表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/26

4話 初ミッション

「うわー。びっくりした。何だったんだ今の」

 辺りを見渡す。ここはよく見知った場所であることに気が付いた。

「ここって、最初の村だったよな·····」

 少し離れた場所に確かに村がある。

 そして、山の形、木が生えている場所など、所々に微かではあるが見覚えがあった。

「すげー!あの頃よりもさらにグラフィックが上がってる!!」

 それどころか、この世界の存在を五感を通じて訴えかけてくるのだ。本当に自分があのスマホの画面で見た世界に入ったような感じだ。3Dゲーと言えどもスマホでは二次元的にしか見れなかった世界が、三次元空間として今ここにある。

「そういえば俺、インストールした時に特典みたいなのもらったよな?」


 目の前に画面を表示させる。空中ディスプレイというらしい。

「あった、これだ」

 履歴を確認すると、"極神級特典"と書かれていた。

「懐かしいなあ。この極神級装備を着て、めちゃくちゃ上がったステータスで色々遊び回ったな」

 これを着るだけで全ステータスがそれぞれ一万も上がっていたのだ。当時はよく分かっていなかったが、今思えばかなりすごい報酬だったのだろう。


「あとはこのガチャチケット無限パス」

 タップすると手に持つことができた。まさか実物を手にすることになるとは思いもしていなかった。

「あわわ。これ落としたら終わりだぞ」

 俺しか持っていない超貴重なアイテムだ。俺は宝くじで一等を当てた人みたいに周りに人がいないか確認し、サッとアイテムボックスに入れておく。アイテムボックスとは、アイテムをいくつでもしまっておける機能だ。




「さあ、何年ぶりかのガチャでも引くか」


 ガチャをタップする。昔はこれでガチャを引きまくって全てのアイテムを揃えようとした。アイテムボックスにもその跡がたっぷりと残されてあった。初心者が使うような剣や魔法の杖などなど。



「今やってるガチャは·····」



【神級装備&武器ピックアップガチャ】



「神級アイテム?俺が持ってるやつは極神級だから引く必要ないじゃん。六年経ってるのにまだインフレは俺に追い付いてないのか」


 ゲームとしてインフレが控えめにあるのは、運営としてかなり上手く行っている証拠だろうが、このゲームの特性上逆に心配になってくる。

 とはいえ、俺がやっていた時は「初心級、初級、中級、上級、超上級」だけだった。そこに「激級、超激級、絶級、超絶級、神級」が追加されたようだ。

 つまり、一応はインフレしているらしい。




「あ、そういえばなんだっけ? みんなと会話することができる、チャット機能もあるんだっけ?」

 それっぽいボタンを適当に押してみる。視界の横端に文字が表示された。

「これっぽいな」

 手元にはキーボードのようなものが浮かんでいる。

 チャットに書かれているのを見てみると、何かが話題になっているようだった。


「ブラックドラゴン·····?」


俺の目の前に、急にこんな画面が表示された。




【ミッション】

《街中で暴れているブラックドラゴンを倒そう》

ブラックドラゴンが空から街に飛び降りてきました。ブラックドラゴンを倒して街を守りましょう。

☆成功報酬:ブラックドラゴンの心臓

★失敗時:街の崩壊






「へえ。面白そうじゃん!」

 復帰後最初のミッションだ。

 街の場所を調べ、走るために軽くストレッチする。

「いざ、ブラックドラゴン討伐」

 足に力を入れて走り出す。10000ポイント以上あることで、とんでもないスピードが出た。周囲の木を全てなぎ倒し、砂埃を巻き起こして走っていく。今の俺はメロスよりも速いに違いない。



 あっという間に街の入口に着いたが、すでにそこは火の海になっていた。家々は完全に壊され、ブラックドラゴンのものらしき、ドスンドスンという鈍い足音が聞こえる。


 俺は、街を囲う砦の側面を忍者のように走り、上に登る。ここからなら、街全体を見渡せるだろう。

 そして俺は一つの黒くて大きな影を捉える。

「あれがブラックドラゴン·····」

 身体は人間の何十倍もあり、名前の通り真っ黒だ。口から火を噴き散らし、次々と家を壊して暴れ回っている。


 泣き叫ぶ悲劇的な声が遠くから聞こえた。そっちの方に目をやると、大勢の人がいた。

「他のハンターか」

 皆が強敵を前に戦意喪失している。それほどまでにあいつは強いらしい。俺がやっていた時は、あんなやつ見たこともなかった。せいぜい、道端にいるゴブリンやオークなどを適当に倒し、時にはダンジョンに潜ってオークの上位種であるオークキングなどを倒していたくらいだ。当時は戦いをあまりするような感じではなく、村の人達のお願いを片っ端から聞いていき、ある日は清掃、ある日は薬草を摘み、ある日は村に現れた悪者を退治していた。ダンジョン攻略もそのお願いの一つで、頼まれたからやっていた程度だ。


 

 この街はハンター達が強くなるために必要で大切な場所らしい。素材を渡すと武器を製造してくれる鍛冶師や、稀に貴重なアイテムを販売することのある商人、上手く取り繕えば仲良くなれるお金持ちの貴族など色々な職業や役割の人がいるという。俺がやっていた時にはこの街はなかったから、後で追加されたものなのだろう。


 俺はチャット機能を開いた。


「ふーん?もしこの悲惨な状況に、ナンバー1の俺が現れたらどうなるだろうか」

 面白そうなことに胸がドクンドクンと高鳴る。その勇ましく頼もしい姿は、まるで、ピンチの時に現れるヒーローのようではないか。

 大した取り柄のないただの平凡な大学生が、周りから期待の眼差しを向けられ、尊敬されるのだ。



1: 面白そうなことになってんな?



 俺はチャットにそう呟く。他のハンター達は気が付いたようで、俺に驚いている。

「これだよ!これ!俺が昔にこのゲームを夢中になってやってた理由!」

 そう、周りと圧倒的な差をつけることだ。



「さあ、あいつらのところへ行くか」

 ここでさらに盛り上げよう。

 ナンバー1が本当に戻ってきたと、直接知らしめるのだ。


 俺は砦から身を投げ出して、空を飛んだ。

 俺は今、全力の笑顔を顔に浮かべていることだろう。

 こんなに楽しいと思ったことは他にない。



 俺は見事にハンターの前に背を向けて降り立った。ここまでは、計画通りだ。


「おい、まさかあいつが·····」

「これマジで現実だよな?」

「あの人がナンバー1·····」

「見たことない装備してるぞ」

「俺たちの最後の希望だ」


 ザワザワとし始めた。

 そうだ。俺を神格化するが良い。

 この快感が俺をさらに興奮させて、ゲームを楽しくさせるんだ。






1: お前ら!あいつに勝つ準備はできてるよな!?



 とチャットにまた呟く。




9541: もちろん!

99574: いつでもどうぞ

7413: はい!

2: ん、勝率はもちろん100%

94136: 行こうぜ!!

43179: え?ナンバー2もいるの?

3214: 2?!?!???

314425: 伝説が今ここに始まろうとしている·····





「おっ、ナンバー2もいるのか。これは面白くなること間違いなしだな」

 ボソッと独り言をする。ナンバー2。このゲームを広めることに最も貢献した人物。

 一体どんな人なのだろう。


 俺はみんなの反応を確認したところで、空中に表示されたチャットをダブルタップして閉じる。





 ブラックドラゴンを前に、ニヤリと笑って、剣を空に掲げ、皆に聞こえるように大声で叫ぶ。

「伝説の始まりだ!!」


「「「うおおおおおおおおお!!!!!!」」」

 他のハンターたちとも意気投合した。


 さあ。これから始まるぞ。

 俺のハンターワールドライフが!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ