体育祭開催
開会式
体育祭は、校長先生のありがたいお話とともにスタートした。 正直、話の内容はほとんど覚えていないけど、各クラスが注目する横断幕や応援グッズの派手さが目に入ってきました。
「三崎くん、うちのクラスの幕横断、他のクラスより断然イケていると思わない?」
一条さんが自信満々に言い放った。 確かに、「2年C組、一致団結!」と書かれたカラフルな横断幕は、一条さんがクラスメイトを引っ張りながら作ってて、目を細めたデザインだった。
「まあ……いい出来だと思いますよ」
「ヒロインが手掛けたから完璧よ!」
リレー競技
最初の競技は、体育祭の花形種目でもあるクラス対抗リレーだった。
「悠斗、ここはお前が目立つチャンスだな!」
天城遼がそう言ってニヤリと笑う。
「いや、普通に走るだけだから……」
緊張しながらバトンを待っていると、1年B組の朝倉くんがすぐ近くにいるのに気づいた。
「三崎先輩、頑張りましょう!」
「……ああ、お互いにね」
お互いに軽い声を掛け合ったあと、スタートの笛が鳴り、リレーが始まった。
僕の番が回ってきたとき、手にしたバトンの重さが妙に感じられた。 僕が遅れればクラス全体に影響――そのプレッシャーに押されながらも、全力で走った。
結果は、2年C組が3位。惜しくも1位を逃したけど、クラスメイトたちは頑張ってくれました。
借り物競争
続いて行われたのは借り物競争。
「さあ、三崎くん! 頑張って!」
一条さんに背中を押されてスタートラインに立って、怖いカードを引いた。
「「クラスで一番目立たない人」」
「……おい、これ、どうしたらいいんだ」
僕が呆然としていると、観客席から遼の声が飛んだ。
「おい悠斗、それはあれじゃねえか! 自分を借りてゴールしろ!」
「そんなのアリなのかよ!」
そのあと、僕は近くにいた1年生のの男子を「目立たない代表」として引っ張り、なんとかゴールした。一緒に行きましょうと言ったとき僕は彼と顔を合わせることができず気まずい空気の中ゴールした。
誰だよこんなお題書いたやつ...
綱引き
チームの力が試される綱引きでは、2年C組は見事に勝利を収めた。みんなでハイタッチを集中したとき、何か少しだけ胸が熱くなるのを感じた。
「よっしゃ! これで流れを掴んだな!」
遼がそう叫び、クラスメイトたちが盛り上がる中、一条さんは次の試合の作戦会議を開き始めた。
「三崎くん、ここは私たちが先頭に立ってクラスを引っ張ってもいいよ!」
それは果たして作戦といってもいいのか……
クラス全体リレー
最後の競技は、学年ごとのクラス対抗リレー。クラスごとに走るというルールで、チームワークが試されるシーンだった。
なんでこの学校リレーが何回もあるんだ...
そんな細かいことを気にしているとふと隣から声を掛けられた
「三崎くん、ここが勝負どころよ! 主人公らしいところを見せなきゃ!」
「いや、僕の番なんて短いんだから……」
「短くてもヒロインの期待は裏切らないで!」
一条さんに熱心に押され、僕はリレーのバトンを受け取った。クラスメイトたちが応援する中で、全力で駆け抜け、次の走者にバトンをつなぐ。その瞬間、遼が大声で叫んだ。
「悠斗! お前、今ちょっとカッコよかったぞ!」
「……だから普通に走ってるだけだってば!」
結局最後僕らのクラスは2位。惜しくも1位を逃したけど、全員で肩を組んで喜んだ。
全競技が終了し、ついに体育祭の結果発表の時間がやってきた。各学年のクラス別得点が発表され、2年C組は2位に終わった。
「悔しい!あとちょっとで優勝だったのに!」
「まあ、でも楽しかったからいいんじゃない?」
クラスメイトたちは悔しがりながらも笑顔を見せていた。
総合優勝は――3年生だった。
「いやー、さすが3年生って感じだな」
遼が言いながら言う。
「悔しいけど、3年生はみんな強かったし、あそこもすごかったよね」
私もその意見に同意した。最後の学年としての団結力と経験の差を見せつけられた気がする。
その日の帰り道
体育祭が終わり、今日はクラスで片付けをしたあと、遼、一条さん、そしてなんと朝倉くんと一緒に帰ることになった。
「お互い頑張りましたね、三崎先輩」
「……まあね。朝倉くんもお疲れ様」
朝倉くんは少し照れたように笑った。その様子を見た遼が茶化す。
「悠斗、いい感じじゃねえか。ライバル同士、友情が芽生えたってわけだ!」
「だから、ライバルじゃないって……」
「でも、三崎くん。今日はちょっと主人公っぽかったわよ?」
一条さんが微笑みながらそう言った。その言葉に、僕はどう答えていいかわからず、少しだけ頬をかいた。
(主人公っぽかった……のかな)
体育祭が終わった今、僕はまだ自分が変わってしまったのかどうかは気づいていない。
体育祭が終わって数日後、いつも通りの平穏な教室に戻ってきたかと思っていたその時だった。昼休み、クラスの入り口に小柄な女の子が立っているのが見えた。
髪は肩くらいまでで、制服のリボンが1年生の色だった。 その子は不安そうに教室を見て回ってから、僕の方に真っ直ぐ歩いてきた。
「えっと……三崎先輩ですよね?」
「え、僕?」
突然のことで驚きながらも、周囲の視線がここに集まっているのを感じて、仕方なく聞き返した。
「そうだけど……君は?」
その子は大きく深呼吸をしてから、覚悟を決めたような表情でこう言った。
「私、1年B組の松浦彩花です。」
「三崎先輩を見て、私、気づいたんです。主人公にすべき人は朝倉くんじゃなくて、三崎先輩なんだって!」
その言葉を聞いたとき、僕は思わず固まってしまった。 しかし、横にいた一条天城さんと遼は、目を輝かせていた。