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異世界で配信してたら神々がスパチャしてきた  作者: default


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11/17

11. 雑談配信



配信タイトル:

【雑談】戦争の翌日なので、ゆるく話します【王都】


……誰が信じるんだ、これ。


王城の一室。

豪華すぎるソファ。

豪華すぎる茶器。

豪華すぎる護衛(騎士団フル装備)。


「……場違い感すごくない?」


同時視聴者数:215,000


『背景が雑談のそれじゃない』

『護衛が多すぎる』

『命の重みが違う』


やめて、緊張する。



「えー……じゃあ、雑談回ということで」


スマホを軽く持ち上げる。


「質問とか、あります?」


一瞬の静寂。


次の瞬間、コメント欄が爆発した。


『神と魔王どっちが強い?』

『世界公認って給料出る?』

『昨日のあれ、夢じゃないよな?』

『次どこ行くの?』

『命狙われる?』


「多い多い多い!」

「さばけるかっ!」


同時視聴者数:230,000




そのとき、

画面に、新しいUIが浮かび上がる。


《天輪評議会・公式機能》

【世界質問箱:開放】


「……なにこれ」


《天輪評議会・観測官》

『世界各層からの質問だ』

『公平に答えよ』


同時視聴者数:250,000


最初の質問が、表示された。


【Q:あなたは、世界をどうしたい?】


……重すぎ。


俺は、少し考えてから答えた。


「どうもしません」


「壊す気も、支配する気もないです」


「ただ――」


「面白いところは、ちゃんと映したい」


静寂。



次の質問。


【Q:神と魔王、どちらが好き?】


「最悪の質問来たな」


コメントが荒れる。


『踏み絵』

『世界最大級の地雷』

『終わった』


俺は、即答した。


「どっちも厄介」


一拍置いて。


「でも――」


「推してくれる存在は、嫌いじゃないです」


《魔王ゼル=ヴァルド》

『ふん』


《戦神バルド》

『正直で良い』


《運命の女神リラ》

『合格です』


《精霊王イリシア》

『“揺らぎ”ですね』


基準が分からない。




部屋の隅で待機していたエイリンが、小声で囁く。


「……カナト殿」


「はい?」


「今、何が起きているのですか?」


……ですよね。


「えーと……」


「世界の上位存在が、雑談してます」


エイリンは、三秒固まったあと。


「……理解しました」


理解した!?


「理解できるの!?」


「いえ。ですが――」


彼女は、少しだけ微笑った。


「あなたが中心にいる。それだけは、分かります」


……やめて、重い。




その時。


コメント欄に、見慣れない表示が現れた。


《システム通知》

【世界公認・観測配信者への通達】


同時視聴者数:260,000


『システム来た』

『嫌なやつだ』

『絶対ロクな話じゃない』


《通達内容》

・配信は、世界法則の影響を受けにくくなります

・同時に、世界からの“干渉”も増大します

・安全保証:なし


「……最後」


「さらっと一番大事なの書いてない?」


《全知の神オルメギア》

『要約すると』


『狙われる』


即答やめて。


《魔王ゼル=ヴァルド》

『当然だ』


《戦神バルド》

『力の中心は、常に争いを呼ぶ』


《運命の女神リラ》

『でも……』


『皆、あなたが好きですから』


フォローになってない。




その瞬間。


配信画面の端が、わずかに歪んだ。


「……?」


ノイズ。


一瞬だけ、別の“視線”を感じる。


《???》

『……観測、確認』



同時視聴者数:280,000


『今の何?』

『空気変わった』

『新キャラ?』


《全知の神オルメギア》

『……注意』


《戦神バルド》

『来るか』


《魔王ゼル=ヴァルド》

『面倒だな』


「ちょっと待って」


「雑談回だよ!? 今日!」


《???》

『世界が一つ、傾いた』


『原因を、見に来ただけだ』


画面が、元に戻る。


何事もなかったかのように。



同時視聴者数:300,000


『来訪者確定』

『世界の外側っぽい』

『次回ヤバそう』


俺は、深く息を吸った。


「……なるほど」


「視聴者層、また広がった感じですか」


『適応力お化け』

『この男、強すぎる』

『メンタルSランク』


俺は、カメラを見て笑った。


「まあ、いいや」


「見たいなら、見てってください」


「ただし――」


「荒らしは、ブロックします」


一瞬の間。


《???》

『……面白い』


その一言だけ残して、気配が消えた。




俺は、深く息を吐いた。


「……というわけで」


「今日は、この辺で終わります」


「雑談、難しすぎました」


コメントが流れる。


『おつかれ』

『命が重い雑談だった』

『次も見る』


配信終了ボタンに、指を伸ばす。


その直前。


《運命の女神リラ》

『カナトさん』


『今日は……ちゃんと休んでください』


珍しく、弱い声だった。


「……了解です」


配信終了。



スマホを置いた瞬間、どっと疲れが押し寄せた。


戦争より、雑談の方が疲れるって何。


窓の外、王都は平和だ。


だが俺は、はっきりと感じていた。


――この世界はもう、

「配信を見ていない存在」の方が、少ない。


次に来るのは、敵か。

観測者か。

それとも――世界そのものか。


(第十一話・完)

次回もお楽しみに!

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