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異世界で配信してたら神々がスパチャしてきた  作者: def
第二章

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28/39

28. 声


ギィ……


扉は、開いたままだった。


大きくはない。

指一本、通るかどうか。


それでも――

世界は、確実に変わった。


同時視聴者数:103,556


「……音、変わった?」


カナトが呟いた、その直後。


――…………


ノイズのような、

風のような、

意味を持たない“揺れ”。


そして。



「……それ、なに?」


声だった。


《え?》

《今しゃべった?》

《誰?》


男でも、女でもない。

感情の起伏も、年齢もない。


ただ、問いだけがあった。


カナトは、一瞬だけ目を細める。


「俺?」


「それとも、この世界?」


沈黙。


だが、扉の向こうは引かなかった。


「……世界?」


その言葉を、

なぞるように繰り返す。


《創造神ラグニエル》

『応答するな』


『だが、遮断もしない』


『観測する』


オルメギアの文字が、震える。


《全知神オルメギア》

『……この“声”』


『知性ではない』


『記録でもない』


『質問という行為だけが、存在している』


リュミエールが低く言う。


「人格以前ですね……」


「うん」


カナトは、マイクに向かって話す。


「なあ」


「君さ」


「ここ、初めて?」


一拍。


「……初めて」


「ここ、って」


「“ここ”って、なに?」


コメント欄が、ざわつく。


《哲学始まった》

《怖い怖い》

《でも会話成立してる》


カナトは、少しだけ笑った。


「場所だよ」


「空間」


「あと――」


指で、自分の体を指す。


「形」


沈黙。


その後、

声は、ゆっくりと言った。


「……かたち」


「それは、いる?」


「ある?」


《創造神ラグニエル》

『……』


初めて、

ラグニエルが言葉に詰まった。


「あるよ」


カナトは、即答した。


「俺も」


「この城も」


「扉も」


「全部、“形”がある」


「……全部?」


「全部」


声は、

何かを理解したようだった。


「……不便そう」


「制限が、多い」


リュミエールの背筋が、冷える。


「学習、早すぎる……」


「でも便利でもある」


カナトは続ける。


「触れる」


「壊せる」


「守れる」


「……壊せる」


その単語だけが、

少し、強く反響した。


《創造神ラグニエル》

『やめろ』


『それ以上の説明は不要だ』


『君は、まだ――』


だが、遅かった。


扉の隙間。


“何か”が、

内側から滲み出した。


光ではない。

闇でもない。


輪郭。


ただの線。

意味を持たない、境界。


「……見える?」


カナトが言う。


《見える》

《線?》

《バグ?》


声が、静かに言った。


「これが……」


「“形”?」


次の瞬間。


輪郭が、

自己を保ち始めた。


崩れない。

溶けない。

消えない。


存在が、確定する。


《創造神ラグニエル》

『――まずい』


オルメギアが、初めて断定する。


《全知神オルメギア》

『“形あるもの”が』


『向こう側で、発生した』


空が、軋む。


扉の向こうで、

“それ”は、まだ動かない。


ただ――

在る。


カナトは、画面を見つめたまま言った。


「……つまり」


「どのくらいまずい?」


ラグニエルの文字が、重く浮かぶ。


《創造神ラグニエル》


『人間でも理解できるように言うと』


『彼女と一緒に動画見てたら』


「......」


『元カノからの通知が表示されて』


「......ごくり」


『部屋が静寂に包まれたくらい』


「それはまずいな....」


扉の向こう側で。


“形あるもの”は、

確かに――

こちらを、見ていた。


同時視聴者数:250,666



28話 完


次回もお楽しみに!

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