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本音

作者: チャロたん2

下から見上げる瞳が、なにもかもを拒むかのように、かたくて暗い。

『私は、愛してる』

一切の躊躇も恥じらいもなく、そんな言葉、君に伝えられたらいいのにね。


これは一年ほど前のことだろうか。

弟がまだ学校に通っていたころ、家族で京都のリニューアルオープンしたばかりの水族館へ旅行に行った。

両親が外で待っていると言ったから、お金をもらい私たちはお土産ショップへと入った。

「これ買おかな」

そう言って弟が手にとったのは、つぶらな瞳が印象的な水色のメンダコキーホルダー。

「お、ええやん。じゃあレジ並ぼか」

そうやって二人でレジに並び、両親と合流してから近くのベンチで次に行く場所の話をしていた。

あ、そういえば買ったメンダコ、私がまだ持ってたんだった。

「なあ、これさっきの」

「あんた、きづいとった?」

地面をじっとみつめたまま、彼は私の話をさえぎった。

「さっき後ろに並んどった女の人たちが、あんたが水色のメンダコみてかわいーって言ったんを、きもっていよったんよ」

はて、と思い出す。

そういえばレジに並んでいるとき、お金を払うのは私だったから、キーホルダーも自分で持っていた。

そのときにかわいいと言ったのは覚えている。

今思えば、その女の人たちは、私に嫉妬したのではないかとすら思うのだが。

弟と私は2歳差だが、その当時彼のほうが私よりも15センチ背が高く、親がいなければ周りからはよくカップルだと間違われていたのである。

だから、水族館に来ているカップルだと思われる人にムカついたから、後ろから悪態をついてきたのだろうと、今なら思える。

もちろん、悪口を言われて気分が良くなる人なんていない。

だから今でも思い出すだけでも胸がモヤッとするのだが。

けれどそのとき私は、その話を聞いて今とは全く違う感情に支配されたのだ。

地元から離れてもこの子はまだ、人に囚われているのだ、と。

さっきまで感じていた高揚感が、芯からスウッと冷えていくかんじがした。

弟がいじめられるきっかけになったのは、他のいじめられているこをかばったこと。

根も葉もないうわさや悪口が徐々に広まり、汚い言葉を教科書やプリントに刻まれるようになった。

今まで仲の良かった友達も、みんな離れていった。

かばったはずの子も、今ではなぜかいじめに加担する側になってしまった。

そんな、人間不信にならざるをえないほどの環境にいたら、人のどす黒い雰囲気に敏感になってしまうものである。

とにかく、悪口を言ってきた女たちのことよりも、弟がまたさらに、自分の傷を深めてしまったことが、なによりもつらかった。

下を見ると、握っていたくりくりした瞳のメンダコと目があう。

このこは、弟に渡さないほうがいいんじゃないか。

弟が欲しいと思ったものを真っ向から否定してきたやつらのことを、このメンダコを見るたびに思い出してしまうのではないだろうか。

「あのさ、やっぱりこれ」

「ああそれ、もらうわ」

そう言って、弟がひょいっとそれを私の手から抜き取った。

「え…つけるの?」

だって、それをみたら……。

「まあ、あんたもかわいいっていよったしな」

そう言いながら弟は、キーホルダーをカチャカチャとリュックにつけてしまった。

「……うん」

よかった。心無い人たちの言葉で、弟が自分の“好き”を嫌いにならなくて、よかった。

真っ黒のリュックにお似合いな、明るめの水色のメンダコキーホルダー。

「ほんま、こんなかわいいのに、その人らはセンスないなー」

そう言うと、ははと軽く笑ってから、彼がベンチから腰を浮かせた。

右に左にフリフリと揺れるそのこが、大丈夫だよと励ましてくれたきがした。

「ほら、いくで」

私を振り返るその姿が、なんだか無性に悲しくて、愛しくて。

「はいはい」

私も小走りで、家族のもとへと駆け寄ったのだった。


わりと最近のお話。

「俺さ、今まで言ったことなかったんやけど」

「え、うん」

平静を装っているけれど、内心はどんなことを言われるのかとバクバクだった。

「俺、女子だけじゃなくて男も恋愛対象に入るかもしれん」

「あ、そうなん」

明日の天気を知った時と同じくらい、平坦な返事に弟は肩透かしをくらったかのような顔をしていた。

「そうなんって…」

「まあ実際、私の友達にもそういうこはおるからな。ちなそのこからは中一のときにカミングアウトされた」

一回彼女がいたことがある弟の恋愛対象が、男性も入るとは思ってもいなかった。

だから内心すごく驚いていたけれど、まわりとは少し違うところがあったとしても、それを"異常なこと”だと”私が“決めつけたくなかった。

だって、優しくて料理もできて力持ちな弟が好きになる人は、きっと素敵な人に違いない。

「ま、性別や国がちがっとっても、あんたと結婚する人はたぶんいい人やで」

「そっちはぜったいダメンズにひっかかるな」

「うるさいな」

打ち明けたときよりも顔がゆるんでいる弟の様子に、内心ホッとする。

おーい、未来の私の義妹か義弟よ。

私の弟を幸せにしてくれなきゃ、許さないんだからね。


「俺さ」

つい最近、私の部屋にきた弟が、こんなことを言っていた。

「今は不登校やけど、今思えば、今のうちにこういう経験できてよかったわ。大切なこと学べたもん」

そういったとき、弟は笑ったのだ。

体と心を壊すほどの傷を抱えても、それをそんなふうに言えるの……?

「…そうやな。今度は同じ悩みを持つ人によりそえる。あんたの強みになった」

「俺もう最強やん」

なんて、まぶしいんだろう。

「そうやな」

私もニカッと笑っていった。

「あんたは私の最強の弟や」




こんにちは!

やっとテストが終わったので、今までの話を何個かつめこんでみました。

前回のせたブログてきなエッセイてきなのが、なかなか見てくださった人が多くて驚きました。

私と弟のストーリーになにか感じるところがあれば幸いです。

また私の小説でもお会いしましょう!

読んでくださりありがとうございました!!

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