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英雄リライブ  作者: リウ
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00 プロローグ

初投稿です。



かくして勇者は邪神を打倒したのであった。世界を滅ぼさんとする邪神は、勇者の捨て身の攻撃で、遂にその剣に倒れたのだ。世界は守られた。人々は、愛する者を失う恐怖から解き放たれたのだ。偉大なる勇者。その名は後世に語り継がれるだろう。


その勇者の功績は多大なものだった。奴隷の身分から多くの戦争に出陣しては敵の武将の首を獲り、高位の魔族を打倒し、七柱の魔王を倒した。そしてついに、その刃はすべての魔の根源たる邪ノ神すらにも届いたのだ。それはもはや人類の誇りとして賞賛されるべきすばらしき功績であった。


勝った。完膚なきまでの大勝利。人の身で神を倒したのだ。大手柄である。


しかし、勇者の命もまた、尽きようとしていた。元より、捨て身の攻撃をもって差し違える思いで放った一撃である。その命をもって、命を刈り取ったのである。それは当然のことであった。悲しいかな、人類のみならず、世界を救った真の勇者は次元の狭間で誰に看取られるわけでもなく一人死にゆくのだ。


しかし、当の勇者は特に悲しいとは思はなかった。むしろうれしいと思った。誰も悲しませずに、たくさんの人の幸せを確信して逝くことができるからである。


その様を見ていた女神は心を痛め、勇者にある提案をした。


あなたは物心がつく頃から血と脂にまみれながら、人々の幸せを祈って戦っていた。そんな心優しきあなたに、もう一度だけ生を与えましょう。次にあなたが目を覚ますと、そこには暖かな寝床と豊かな食事、そして何よりあなたが戦う必要のないくらい平和な世界が待っているでしょう、と。


美しい声と暖かな光に包まれ、勇者はその生を終えた。


そして…


「俺が生まれたってわけ」


「何言ってんのお前」


旧校舎の屋上の昼下がり、二人の男子高校生がおしゃべりに興じていた。


「は?だから、俺の前世の話。俺は偉大な勇者で、その功績がたたえられてこの世界に転生したってわけ。わかる?つまり、俺ってば前世で徳積みすぎて今世ではもはや生きてるだけで偉いの。あんだーすたん?」


「お前が勇者なら俺は魔王だな」


もう一人の青年は一言そういうと、寝そべって空を見上げた。


「ほんとのことなんだぞ?まったく…」


そういって俺も寝そべって青い空を見上げた。


確かに自分でも他人が言っていたら信じることは難しいだろうが、事実なのだ。俺はこの地球に転生し、行楽真優という名前を付けられた。生まれた直後から記憶があったおかげで小さい頃は歩くのも言葉を話すのも誰よりも早かった。魔法文明と科学文明の差に戸惑ったこともあったが、まあすぐに慣れた。なれたらめちゃめちゃ快適だった。まぁとにかく、ちっさい頃は神童だギフテッドだなんだともてはやされたが、中学に上がるころには地頭の悪さが露見し、そういったこともなくなった。なんだよ連立方程式って。


頭いいキャラではなくなった俺だが、まだ一つ得意なことがあった。


格闘技だ。


なんてったってあっちでは5歳で剣をもって14歳で戦場に出て殺し合いをしていたんだ。柔道、剣道、ボクシング、ムエタイ、プロレス。ほとんどの格闘技で非凡な才能を見せつけた俺は、中学入学当初、多くの部活動や団体から勧誘があった。




そう。``あった``のだが…




「だいたい、勇者は人を半殺しにはしないだろ?」


「それは何というか、力が入りすぎたというかなんというかむにゃむにゃむにゃ」


そう。俺はあらゆる格闘技で対戦相手にちょっと強めのけがをさせてきた。いや、故意じゃない。誓って故意じゃないのだ。


最初は柔道だった。体力テストで優秀な成績を出したうえ、中学一年にして身長が170あった俺は、その体力テストの顧問が柔道のコーチをやっていたこともあり、真っ先に勧誘が来た。


なんとなーくルールを知っていたので、受け身の練習を少しした後、先生と摸擬戦をしようということになった。先生は昔国体にも出場した経験があるらしく、うまい具合に手加減もできるだろうということだった。


そんなこんなで始まった試合。先生が全力でかかっこてこいといったので全力でかかっていった結果、きれいに決まった背負い投げのせいで先生は背骨を脱臼及び骨折。命にかかわるけが一歩手前くらいまでいった。そして柔道部出禁になった。


出禁になったものの、久々の戦いの高揚感を忘れられなかった俺はそういう感じの部活に入っては出禁、入っては出禁を繰り返していた。


そして部活に入れなくなった。


その悪名が高校にまで広まり、元勇者こと真優君は帰宅部となっていたのだ!!


「なんていうか、最初はうまくやってたのになー」


最初は神童と呼ばれていたのに今では道場破りといわれる始末。


とほほ…


「元勇者様は帰宅部で昼には人気のない屋上で独りぼっちですか。」


「一人じゃないだろ、お前がいるんだから。」


「何言ってんだ俺も独りぼっち、お前も独りぼっちなんだよ」


「何言ってんだよ…」




こいつは降真王雅。剣道部のエースで、イケメンで、頭がよくて、現生徒会会長だ。


特に剣道はあらゆる大会で結果を残し、新聞にも載ったくらいだ。それがなぜ俺と一緒にいるのかというと、俺を剣道部に誘いたいらしい。俺は結構乗り気だったのだが、他の部の生徒や顧問までもが猛反対。それからなぜかこいつに付きまとわれている。


「どこで間違ったんだろうな…」


ふと考える。あっちでは物心ついた時には何かを奪われるのが人生だった。それが嫌で、剣を握った。そしてそれからはずーっと、戦ってばっかりだった。


ここに来てからはその必要はなくなった。温かいベットに温かいご飯。すべてが満ち足りている。


それなのにこの体は戦いを、戦場の熱を求めている。


俺は…戦いたいから戦っていたのか?


「黄昏ているのはいいが、そろそろ授業だ。俺は先に行くぞ。」


「黄昏てねーし、てかおいていくなよ!!」


答えはわからない。ただ、今を生きるしかない。


これからもこの葛藤は消えないだろう。だが、今まで通り、この日常を、生き続けるのだ。











そう、思っていた。

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