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プロローグ

 教室の隅の席に座る僕、三崎悠斗みさきゆうとは、今日も特に何も考えずいつも通りの1日を過ごしていた。周りの雰囲気に溶け込めず、放課後まで静かに過すことが日課だ。

 こんな僕に声をかけてくれた数少ない友達の一人が、今、教室のドアを幻想的に開けて入ってきた。

「悠斗、今日は放課後空いてるか?」

 教室中の注目を集めながら話しかけてくるのは、クラスの人気者、天城遼あまぎりょう。彼は背が高くて顔立ちも整っている上に、勉強もスポーツも万能だ。誰がどう見ても「陽キャ」みたいな男だ。

 ……ともかく、なぜか僕と友達でいてくれる。

「え、特に何もないけど……」

 遼の突然の問いかけに、僕は少し戸惑いながら答えた。すると彼は満足げに聞いていた。

「よし、それじゃあ決まりだな! 今日は俺に任せてくれ。お前を少しは『主人公』らしくやってやる!」

「はぁ……? 主人公?」

 始まった

「そうだ、悠斗。お前みたいな陰キャだって、いつか人生の主役になれる! 俺が証明してやる!」

 ……そう、天城遼は自分が「主人公」だと思っている。


遼は周囲にとっても「なんかイケてる奴」で通っているが、実際の彼は「自分は特別な存在である」と本気で信じていて、日常の出来事を大げさに解釈する癖がある。対して、「モブキャラの親友を助けて主人公になる」的なストーリーを勝手に妄想しながら行動しているのだ。

たとえば、昼休みに弁当を一緒に食べているときの会話も、こんな感じだ。

「悠斗、俺は考えてる。君はまだ気づいていないけど、絶対に何か秘めた才能がある。隠された血筋とか、覚醒する力とか……」

「いや、そんなことはないから」

「だって、クラスの女子とほとんど話さないだろ? それはだよ、まだヒロインが現れてないだけだ!」

「いや、話さないのはただ人見知りだから……」

なんだか、遼は僕の言葉を全く聞かず、自分の世界を突き進む。だけど、不思議なことに彼と一緒にいると少しだけ笑ってしまって自分がいる。


こんな日々の中、新学期が始まった時だった。僕と遼のいつもの昼休みが終わり、午後の授業が始まるまとしてろういたとき、担任の赤城先生が教室に入ってきた。そして驚きの発表をした。

「今日からこのクラスに転校生が来ることになった。入って来い」

クラス中がざわつく。転校生なんて珍しい。僕もつい顔を上げドアの方見ていた。すると、ドアが開いて、そこに立っていたのは――

「初めまして。一条由梨いちじょうゆりです。よろしくお願いします」

長い黒髪をなびかせ、落ち着いた雰囲気の美少女が静かに教室に入ってきた。その瞬間、教室中の空気が変わった。「特別な存在」が現れた、という感じだった。

僕はというと、まるで別世界の人が見るような感覚で彼女を眺めていた。これまでの人生で、あんなに綺麗な人を間近で見たことなんて一度もなかったからだ。

「席は……そうだな、三崎の隣が空いてるな」

担任の一言に、僕の頭が一瞬真っ白になる。

「えっ、僕の隣?」

ふと横を見るといつの間にかさっきまでなかったはずの空席がそこにはあった。

先生は、由梨さんに「三崎の隣だ」とだけ伝えた。 由梨さんが微笑みながら僕の隣の席に来ると、クラス中の視線が一気にここに集まった気がして、僕は居心地の悪さに耐えられなかった。

「よろしくね、三崎くん」

一条さんがそう言ってくれて軽い微笑む。その笑顔に、僕は何も言うこともできず、ただ頷くだけだった。


放課後、帰り道で遼がテンション高く僕に話しかけてきた。

「悠斗! これはきたな! ついにお前のヒロインが現れたぞ!」

「いや、何言ってんの?」

「だってあの転校生、すごく可愛いじゃないか。たまたま席も隣だぞ?これ、運命だろ?」

「運命なんかないだろ。ただの偶然だよ」

僕が否定しても、遼は全く耳を持たない。 それどころか、「俺に任せておけ」と意味不明な宣言をしてきた。

「悠斗、まずは自己紹介からだ。由梨さんと話すきっかけを作った! 俺が話しかけてくる!」

「いや、本当にやめて……!」

遼の空回るお節介に、僕はうんざりしつつも、少しだけ嬉しい自分がいるのに気づいてしまった。一条さんみたいな人と、僕が普通に話せるようになる日が来るだろうか……?


 運動部のエースや委員長など、僕とは縁遠い「陽キャ」たちが競うように話しかけているのを横目に見つつ何かが気にかかった。なぜだかとても不安が募る。

でも、その日の放課後、予想外の展開が僕を待っていた。


「三崎くん、少し時間ある?」

一条さんが僕の席に近づいてきて、柔らかな声でそう言った。

「え、僕に……?」

「うん。ちょっと相談したいことがあるの。迷惑じゃなきゃだけど……」

教室中の視線が集まる中、一条さんがそう言った瞬間、僕の静かな日常が大きく崩れ始めたのを感じた。


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