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異世界で配信してたら神々がスパチャしてきた  作者: def
第一章

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20/39

20. 過負荷(スローダウン)


王都アルディアは、まだ崩れていなかった。


最恐の敵Dosとの戦いは続いている。


だが――

止まり始めていた。



封印された空間のあちこちで、

“動かない敵”が空中に固定されている。


咆哮を上げる途中で止まったドラゴン。

詠唱の途中で口を開いたままの魔導士。

爪を振り下ろす直前の魔獣。


すべてが、一瞬を永遠に引き延ばされた像のようだった。



「……成功、ですね」


リュミエールが、静かに言った。


「敵の行動は停止しました。

これ以上、増えません」


エイリンは剣を下ろし、息を整える。


「街は……守れています」



同時視聴者数:640,000


『止まった……?』

『勝った?』

『いや、雰囲気が勝利じゃない』



カナトは、画面から目を離さなかった。


「……重い」


誰にともなく、そう呟く。



配信画面。


コメントの流れが、明らかに遅くなっていた。


一秒で流れていた文字が、

二秒、三秒とかかる。


同時視聴者数:

640,000 → 630,000 → 615,000


『あれ?』

『コメント遅延してない?』

『なんか端末重い』



《全知の神オルメギア》

『……来ているな』


文字が浮かぶ。


『封印は、削除よりも重い処理だ』


『“存在を維持したまま止める”というのは』

『計算を延々と保持することに等しい』



《戦神バルド》

『つまり、時間を稼ぐほど――』


《精霊王イリシア》

『世界が疲れていくんですね』



「……神様たちも、きつい?」


カナトが聞く。


《魔王ゼル=ヴァルド》

『我らは問題ない』


一拍。


『だが――』


『この世界そのものが、耐えられん』



王都の一角。


時計塔の鐘が、鳴らなかった。


正確には――

鳴るべき時間なのに、音が出なかった。



「……今の、見たか?」


兵士が空を見上げる。


「鐘が……鳴らなかった?」


「いや……遅れてる……?」


数秒後。


ゴン……と、

ズレたタイミングで音が響いた。



リュミエールの表情が、僅かに曇る。


「時間処理に、遅延が出始めています」


「空間、存在、因果……」


「すべてが、順番待ちになっている」



同時視聴者数:600,000


『時間ズレた?』

『ラグやばくない?』

『世界がカクついてる』



カナトは、ゆっくりと立ち上がった。


「……敵は」


「俺たちを倒す気じゃないな」


リュミエールは、即座に頷いた。


「はい」


「倒す必要がないからです」


「ただ――」


彼女は、カナトを見る。


「あなたが“何もできなくなる”まで、

負荷をかけ続ければいい」



《全知の神オルメギア》

『配信』


文字が浮かぶ。


『配信こそが』

『この世界の最大の負荷点だ』



その瞬間。


配信画面が、明確に乱れた。


音声が途切れ、

映像が一瞬止まる。


同時視聴者数:

600,000 → 540,000


『止まった!?』

『一瞬落ちた』

『やばい、切れるぞ』



「……来るな」


カナトは、低く言った。


「本命は、ここだ」


エイリンが、一歩前に出る。


「……配信が止まれば」


「あなたは、孤立します」



リュミエールは、静かに告げた。


「ええ」


「次は――」


「直接、システムを殴ってきます」



空のどこかで。


“見えない何か”が、

確かに世界を叩いた。


音はない。


だが――

数字が、また一つ、狂った。


同時視聴者数:

540,000 → 500,000 → 498,312


中途半端な数値で、止まる。



カナトは、深く息を吸った。


「……大丈夫だ」


誰に言うでもなく。


「まだ、立ってる」


エイリンは、迷いなく答えた。


「はい」


「盾は、ここにあります」



世界は、まだ落ちていない。


だが――

確実に、重くなっていた。


次に来るのは、遅延ではない。


切断だ。



(第二十話・完)


次回もお楽しみに!

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