イベント当日!
イベントの成功に向けて準備が進む中、西園寺咲先輩がまたしても僕に声をかけてきた。
「三崎くん、チャリティーイベントのアイデア、とても素晴らしいわ」
「いや、これは遼と村瀬が提案したもので……」
「でも、あなたが運営をまとめているのよね? それが重要なの。生徒会長には、周囲を動かす力が必要なのだから」
「でも、これってただのイベントで……」
先輩は微笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「選挙活動の一環としても、十分な影響力を持っているわ。このイベントが成功すれば、あなたの支持もさらに広がるはずよ」
「またそれですか……」
「あなたならできるわ、三崎くん」
先輩の言葉は妙に説得力があって、僕は断りきれなかった。
イベント当日。校庭には多くの生徒たちが集まり、サッカー大会の熱気に包まれていた。遼と村瀬を中心に試合は順調に進んでいたが、予期せぬトラブルが起きた。
試合の途中、審判を担当していた1年生の男子が判定を巡って一部の選手たちと口論になり、場が険悪な空気に包まれたのだ。
「それ、絶対にオフサイドじゃない!」
「いや、今のは完全にオフサイドだろ!」
選手同士が言い争いを始め、審判の1年生も困惑した様子で固まってしまっている。
「おい悠斗、どうするんだよ!」
遼が僕を振り返る。
「……何で僕に聞くんだよ!」
「お前が運営のリーダーだからだろ!」
仕方なく僕は審判と選手たちの間に入り、場を収めるべく声を上げた。
「ちょっと待って! 今の判定は一旦保留にして、試合をリスタートする形にしよう。トラブルを引きずるより、みんなが楽しめる方が大事じゃない?」
その言葉に、一部の選手たちは渋い顔をしながらも納得し、試合が再開された。
試合終了後、遼と村瀬が僕のところにやってきた。
「悠斗、さっきの判断、良かったと思うぜ! お前が間に入ったおかげで試合が無事に終わったしな!」
遼が笑顔で言う。
「まあ、お前がいないと、俺たちだけじゃあの場は収まらなかっただろう」
村瀬も淡々と続ける。
「いやいや、お前らが最初から問題を起こさなければ済む話だろ」
そう言いながらも、二人の信頼を感じて少しだけ悪い気はしなかった。
イベントが無事に終わり、片付けをしていたとき、彩花ちゃんが再び僕のところにやってきた。
「三崎先輩、今日はありがとうございました! 私、すごく楽しかったです!」
「いや、僕の方こそ、彩花ちゃんがいてくれて助かったよ」
「……もう、“三崎先輩”もやめていいですよね?」
「え?」
「これからは、私も“悠斗先輩”って呼びますね!」
「えっ、いや、それはちょっと……」
突然の呼び方変更に僕が戸惑っていると、遠くから一条さんの声が飛んできた。
「三崎くん! それでこそ主人公よ! 仲間との距離感を縮めるのは大事なことだわ!」
(いや、なんで一条さんがそれを判断するんだよ……)
こうして、「彩花ちゃん」呼びは僕の中で完全に固定され、彼女との距離感がほんの少しだけ縮まったように感じた――。
イベントが無事に終わった翌日、西園寺先輩が僕のもとにやってきた。
「三崎くん、チャリティーイベント、大成功だったわね」
「何とか終わっただけですけど……」
「いえ、生徒たちの間では、あなたの行動が高く評価されているわ。選挙活動としても、非常に良い成果が出たと言えるわね」
「またその話ですか……」
「次は、もっと大きな舞台であなたの力を発揮してもらうわよ」
「えっ、大きな舞台って……?」
先輩の意味深な笑みに、僕はまたしても不安を感じるのだった。




