が、開く。
「▇▇▇▇▇▇▇」
声なき声。
世界の裏側が、めくれた。
《精霊王イリシア》
『……来た』
《戦神バルド》
『ああ』
《魔王ゼル=ヴァルド》
『“本物”だ』
形ある王は、理解する。
これは神ではない。
存在ですらない。
破壊そのもの。
カナト=ダラが、一歩踏み出す。
その一歩で――
事象が、成立しなくなった。
⸻
《全知神オルメギア》
『観測不能』
『破壊神座標――再接続』
《戦神バルド》
『始まるぞ……』
《魔王ゼル=ヴァルド》
『……いや、終わるの間違いだ』
「=ダラ……」
形ある王が、名を呼ぶ。
その瞬間。
=ダラは、初めて“こちら”を見た。
次の瞬間――
形ある王の背後で、世界が消えた。
城壁。
空間。
因果。
形ある王は理解する
「……なるほど」
「お前が"神"か」
⸻
永遠に広がる闇の空間
砕けた鎖が散らばっている
カナトは
=ダラと向かい合っていた
「なんだよ」
『........』
「壊すからには」
「お前も、無事じゃ済まんぞってか?」
カナトは、笑った。
「上等」
同時視聴者数 120,000,000
「全部壊せ」
⸻
32話 完
次回もお楽しみに!




