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9話 新魔法

「できた。できたぞ!!」

俺の杖の先には、透き通った氷が浮かんでいた。

訓練場の隅っこで長い間、魔法を作り出そうと奮闘していた。額の汗を拭い、顔に笑みを浮かべる。



水は冷やすと氷になる。つまり、氷を作る魔法は水に近い魔法だろう。そこに、現実で見る氷をイメージするだけでよかった。この世界が魔法の発動に関して、かなり楽なことが幸いした。


しかし、悠斗は知らない。氷ができたのは、ステータスのうちの一つ、幸運のおかげであることに。





「これをアイスと名付けよう」

さっき魔法書を漁ったが、氷を作り出す魔法は出てこなかった。つまり、俺だけの魔法だ。



もう一方の手からファイアーボールを作り、杖の先の氷を炙ってみる。

「ふむ。溶けはしてるけど、見た目は変わらないな。魔力が氷へ供給してるのか」

俺は魔力が少しずつ減っているのを確認した。これで、氷も魔力から作られることは証明されたのだ。




「よし、これで戦闘の幅も広がるな」

魔法に関しては、他のハンターが魔法を放っているところを見るだけで自然と習得していけるだろう。イメージを具現化するのは自分である必要はない。

しかも、俺の魔力量的にもっと強力な魔力を自分で見つけ出していかないといけない。戦闘において攻撃力の高さはかなり大切なはずだ。






実践もしたいが、ここだと人の目があるからな。

·····ということで、上級ダンジョンにやってきた。調べによると、ここにはストーンゴーレムという体力や防御力が高い魔物がいる。ドロップするのは石のみで需要はなく、挑戦しに来る人はもちろんいない。つまり、魔法の練習にうってつけの場所だ。


中に入って少し歩くと、早速ストーンゴーレムが現れた。見るからにガタイが良い。


「とりあえず、ウォーターボールからだ」

杖でウォーターボールを作り、ストーンゴーレムめがけて飛ばす。

見事命中し、ストーンゴーレムは少し後ずさりした。でも、あまり効いてなさそうだ。どうやら、魔法にステータスの攻撃力は多分乗っていない。初心者でも強力な魔法が放てるのは、そういうこともあるのだろう。


俺はファイアーボール、ストーンボール、ウィンドをそれぞれ使い、ようやく倒した。やはり、初心者が使う魔法はこんな威力しか出ない。



もう少し進むと、二体のストーンゴーレムに出会した。

「次はアイスだ。練習通りに」

俺は氷を放つが、ストーンゴーレムは微動だにしない。もしかすると、ウォーターボールよりも威力が低いかもしれない。

「どうする·····」

氷で威力を高くするにはどうすれば·····。

人は追い込まれた時、諦める選択をしなければ、困難を乗り越える方法を見つけ出すものだ。


「そうだ。ツララだ」

真冬、屋根にぶら下がるツララを思い浮かべる。ツララの先端は鋭い。威力はかなり高いだろう。



俺は動きの遅いストーンゴーレムを狭い道に誘導し、距離を取りつつ、ツララを頑張って作り出す。

「できた·····。あとはこれを飛ばすだけ」

しかし、ツララはかなり重かった。太くしすぎたか。杖を振れるだけの余裕もない。

「うおおお!これ、どうすればいい!」

使えない魔法など意味がない。設置して罠になら使えそうだが、それも溶けたら終わりだ。


(あれだ!ウィンド!)

俺は左手でウィンドを作り出し、ツララに乗っける。

「行けええ!!」

俺はウィンドに使う魔力を増やし、ツララを飛ばす。飛んだどころか吹っ飛んだ。

ツララは、縦に並んだストーンゴーレムを共に、完全に貫き、壁に刺さった。ストーンゴーレムは倒れた。


「やっば。これ、今のところ火力が一番高いぞ」

俺は土魔法でも同じことができるかもしれないということに気が付いた。氷をツララの形にしたように、ストーンボールを先端の細い石にすれば出来上がりだ。

恐らく、威力もそれなりに高いだろう。


低魔力高火力のこの魔法は、後に広く知られることになる。









「さあ、実験も終わったことだし、晴輝に合流するか」

森の場所は予め教えてもらっていた。俺はダンジョンを出て、その森の方へ向かう。







【ミッション】

《森で暴れている魔物を倒そう》

森で魔物が暴れています。魔物を倒し、森の平穏を取り戻しましょう。

☆成功報酬: ???

★失敗時: 森の全焼




近くに行くことで、こうしてミッションが出される。例外的に、この前のブラックドラゴンのような大規模なミッションは全体的に広められるらしい。


「成功報酬が何か分からないじゃないか。何か特別な報酬だったりすんのか?」

そもそも、何の魔物が暴れているのかも分からない。一体、森で何が起こっているのか·····。



「そうだ」

晴輝にそのまま合流しても、足手まといだと思われるだけ。ならば、ナンバー1として近付き、あっさりボスを倒してやろうじゃないか。








"油断大敵"。

それが、この時の俺には必要な言葉だった。順調に進んでいるおかげで、自分は何でもできると、己の強さに自惚れていたことを後になって思い知らされるのだ。

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