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文化祭に向けて

 体育祭が終わり、学校全体は次の大きなイベント――文化祭の準備が続いていた。 そして当然のように、一条さんと松浦さん、遼の3人は僕を巻き込んで新たな「主人公計画」を始めようとしていた。

「三崎くん、次は文化祭でクラスの代表としてみんなを引っ張るのよ!」

「はい!私もサポートします!」

「悠斗、これはあなたが『主人公としての本領』を発揮する最大のチャンスだぞ!」

「……どうしてそうなるんだよ」

 クラスの出し物はまだ決まってないのに、彼らはもう「どうやって僕を注目させるか」の話で盛り上がっている。その熱量に、僕はいつもながら振り回されるばかりだった。


 そんな中、文化祭の準備で各クラスの代表が生徒会に集められる集会があった。 僕はくじ引きで「代表」として選ばれていまい、仕方なく出席することになった。

 生徒会室には、整った雰囲気の中で一人の女子生徒が立っていた。彼女は生徒会副会長の、3年生西園寺咲さいおんじさき先輩だった。

「各クラス代表者の皆さん、集まってくれてありがとうございます。文化祭の成功に向けて、力を合わせて頑張りましょう」

 西園寺先輩は、丁寧な言葉遣いと落ち着いた物腰で話していました。美人で、知識があり、まるで完璧な人間のような雰囲気を持っていました。

「まずは、一人ずつクラスの進捗状況を教えてください」

 僕の番が回ってきたとき、何をいったものかと、しどろもどろになりながら話した。

「えっと……まだ何も決まってなくて、これからクラスで話し合おうと思ってます」

「そうですか。でも、クラスを引っ張るのは代表のあなたです。期待していますね」

 西園寺先輩の言葉に、僕は何とも言えない重圧を感じた。


 その後、生徒会室を後にしようとした僕を、西園寺先輩が呼び止めた。

「三崎くん、少しいいですか?」

「え、はい?」

 僕は先輩を見つめながら、少しだけ微笑みながら言った。

「あなた、なかなか面白い人ですね。次の生徒会長候補にどうかと思っているんです」

「……え?」

 あまりの言葉に驚いて声が裏返る。 そんな僕を見て、先輩は「冗談ですよ」と笑ったが、その目には冗談とは思えない何かが宿っていた。


 文化祭の準備が本格的に進む中、進行のクラス2年C組は、初め出し物を「喫茶店」に決定した。 会議中計画は一条さんが熱心に進め、松浦が「ヒロイン修行」と称しそれをサポートしている――僕はどうしても違和感を覚えてしまった。

(……そもそも、松浦さんは1年生だよな? なんでうちのクラスの出し物の中で普通に参加してるんだろう?)

 午後、僕はその疑問を我慢せず、思いついてみんなに考えを伝えてみようと思った。


「えっと……ちょっと気になったんだけどさ」

 教室の真ん中で、一条さんが「喫茶店のメニュー案」を書いている横で、松浦さんが「ウェイターの動き方」を話しているのを見て、僕は手を挙げた。

「なんで松浦さんがこの教室に普通にいるんだ?」

 その場が一瞬静かになる。 僕は、みんなから「あ、確かにおかしいよな」と聞こえてくるのを期待していたが――

「別にいいんじゃないか?」

「彩花ちゃん、かわいいし、頑張ってるしね」

 クラスメイトの何人かがそう軽く返した。

「いやいや、普通に考えて! 1年生だよ? 学年すら違うのに!」

 僕が必死に頑張っても、クラスの誰も深く考えようとしない。そんな僕を見ながら遼が笑いながら言った。

「悠斗、細けえこと気にしすぎだって。松浦はうちの『準ヒロイン』なんだからいいだろ」

「準ヒロインって何だよ……」

 そこで、一条さんが話し始めた。

「三崎くん、彩花ちゃんは私の弟子みたいなものだもの。一緒に文化祭の成功を目指すのは当然じゃない?」

「いや、そういう問題じゃ……」

「そして、彩花ちゃんはあなたを支えのために来てるのよ。あなたのためなら、クラスの壁なんて細かいことだわ!」

 その言葉に松浦さんが笑顔で話しかける。

「はい! 私、三崎先輩の力になりたくて!」

「……僕、頼んだ覚えないけど」

 そこからさらに理解しがたいことを言い出した。

「いいじゃないか先輩。後輩との絡みも大事な事だしな!」

「先生までそんなこと言うんですか!?」

 僕はつい声を荒げてしまったが、先生は「社会勉強だよ」と軽く流してきた。

「1年生がこうして積極的に関わることで、2年生のリーダーシップも育つんだ。文化祭はただの行事じゃない。学びの場なんだよ、三崎」

「……僕、何をやってもしらないでお願いします」

 松浦さんは笑顔でいる。

(……なんで誰もおかしいと思わないんだ)

 心の中でそう訴えていた。


 その後も、松浦は普通にクラスの当然のように準備を手伝い続けた。 特に彼女の明るい性格と「ヒロインらしさ」への努力は、クラスの雰囲気をよくするのに一役買っていた。

「由梨先輩!喫茶店でお客さんを笑顔にする処置とか、どうしたらいいですか?」

「そうね、彩花ちゃん。それなら、こんな風に目を合わせて優しく話しかけるのが効果的だよ!」

「分かりました! 練習してみます!」

 二人の真剣な「ヒロイン研修」を横目に、僕はどっと疲れていた。


 こんな状況で僕が疲労困憊している中、生徒会副会長の西園寺先輩がまた話しかけてきた。

「三崎くん、松浦さんのようにな下級生を巻き込むのは、素晴らしいリーダーシップよ」

「いや、それ、僕の意志じゃなくて……」

「文化祭でのあなたの働き次第では、生徒会でもさらに重要な役割をお願いすることになるかも知れませんね」

「あの、やりたいとは一言も……」

「まあ、期待しているわ」

 完璧な笑顔でそう言い残し、去っていった。

(……僕、これからどうなんだろうか)

 文化祭に向けて、僕の周囲はますます不安になっていく――。


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