新たな出会い
チャリティーイベントの後、僕が「彩花ちゃん」呼びをするようになったことは、クラス中でちょっとした話題になっていた。そんな中、一条さんがまたしてもニヤニヤしながら近づいてきた。
「ねえ三崎くん、彩花ちゃんのこと名前で呼び始めたんですってね?」
「……それ、一条さんが焚きつけたからじゃないの?」
「まあ、確かにそうだけど。でも、私だって名前で呼んでほしいわよ?」
「えっ? いや、一条さんのことは普通に“一条さん”で……」
「そんな堅苦しい呼び方じゃなくて、“由梨”でいいのよ! ほら、試しに呼んでみて?」
「……いやいや、それは流石に……」
「大丈夫よ、彩花ちゃんにはできて、私にはできないなんて言わないわよね?」
一条さんは明らかに僕をからかって楽しんでいる様子だった。横から彩花ちゃんがフォローしてくれる。
「由梨先輩、そんなに三崎先輩を困らせないでくださいよ! でも、もし三崎先輩が“由梨さん”って呼んだら、それはそれで面白いかも!」
「彩花ちゃんまで……」
僕が困惑していると、遼が笑いながら肩を叩いてきた。
「悠斗、ここはお前が“男”を見せるところだろ? 名前で呼んでやれよ!」
「遼、そういうのはいいから黙っててくれ!」
村瀬も淡々と口を開く。
「名前の呼び方一つでここまでいじられるのも珍しいな。まあ、試しに呼んでみればいいんじゃないか?」
「お前まで……!」
結局、一条さんの期待に応えることはできず、その場はうやむやに終わった。
その数日後、またしても校庭に見覚えのある顔ぶれが現れた。以前、校庭を無断で横切ろうとして遼と村瀬が一悶着を起こした他校の生徒たちだったが、今回はちゃんと正門を通って学校にやってきたらしい。
「おい悠斗、あいつら、また来たぞ!」
遼が僕の肩を叩いて言う。
「でも、今回はちゃんと正門から入ってきたみたいだし、別に問題ないんじゃないか?」
「それにしても、何しに来たんだろうな?」
僕たちが校庭の端で見守っていると、以前の騒動のときに「好感が持てる」と言ってきた男子生徒がこちらに気づき、近づいてきた。
その男子生徒は前回と同じように肩の力が抜けた様子で、少し笑みを浮かべて僕たちに声をかけた。
「よ、また会ったな。前は世話になったな」
「ああ、ちゃんと正門から入ってくれてありがとう。で、今日は何しに来たの?」
僕が少し警戒しながら尋ねる。
「ちょっとした用事だよ。知り合いに会いに来ただけだ」
彼はさらりと答えたが、その視線は僕をじっと見つめていた。そして、ふと意味深な言葉を口にする。
「それにしても、お前たち、なんか面白いことやってるらしいな。“主人公計画”とか言ってさ」
「えっ……!?」
僕は驚いて彼を見返した。
「なんでそれを……?」
「まあ、ちょっとした噂で聞いただけさ。お前が“ヒーロー”になる計画なんだろ?」
彼は軽い口調でそう言いながら、またしても意味深な笑みを浮かべた。そして、最後にこう付け加えた。
「ヒーローには、悪役がつきものだよな」
その言葉を残し、彼は手を軽く振りながら去っていった。
困惑する悠斗
その場に残された僕たちは、彼の言葉の意味を測りかねていた。
「……おい悠斗、今のどういう意味だと思う?」
遼が首をかしげる。
「さあ……でも、なんで“主人公計画”のことを知ってたんだろう?」
「誰かが外に漏らしたのか? それとも噂が広まったのか……」
村瀬も眉をひそめる。
一条さんが不安そうに言った。
「ヒーローには悪役がつきもの……? まるで、これから何か起きるって言ってるみたいじゃない?」
彩花ちゃんも心配そうに頷く。
「三崎先輩、気をつけてくださいね。もしかしたら、何か問題が起きるかもしれません!」
「……いや、そんなこと言われても、僕にどうしろっていうんだよ」
僕は頭を抱えながら、彼の言葉が気にかかって仕方がなかった。




