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6話 インストールナンバー2

ブラックドラゴンによって壊れた街は、ハンターや住民たちで修復していかなければならない。木を伐採したり、鉱山で金属類を集めたりする人や、家を建てたり、物資の運搬をする人もいる。人々は支え合って生きていることを、ゲームを通して改めて実感させられる。ハンターワールドには気付かされることが多いな、と思う。

ちなみに、街の修復はミッションの一つなのだ。



【ミッション】

《街を修復しよう》

成功報酬: 住民との親密度up

失敗報酬: 街の崩壊





「それで、ナンバー1さんは今までハンターワールドができる状態になかったんですね」

俺とナンバー2も街の修復をしながら、これまでのことについて話していた。色々話したおかげで少し打ち解けてきたような気がする。




俺はこのゲームについて色々教えてもらった。


使用可能な魔法は全部で五属性。火、水、風、土、光だ。決まった魔法が使えるのではなく、頭に思い描くだけで好きなように魔法が放てるらしい。つまり、最初から巨大な魔法が使えたりする。しかし、魔力が尽きると死んでしまうので注意が必要なんだと。このゲームの自由度の高さは流石のものだ。


このハンターワールドは、世界が広すぎるが故に、まだ探索が行き届いていないところも多く残っているらしい。

ハンターが集められたギルドが存在し、いくつか種類がある。討伐専門のギルドだけでなく、ミッションを専門にしたギルドや、未知の世界を探索するギルドなど、色々だ。

そして、その内の討伐ギルドのほとんどが、これまでのミッションで消え去った。死亡すると、インストール特典以外の全てが初期化される。それ故に、やる気をなくしてゲームから離れていったハンター達も少なくない。




「俺もギルド作れるのか?」

「ええ、もちろん作れますが、ナンバー1さんが作ったらメンバーがめちゃくちゃなことになるんじゃ·····」

「うーん。ギルドに制限みたいなの設けられるのか?」

「制限ってわけじゃないですけど、その人が加入できるかはギルドマスターが決められます」

「じゃあそうしよう。このゲームで最強のギルドを作ってみせる!」

「ギルド作って何をするつもりなんですか?」

「何ってそりゃ、このゲームのエンディングを見るんだよ」

終わりのない人生はない。このゲームの最後がどんなものか知りたいだろう。

「大きく出ましたね。そんなこと言う人なんて滅多にいないです」

「最強のギルドだからな。それくらい目指さないと、だろ?」

「そうですね」

俺たちは空を見上げる。


俺はとあることに気が付く。

「ん?そういえば·····」

「あっ。そろそろ時間なので失礼しますね!夜ご飯が·····」

「あ、ああ。今日はありがとな」

「こちらこそ!話せて嬉しかったです!」

彼女はそう言ってログアウトした。

俺は、さっき気が付いたことが何だっかすぐに忘れてしまった。



「あまりにリアルだったから忘れていたけど、ここはゲームの中だ。俺も今日のところは終わりにするか」

VRの怖いところはゲームを離脱しないと実生活に影響が出始めることだ。身体は眠っているような状態だから飲食やトイレなどもできない。長時間ゲームをしていると警告が出る上、さらに時間が経つと強制的にログアウトさせられる。これはどのVRゲームでも法律として決まっているんだとか。


「そういえばあれだけ確認しておこう。ステータスオープン」




【インストールナンバー1】

Lv.52

体力: 10003

攻撃力: 10007

魔力: 10005

速度: 10005

幸運: 10000

魔法属性: なし

スキル: なし

配分可能ポイント: 410ポイント



「レベル52·····?さっきのブラックドラゴンでレベルいくつ上がったんだ」

元々ないに等しかった俺のレベルは、ブラックドラゴンの討伐報酬300000で50近くも上がった。

「ナンバー2の話によると、レベルは70くらいが平均って言ってたっけ」





――数分前。

「良いですか?ギルドを作るにあたってレベルは大切な判断基準です」

ナンバー2がギルドの説明をしてくれている。

「今のプレイヤーの平均レベルは70前後、ちなみに確認されている最高のレベルは689。·····私です」

「レベル689!?何それ、やばくね?」

「インストール特典の獲得経験値量90倍の影響でしょうね」

「あ、俺は確か100倍だったな」

「そうなんです。このゲームはインストールした人順に特典に差が出てきてしまうんです。だから、ギルドに呼ぶべきなのは古参勢です。ナンバー100より前が望ましいですが、ほとんど辞めてしまったんじゃないでしょうか·····」

「ナンバー100·····」

「あと、それと、ラッキーナンバーにも多少の優劣があるっぽいですよ」

「ラッキーナンバー?」

「はい。ラッキー7や、ゾロ目、キリのいい数、1234のような連続する数。1357や2468のような連続する偶数奇数でも同じです。それと、12321のような回分数字もですね!」








「配分可能ポイントってのはこの基礎値を上げるやつだよな」

体力や攻撃力を上げても、これ以上強くなってどうするんだ感がある。

「上げるなら速度か、魔力か幸運だな」

速度は、移動が早くなることで未知の場所の探索や敵を錯乱させるのに使える。魔力は魔法を自由自在に使いやすくなる。だが、問題は魔法をまだ一つも覚えていないことだ。そして幸運。これは上げたことの効果が分かりづらいのが難点だな。

「どっちもどっちだあ」

そもそも10000に対して配分可能ポイントの410は少なすぎる。

「うーん。魔力に全部費やそう」

魔力の使い方は攻撃だけではない。身を守ったり、身近な生活の助けになったりするはずだ。





『魔力のステータスが上がりました。』

魔力: 10005▶︎10415





「よし、これで良いだろう。次は魔法を覚えるのが目標だな」


俺はログアウトボタンを押す。視界が段々狭くなって真っ暗になった。五感が戻され、意識が現実世界に帰ってきた。

VRゴーグルを外して起き上がり、大きく伸びをする。

外はもう真っ暗になっていて、時間の流れが早いことを思い知る。

だが、それ以上にハンターワールドが楽しかった。

「やべぇ。ハンターワールド、クオリティ高すぎ·····」

興奮が抑えられそうにない。昔、自分がハマっていたゲームがより高いクオリティでまた遊べるのだ。興奮と幸せで俺の頭が満たされる。


大学の友達である晴輝がハマるのもよく分かった。地球並に広い世界で、自由に遊べるだなんて現実世界よりも快適なことには間違いなかった。

周りと比べられて優劣を付けてくる社会よりも、努力が結果となりそれが目に見えて表れるゲームの方が断然良い。

ゲームの世界に入ることは、それだけ楽しくもあり、怖くもある。現実世界に戻ることを嫌がる人が少なからずいるに違いなかった。

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