文化祭の波紋その2
文化祭の劇が終わってからというもの、天城遼と村瀬翔太に関する「怪しい噂」が校内に広まっていた。
「天城先輩と村瀬先輩、あの感じ、ただの演技じゃないんじゃない?」
「仲良すぎるよね。一見自然体というか……逆にリアルで尊い!」
「これからも二人の絡みが見たい! 」
僕はその噂を思い出す度に、恥ずかしかったです。
(だから言っただろ……あの台本、危険だって)
ところが、遼と村瀬本人たちは全く気づいていない。
いつかの昼休み、遼と村瀬が僕の机にやってきた。
「悠斗、最近女子達が俺たちをじっと見てる気がするんだけど、俺たちってそんなに注目されてんのかな?」
遼が首をかしげる。
「……それ、注目されてる理由、知らないのか?」
僕が問うてみると、村瀬が冷静に答えた。
「まあ、文化祭の劇がちょっと成功したからだろうな。それ以外に理由は思いつかない」
(いや、ちょっとじゃないけどな……)
「何か問題でもあるのか?」
遼が僕の顔を突き詰めてくる。
「いや、何でもない。君たちが幸せならそれでいいよ」
「幸せって何だよ!!」
僕が適当に流していると、遼はさらに問い詰めて来たが、村瀬はひたすら淡々としていた。
あの二人がついに真実を知ったきっかけが訪れた。 それは、女子生徒たちの廊下で会話しているのを偶然聞いてしまったからだった。
「天城先輩と村先輩って、やっぱりそういう関係なんじゃない?」
「文化祭の時の劇とか、普段の仲の良さとか、もう公式でしょ!」
「応援したくなるよね!」
遼と村瀬は廊下の角でそれを聞き、凍りついた。
「……おい村瀬、今の聞いたか?」
「ああ、聞いた」
「俺たち……『そういう関係』って思われてるのか?」
「みたいだな」
二人は顔を見合わせたあと、今度は僕のところへ駆け寄ってきた。
「悠斗! 俺達が変な噂されてるって知ってたののか!?」
遼が机を猛然と迫ってくる。
「まあ……薄々はね」
僕は考えることを諦めながら答えた。
「何で教えてくれなかったんだよ!」
遼は慌てた様子たったが、村瀬は冷静だった。
「悠斗、お前も気づいてたのなら、先に教えてくれたって良かったんじゃないか?」
「無理だよ! 君たちはあんなに真面目に言うから、喜ばれるんだよ!」
「……それは台本のせいだろ?」
「だから台本が危ないって言ったのに!」
僕が必死に説明していると、遼が何かを思いついたようにニヤリと笑った。
「よし、決めた! この噂を逆手に取って、悠斗を主体にして新プロジェクトを始めるぞ!」
「いやいや、どう繋がったよ!」
遼が言う新プロジェクトは、BL噂を「青春の友情」として演出し、さらに悠斗を巻き込む形で周囲を盛り上げるというものだった。それを聞いた一条由梨と松浦彩花もすぐに賛成する。
「いいわね!青春って、友情も含まれてます!」
一条さんは楽しいそうだ。
「三崎先輩を中心に、天城先輩と村瀬先輩の“熱い友情”を描いてみます! 素敵です!」
松浦さんも目が輝ける。
「いや、そんなの絶対におかしいだろ!」
僕が言うも、遼はニヤニヤしながら続けた。
「悠斗、気楽に考えろよ。これで俺が噂を手に取って、さらにお前を逆目で見られるんだから一石二鳥だろ!」
「これが注目理由ってのがおかしすぎるって!」
村瀬も冷静に考えた。
「まあ、俺たちが動けば噂の先は変えられるだろうし、悠斗が巻き込まれるのは結果的に良いんじゃないか?」
「村瀬、君まで……」
翌日から、遼と村瀬は「友情アピール」を強化し始めました。 横断歩道では、わざとらしく肩を組んで歩いたり、昼休みにふざけて姿を見せたり、女子たちの注目を集めたり。
「天城先輩と村瀬先輩、仲良すぎるよね!」
「本当に青春って感じ!」
「でも、三崎先輩がある二人をまとめてるのも良い!」
結果、僕はさらに注目されることになり、日々の疲労感が増していました。




