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異世界で配信してたら神々がスパチャしてきた  作者: def
第二章

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30/39

30. 新たなる王


世界は、悲鳴を上げていた。


王が死んだ。


ただそれだけで、

世界はここまで簡単に壊れるのか――と

誰もが思った。


だが、現実はもっと残酷だった。


壊れたのは、

「王がいなくなったこと」ではない。


王が“交代した”ことだ。



王都アルディア。


かつてカーン王が座っていた玉座に、

それは座っていた。


背筋を伸ばし、

足を組み、

まるで――

最初からそこにいたかのように。


「形あるもの」は、

王冠を必要としなかった。


玉座そのものが、

“王の形”に適応していた。


城内は静まり返っている。


死体は、もう動かない。

泣く者も、叫ぶ者もいない。


“終わった”からだ。


「……理解した」


形ある王が、呟く。


声は低く、

男でも女でもなく、

老いも若さも含まない。


「この座は、

世界が“従う”ための装置だ」


玉座が、わずかに軋む。


それは、肯定だった。



同時刻。


世界各地で、

奇妙な現象が起き始めていた。


ある国では、

王城の壁に亀裂が走り、

その形が“王座”を模した。


ある国では、

王の遺体が急速に腐敗し、

代わりに玉座だけが残った。


《新たなる王が現れた》

《世界は選び直された》

《形ある王に、忠誠を》


――そう言い出す者たちが、現れた。


最初は少数だった。


だが、恐怖は伝染する。


理解できないものを前にしたとき、

人は“従う理由”を探す。


「神ではない」

「だが、王である」

「世界が、従っている」


それで、十分だった。



やがて――

軍が、動き出す。


旗が掲げられる。


それは、

どの国のものでもない。


“形”を模した、

歪んだ紋章。


新たなる王に従うため、

各国の軍が、

王都アルディアへ向かって進軍を始めた。


《やばくね?》

《敵が一つじゃない》

《世界、分裂してる》


配信画面は、荒れていた。


同時視聴者数:5,700,000



王都アルディア。


カナトは、

モニター越しに世界を見ていた。


「……信仰、早いな」


隣で、リュミエールが静かに言う。


「ええ。

“王”という概念は、

思考を放棄するのに最適です」


「神より簡単だしな」


そのとき。


画面が、急に騒がしくなる。


《神きた》

《またスパチャえぐい》

《何柱いるんだよ》


空が、歪んだ。


《戦神バルド》

『今度は遊びじゃ済まん』


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「全域殲滅構え」


《精霊王イリシア》

『皆さすがに"揺らぎ"すぎだよ』


【スーパーチャット ¥60,000,000】

「世界調和・一時停止」


《魔王ゼル=ヴァルド》

『王を名乗るには、

随分と軽い』


【スーパーチャット ¥70,000,000】

「概念圧縮」


さらに。


《???》

『あはは』


画面に、歪んだ文字。


《笑う神チョケ》

『面白いねえ』


【スーパーチャット ¥30,000,000】

「観測のみ」


《世界蛇神》

『見てられん』


【スーパーチャット ¥66,600,000】

「絶対零度」


空気が、ざわつく。


リュミエールが、眉をひそめた。


「……いろんな神が来ましたね」


「しかも、性質が悪そうだ」


カナトは、玉座に座る“王”を見る。


あれは、まだ動いていない。


戦争も、

信仰も、

神々の介入も――


ただ、

観察しているだけだ。


「……なあ」


カナトが呟く。


「まだ、暴れてないよな」


リュミエールは、

ゆっくり頷いた。


「ええ」


「だからこそ、厄介です」


空の上。


扉が、静かに軋んだ。


ギィ……


ほんの、わずか。


誰も気づかないほどの、

隙間。


だが――


世界は、確実に

次の段階へ進んでいた。




30話 完



次回もお楽しみに!

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