対決開始
「三崎悠斗、やるじゃねぇか」
支持率改ざんを暴かれた神代陣営だったが、悠真の弟・拓海はまるで楽しんでいるかのように笑っていた。
「お前らがピンチをチャンスに変えたことは評価する。でも――選択はまあまあいいよ」
悠真陣営の動きを観察した拓海は、すぐに次に手を打ってきた。
「天城遼――あいつ、三崎悠斗と同じクラスで人気もあるし、スポーツ万能のスター選手だよな」
「……それがどうした?」
悠真が冷静に考えてみると、拓海は口元に少し笑みを考えた。
「もしも、あいつが『悠斗じゃなくて自分が生徒会長候補にするべきだった』なんて思ったら、どうなると思いますか?」
「……遼が?」
「そう。三崎悠斗の影に隠れている『真の主人公』――なんて噂を流してみれば、選挙戦がどうなるか見ものだろ?」
拓海は動き出した。
選挙終盤の緊張感を利用し、クラスや陣営の中に意外とな不和を生むために、生徒達の間で以下のような噂を流し始めたのだ。
「三崎悠斗より、天城遼の方が適任じゃない?」
これが徐々に広まり、段階的な陣営に少しずつ影響を与え始めた。
「ねぇ、三崎くん。最近、生徒達の間で変な噂が伝わってるわよ?」
一条さんが、少し心配そうに報告してきた。
「変な噂?」
「『遼くんが出馬してたら、もっと簡単も勝ってた』って話よ。遼くんが悪いわけじゃないけど……」
遼がその話を聞いて覚悟を決める。
「俺が生徒会長?冗談だろ。そんなの、絶対無理だって」
「でも、遼くんは生徒たちからすごく支持れてるし、そう思う人がいるのもわかってるよ」
彩花ちゃんは控えめに言う。
「……気にしてないけどさ」
遼の声がほんの少し辛かったのを、僕は聞き逃げさなかった。
(遼が気になってなくても、周りが意識し始めたら、陣営の空気が変わるかもしれない)
「これは拓海対策略だ」
村瀬がすぐに状況を分析した。
「悠斗、君が今やるべきことは、遼に何かを要求するんじゃなくて、『君自身がリーダーとしての姿を見せること』だ」
「……僕がリーダーとして?」
「お前は自分を“モブ”だと思ってるかもしれないが、遼も由梨も彩花も、お前が中心にいるからついて来てる。それを忘れるな」
「……分かったよ」
あんな混乱が続く中、霧崎生徒会長が動きを見せた。
体育館に全校生徒を集めた朝礼で、彼は選挙戦に関する重大な発表を行った。
「これから、選挙戦のクライマックスとして―― 『最終試練』を開催する。」
「最終試練……?」
生徒たちがざわ先輩めくり中、霧崎は飄々とした口調で続けています。
「この学校で生徒会長を務めるには、知識も行動力も、そして『信頼』も必要だ。そこで、候補者には生徒たちとチームを組み、課題を解決する能力を競ってもらえる」
「課題……?」
「簡単に言えば、生徒たちの問題ごとを解決する実践型の試験だな」
その瞬間、悠真の目にわずかに余裕があった。
(……悠真にとっては得意分野だろうな)
それでも、霧崎先輩の発言には続きがあった。
「もちろん、『候補者一人ではクリアできない内容』だから、仲間の力も試される」
「仲間の力……?」
僕の背中を、遼が叩いて言った。
「おい悠斗、これは俺の出番だろ?」
一条さんも笑顔で話しかけます。
「チーム戦なら、私たちの力を見せる時ね!」
(……これ、完全に仲間たちが活躍する展開になるやつじゃないですか?)
霧崎先輩が発表した「最終試練」の内容は、学校内の生徒たちが驚くべき課題を候補者がチームで解決し、最も多くの課題を解決した陣営が勝利したというものだった。
「よし、俺の得意分野じゃないか!」
遼が拳を突き上げる。
「彩花ちゃんサポートに回って、由梨が交渉役、俺が分析役をやれば……悠斗、お前は直接行動すればいい」
村瀬が冷静に作戦を組み立てる。
「そうですか……じゃあ、みんなで協力してますよ!」
課題解決レースが始まると、僕のチームはひとりひとりが得意分野を話し合って目覚ましい活躍を見せた。
遼:スポーツ関連のトラブル解決で
体育館で発生した器具トラブルを修理し、生徒たちを感動させました。
一条さん:交渉力を発揮する
美術部の展示問題を思い切って調整で解決し、拍手喝采する。
彩花ちゃん:新人たちをサポート
1年生の宿題トラブルを手助けし、「優しいお姉さん」として人気爆発。
村瀬:冷静な分析で最小ルートを考える
図書館で発生した複雑な棚卸し問題を、驚異的な効率で解決する。
(なんか……俺、何もしてない気がするんだけど……!?)
仲間たちが目覚ましい活躍をする中、僕は影に隠れるような形で課題を進めていた。
「いや、これ、完全にみんなが“主人公”だよな」
課題を解決する仲間たちを見て、僕は再認識する。
結局はすごい。
自分が頑張らなくても、きっとこの選挙戦は勝てるんじゃないか……そんなことさえ思った。
(でも……だからこそ、僕はここにいる意味がある)
僕はみんなを見て、少しだけ笑った。
(僕が“モブ”でよかった。これで、この選挙戦もきっとうまくいく)




