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英雄リライブ  作者: リウ
3/14

02 元勇者の戦い



「ゴブリンの次はミノタウロスか、まったく意味が分からない。お前らどこから来…」




質問を言い切る前にミノタウロスは突進してきた。

その突進に合わせて右斜め前に飛び出す。そのまま走りながら最初の一撃で飛び散った石片を拾う。


「ブモオォォォオオオ!!」


再度ミノタウロスが斧を振りかぶりながら突進を仕掛けてくる。


「ッチィ!!」


全力で横によける。斧にあたった扉はぐしゃぐしゃになってひしゃげた。これでもう逃げられない。


…まぁ逃げる気もないが。


息を荒げながらこちらをゆっくり振り返る。自分より弱いと確信している相手に二度も渾身の一撃をよけられたのが気に食わないのだろう。深く突き刺さった斧を扉から引きぬきながらこちらに狙いを定める。




さぁ、ここからが本番だ。




二度突進をよけた。おそらくもう突進はしてこない。斧と打撃が主体になってくるだろう。だが、奴を倒すにはもう一度突進をしてもらわないといけない。


倒すための…こいつを殺すための算段を頭の中で整える。



先ほどと違って一歩一歩踏みしめて近づいてくる。しかし、その足取りには明確な怒りが込められていた。俺は少しずつ後退しながらミノタウロスをにらみつける。

そしてミノタウロスの射程内に入った。斧を振りかぶる。横なぎだ。それではだめだ。バックステップでかわす。かわし切れるよう十分な距離をとったはずだった。しかし、ミノタウロスの強い踏み込みに耐えられなかった床が少し崩れる。それによってミノタウロスの体制が前に崩れた。それに合わせて斧の射程が伸びる。



「カハッ!!ッぐッゾぉ!!」



腹にかすった。しくじった。だが致命傷じゃない。まだ動ける。吐血もしていないんだから内臓まで入っていない。

体制を立て直したミノタウロスは想定外ではあったが攻撃がやっと当たったことがうれしかったのかにやりと笑った。



「ラッキーパンチが当たってそんなにうれしいかよこの家畜野郎」



こちらの言葉が伝わったのか斧を強く握りしめてこちらに向かってくる。

そして、また射程圏内。俺はおなかを抱え、ミノタウロスをにらみつける。

そして、ミノタウロスが斧を振りかぶる。


次は上段、振り下ろし!!


俺は抑えていた手を前方へ向ける。その手からは血に交じって尖った石片が飛び散る。腕を振り上げ、顔を腕より前に出していたミノタウロスはそれを顔面にもろに食らった。



「ブモオォォォオオオ!!」




怒りの声を上げ、顔を下げてうずくまる。

そこに思いっきり飛び蹴りをかます。



「ブモオォォォオオオオオオオオ!!!!!」



「っくうう、けがにしみる!!」



ミノタウロスは顔を振り回して叫んでいる。目に石が入った状態でけりを受けたのだ。当分目は見えないだろう。

さぁ、最後の一押しだ。


「おい家畜野郎!!こっちだぞ!」


こちらのあおりが効いているかはともかく、目の見えないミノタウロスはこちらに顔を向け、息を荒げている。


「ブモオォォォオオオ!!!」


怒りのせいで冷静な判断ができなくなったミノタウロスは、俺の声を頼りに、攻撃を仕掛けてきた。


突進だ


「こっちだぞ!!こっちだ!!」


ぎりぎりまで引き付ける。ミノタウロスはそのスピードを緩めない。間隔を見極め、引き付けて引き付けて…そして、俺はよけた。

その先には高さの低い柵。ミノタウロスは自分が宙に向かって突進していることに気づかないし、もはや止まれない。


ガコオオォォン…


そうして柵を吹き飛ばしながら宙を舞ったミノタウロスはその自重ゆえにけたたましい音を立てながら地面にたたきつけられた。


下を見下ろす。そこにはトマトのように血を飛び散らせながらピクリともしないミノタウロスがいた。しかしそれもつかの間、死体は光の粒となって消えていった。魔素からできた魔物は死ねばまた魔素に還元されるのだ。


「やったか。」


まったく状況が分からないが、とりあえず脅威は去った。腹の傷がうずくが、血もすでに止まっている。やはり致命傷にはならないだろうが、早めに治療をしたい。

それにしても何がどうなっているんだ?どうして魔物がこの世界に、それもこんなところに現れたんだ?


ふとぐしゃぐしゃになった扉の近くを見てみると、ゆがんでいるような奇妙な空間が宙に浮いていた。

そういえばミノタウロスはどこから現れたんだ?扉は閉まっていた。開閉したなら音で気づくはず。

ゆっくり近づき、その空間のゆがみに手を触れようとしたその時だった。





『モンスターの討伐を確認、対象者にステータスを付与します。』

「うおっ」





頭の中に声が響き渡った。近くを見渡すが誰もいない。

なんだ?ステータスが何だって?


そう頭の中で考えていると目の前に何か半透明の板のようなものが現れた。



______________________

コウラク マヒロ  種族:ヒューマン

職業:#N/A


体力 24

魔力 20

知力 8 

気力 60


合計 112


スキル

ステータス New! 


称号

■■■ ■■■■

Cランクダンジョン踏破者 New! ヴァンガード New!


状態:出血 衰弱


総合評価 C-


______________________



なんだこれ。こんなものあっちじゃなかったぞ?なんというかこれは…ゲームとかのステータス画面のように見える。まぁ実際ステータスとかいうスキルがあるしな。そのせいだろうが、なんだ?この数値は。何を基準にしているんだ?だいたい知力8ってなんだ?この野郎、馬鹿にしてんのか?

それにC-って何だ?俺は常にA+だこの野郎勝手に評価しやがって。


それになんか文字化け?してたり黒塗りされている所もあったりなんかすでに突っ込みどころ満載だぞ?




『Cランクダンジョン比良坂高校本校舎の踏破を確認しました。』

『比良坂高校本校舎のモンスターのリスポーンが停止されました。』


『初のダンジョンの踏破を確認。無差別的なモンスターの出現が抑制されます。』

『以降はダンジョンからのモンスターの排出が主流になります。』


『ダンジョン踏破者には報酬が与えられます。』



一気に言われすぎて何が何だかわからない。一つ一つ意味を吟味しようとしたところ、目の前の空間のひずみから何かが出てきた。


これは…なぜこんなところに?


出てきたのは一振りの直剣だった。その刃は青色に光っていて、根元には小ぶりな宝石がついている。

鍔や柄は翡翠色になっており、柄頭には女神の装飾が施されている。


これは前世俺が協会から支給された武器、聖剣グラム…に見えるが聖剣特有の聖なる力をまったく感じない。だが見てくれだけは完全に一致している。なぜこれがここに?

そう疑問に思っていると目の前にステータス画面と同じように説明書のようなものが現れた。


______________________

揺蕩う写し鏡ムアーラ  SR

分類:宝具


特性:所有者の求めるものに変化する。その性能は所有者の力に左右される


状態:変化


======================

聖剣グラム(偽)    CR

分類:剣


特性:装飾過多な一般的な剣


状態:偽装


______________________



なるほど。確かに俺は今、先ほどの戦いでこの剣があればまだ楽になったろうなと考えていた。それがこのムアーラに読み取られたのだろう。名前の横にあるのはランクか?SRってことはスーパーレアってことか。天井がどれくらいあるのかわからないがまぁまぁレアってことだろ?ラッキー


特性の所有者の求めるものに変化するっていうのはつまり俺が望めばこのグラムの形状じゃなくてもいろいろなものになれるってことだろう。頭で槍やハンマーの形を想像してみると、グラムほど精巧な作りのものはできなかったができるものはできた。なんか聖属性もっててめちゃめちゃ切れ味がいいだけのグラムよりよっぽどいい気がしてきた。


先ほど頭に流れてきた報酬を与えるとかなんとかって言ってたやつはこれのことだろう。いい拾いものをした。



さて、色々一段落した。ゆっくりと周りを見渡す。町の方は相変わらずだ。所々で煙が出ている。グラウンドの方はもう一人もいない。さっきまで部活動をしている生徒でにぎわっていたのがウソのようだ。今残っているのは逃げ遅れたのだろう人々の死体だけだ。


かわいそうに…


その時ふと思い出した。じいちゃんばあちゃんが危険だ。町の方にもモンスターは出ている。

祖父母は凶暴な孫のせいで近所付き合いが悪くて近くに頼れる人がいない。俺が助けに行かないといけない。


慌てて立ち上がって扉に向かう。


「ハンマーになれ」


ひしゃげていた扉をムアーラを使って無理やり叩き壊す。

どうやらムアーラは何も念じていないときは赤い手鏡のようになるらしい。


ムアーラをズボンのポケットに入れて階段を降りようとしたとき、めまいがした。


「っく、なん…だ…じいちゃん、ばあちゃん…いま、おれ…が、ぁぁ」





俺は気絶した。






















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