文化祭の波紋
文化祭が終わり、校内では「王子と魔法使いの冒険譚」の話題で持ちきりだった。
「天城先輩と三崎先輩、あの感じ、最高だよね!」
「村瀬先輩のあの声、もう一回聞きたい!」
「BLだけどさ、爽やかでいい感じ!」
僕は耳に入ってくる声を聞く度に頭を悩ませました。
(なんでこんな事になるんだよ……!)
一方、当の天城遼と村瀬翔太は、まったく気になる様子もなく、いつも通りだった。
「悠斗の劇、マジで盛り上がったな!俺達の演技が評価されるって、やっぱいいよな!」
「いや、評価されてるのは演技っていうか……」
「何だよ?言いたいことがあるなら言えよ」
「いや、いいや……」
隣では村瀬が淡々と言った。
「確かに盛り上がったけど、あれは、女子の反応は予想外だったな。まあ、台本通りにやっただけだが」
「村瀬、それ、問題の本質に気づいてないからな……」
(本当にこの二人は知らないんだな……)
文化祭の成功を受けて、生徒会副会長の西園寺咲先輩がすぐに僕を呼び出してくれた。生徒会室に入ると、先輩はいつもの完璧な笑顔で迎えてくれる。
「三崎くん、劇の成功、おめでとう。とても素晴らしかったわ」
「ありがとうございます……」
「でも、あなたの素質は劇だけじゃ終わらないと思うの」
「え?」
先輩は書類を広げながら説明を続けた。
「実は、次期生徒会長候補として名前が挙がっているのよ。もちろん、あなたが認めればの話だけど」
「生徒会長!?」
僕は驚きのあまり声を上げてしまいました。
「でも、僕なんて普通の生徒ですし……そんな器じゃ……」
「普通だからこそ、人の心が動くのよ。あなたが芝居で見せた姿、みんなが見ていたわ」
「それは、脚本と演技が……」
「謙虚半分言っていました。文化祭での成功は、あなたの努力の結果よ」
先輩の言葉に押され、僕は返す言葉を見つけられなかった。
そんな中、一条由梨と松浦彩花は次の計画を練っていた。二人は劇の挑戦を受け、引き続き「主人公プロジェクト」を提案してきた。
「三崎くん、文化祭の劇、大成功だったわね! 次はさらに大きな舞台を目指しましょう!」
一条さんが得意げに言う。
「そうですよ! 三崎先輩は次、生徒会で主人公になれるはずです!」
松浦さんも強く言う。
「いや、僕、そんなこと望んでないんだけど……」
「ダメよ! 主人公は自分で望まなくても、周りが動くものなの!」
「由梨先輩の言う通りです! 私、三崎先輩のために全力で動きます!」
二人の目は浮かんでいて、僕が何を言っても聞くことはなかった。
遼と村瀬は文化祭の劇の影響で校内の女子たちから注目を集めていた。廊下ではこんな会話が聞こえた。
「天城先輩、カッコいいだけじゃなくて演技も上手いよね!」
「村瀬先輩の冷静な感じ、最高!」
「二人って、もしかして特別な関係なのかな……」
その噂を本人たちは全く知らない。
「天城、三崎、この後サッカーの練習だけど、一緒に飯行くか?」
「ああ、いいけど」
「仲良いな、お前ら……」
僕が遠慮しながらそう言うと、遼が笑いながら返してくれた。
「悠斗、俺達は君と違って情に厚いだけだよ!」
(それが目立ってるんだって……)
西園寺先輩からの誘いを受けて、僕は悩んでいます。
(文化祭の劇はみんなのおかげで成功しました。でも、生徒会なんて本当に僕にできるのか?)
成功は、一条さんや松浦さん、さらには遼や村瀬たちが、僕を中心に動いこうとしている感じだったのです。
(……僕はこのまま、周りに流れていていいのか?)
そんな葛藤を抱えながら、僕は次のステージへの一歩を歩み始めていた――。




