21. 鯖落ち(サーバーダウン)
王都アルディアは、
まだ存在していた。
だが――
“繋がってはいなかった”。
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「……おかしい」
兵士の一人が、剣を握ったまま呟いた。
「音が……遠い」
自分の声が、
ほんの一拍遅れて耳に届く。
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城壁の上。
エイリン・ノクティエルは、はっきりと異変を感じ取っていた。
剣の重さ。
風の流れ。
足裏から伝わる振動。
すべてが――
“薄い”。
「……世界が、浮いている」
彼女の言葉に、リュミエールが静かに頷いた。
「接続が、削られています」
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王城・配信室。
カナトの目の前で、
コメント欄が止まった。
完全に、ではない。
数秒に一つ、
まるで瀕死の心拍のように流れてくる。
同時視聴者数:
498,312 → 480,000 → 451,207
『声聞こえる?』
『俺だけ?』
『画面止まってないのに、変だ』
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《全知の神オルメギア》
『……切り分けが始まった』
文字が、重く浮かぶ。
『世界を構成する層が』
『優先度順に、落とされている』
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《戦神バルド》
『戦場の処理が後回しにされているな』
《精霊王イリシア》
『感情と因果が、先に削られてます』
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「……どういうことだ?」
カナトが聞く。
リュミエールが、淡々と説明した。
「DoSは、“破壊”しません」
「ただ――」
「繋がりを、切っていきます」
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彼女は、指を一本立てる。
「あなたと視聴者」
一本、下ろす。
「神々と世界」
もう一本。
「時間と現象」
さらに一本。
「最後に――」
カナトを見る。
「あなたと、この世界」
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同時視聴者数:430,000
『怖いこと言うな』
『やめろ』
『マジで切れる感じ?』
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その瞬間。
配信画面が、完全に静止した。
映像は止まらない。
音も、まだ出ている。
だが――
“反応”が返ってこない。
コメント欄:更新停止
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「……来たな」
カナトは、苦笑した。
「一方通行か」
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《魔王ゼル=ヴァルド》
『姿を持たぬ敵ほど、厄介だ』
『殴れぬ』
『殺せぬ』
『威圧も効かぬ』
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王都の外。
固定されていたはずの敵が、
一体だけ、わずかに動いた。
ほんの数センチ。
だがそれは――
封印が“ほころび始めた”証だった。
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リュミエールが、歯を噛み締める。
「……封印維持が、削られています」
「DoSは、封印を解く必要すらない」
「処理優先度を下げればいいだけです」
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「つまり……」
カナトが言う。
「世界にとって、俺たちは――」
「今、一番どうでもいい?」
リュミエールは、否定しなかった。
「はい」
「だからこそ――」
彼女は、静かに続ける。
「次に切られるのは、配信です」
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その瞬間。
プツンッ
画面が、真っ黒になった。
音も、消えた。
完全な沈黙。
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配信終了
【通信エラー】
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世界から、
灰原カナトの姿が消えた。
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「……切れました」
リュミエールが言う。
神々の気配が、遠くなる。
《全知の神オルメギア》
『……ここから先は』
『我々も、直接は干渉できん』
文字が、途中で途切れた。
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王城は、静かだった。
あまりにも、静かで――
嫌なほど、現実的だった。
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エイリンが、前に出る。
何も言わず、
ただ、カナトの前に立つ。
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DoSは、次の段階に入った。
切断ではない。
遮断でもない。
“存在を、押し潰す”。
その負荷が――
今、カナトに向かって落ちてくる。
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(第二十一話・完)
次回もお楽しみに!




