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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
ダンジョン部の姫

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第96話 お出かけ中

 オーガの間の扉。

 これを開けたら、どうなるのか?


 そんな疑問を抱いたが、意味のない問いだった。


 扉のぎりぎりまで顔を近づけると、そこに隙間が見えた。


()いていますけれど? これ……」


 扉は両開きのタイプだ。

 中央に縦に伸びる黒い筋。開いているのは、ほんのわずかだけ。

 そこから覗くのは、向こう側に広がっているであろう暗闇だ。


 すでに扉は開いており、ここにいる全員の視線がそこに集まった。


「と、扉に……す、隙間が!」

()いている!?」

「どういうこと!?」


 動揺を隠せない部員たち。彼らを安心させようと、私は扉に手をかけた。


「とりあえず閉めておきましょうか」


 私が掴んだ扉のハンドルは縦長で、コの字の形状をしている。


「ちょ、ちょっと……」


 閉めようとしたところ、部長が私の手を止めた。


「まず、状況を整理しよう。扉を開けて中に入ったら、オーガを倒すまでは出てこられないはずだ」


「倒すか、全滅するか、である」


 石田さんが答えた。


「そうだね。そういうことになるね」


「扉を開けてそのまま放置したら、どうなるのであろうか?」


「それは……どうなるんだ?」


 ごくり、と部長は唾を飲んだ。

 私は画面が見えるように、部員たちの方へとデバイスを向けた。


「そういう時は視聴者に聞いてみましょうか」


 ここまでの様子はずっとダンジョン配信で流している。


「どなたかご存じの方はいらっしゃいませんか? オーガの間の扉が開いていたのですが?」


 私が問いかけると、すぐにコメントが返ってきた。


》扉は自動的にロックされる。そのため、外部の者には危険が及ばない。ただし、オーガが扉の外に出た場合、扉はロックされない。つまり、今はオーガが外にいると思う。ロックされるのはオーガが中にいる場合だけだから。


「なるほど、ありがとうございます」


 私はデバイスのカメラに向かってぺこりとお辞儀をした。


》どういたしまして。


 ここにオーガはいない。私は安心してみんなに声をかけた。


「オーガはお出かけ中ということです。せっかくなので、部屋の中に入ってみましょうか」


 みんなに笑みを向けるが、部員たちの顔は青かった。


「いやいやいや。いやいや……。いやいやいや……」


 部長は半分パニックになった様子で、首を振っている。

 他の部員たちは、背後をやたらと気にしていた。


「ここにいないってことは、オーガがこの階層のどこかにいるってことなんだよ。むしろ、この部屋の中にいてくれたら良かったけれど、どこにいるかわからない状況だ。他のパーティもいるだろうし、誰かが遭遇するかもしれない。そうしたら、大惨事に……。えっと、どうしたらいいんだ?」


 部長はパニックになりながら、頭を抱えている。


 視聴者が冷静にアドバイスをしてくれた。


》可能性は低いだろうが、オーガがこの部屋に戻っていることもある。まずは部屋の中にオーガがいないことを確かめたらどうだろうか?


 そのコメントには私が答える。


「そうですね。部屋の中にオーガがいないことを確認しましょう」


「え、ちょ。え? ちょっと、待って……。え?」


 戸惑う部長をよそに、私は扉のハンドルを手に取り、ゆっくりと手前に引いていく。


 三メートル近い高さのある巨大な扉だ。重い扉が、静かに動き出した。部屋の中は暗闇に包まれている。


「ほ、本当に入るの……?」


 部長の声は震えている。


 一人が入れるくらいに扉が開いたところで、私は手を止めた。


 今から私はある作戦を決行しなければならない。

 扉のハンドルはそのために都合の良い形状をしていた。


 腰にぶら下げているゴブリンソードを確認し、すぐに鞘から抜けるように準備をする。


「暗くてよく見えないですね」


 私は言いながら、ダンジョンデバイスの機能であるライトを使って部屋の中を照らした。懐中電灯がわりに使える機能だ。


 部屋はかなり広い。何本もの柱が天井まで伸びている。

 壁には彫像を思わせる彫刻が彫られており、不気味さを醸し出していた。


 奥の方まで視線を向けてみるが、モンスターの気配はない。やはりオーガはいなかった。


「大丈夫なようですね。みなさん、せっかくここまで来たのですから、オーガの間を見学していきませんか?」


 私はなるべく明るく、安心させる声で部員たちに話しかけた。

 彼らには、なんとしてもこの中に入ってもらいたい。


「え、いや。え……。でも……」


 戸惑う部長だったが、私は後ろからその背中を押す。


「さあ、さあ、せっかくなので。奥まで行っちゃいましょうよ。こんな機会はめったにないですよ。さあ……」


 私と部長がオーガの間に入り、遅れて他の4人も入ってきた。


 部員たちは顔を上げ、広い部屋を見回した。


「ここが……。オーガの間……」

「すごい……」

「壮観でござる……」

「ここで壮絶な戦いが行われるのであるか……」


 部員たちは初めて入ったこの部屋に目を奪われていた。

 その隙に私は気配を消し、音を立てないようにして彼らから離れていく。そのまま静かに部屋の外に出た。


 彼らに気がつかれないよう、そっと扉を閉めていく。

 だが、扉が閉じていくにつれ、オーガの間は暗くなっていく。

 私の行動にいち早く気がついたのは部長だった。


「春菜さん……何を……」


 こちらに向かって歩き出したので、私は一気に扉を閉めた。

 腰からゴブリンソードを引き抜き、コの字の形状をした扉のハンドルに剣を差し込んだ。


 部長は中から扉を開けようと、ハンドルを操作しているようだ。

 だが、ガチャガチャと音がするだけで開けることはできず、ドンドンと扉を叩きだした。


「春菜さん……! 何をしているんですか!? え? 春菜さん……? 春菜さん!!」


 オーガは部屋の外にいる。

 この部屋こそが、今、この階層において最も安全な場所なのだ。

 私は小さな声で呟く。


「ごめん、みんな……。倒したらすぐに戻って来るから……」


 オーガがここにいないと知った時、とっさに思いついた作戦だ。

 彼らをここに閉じ込め、私がオーガと戦う。

 急ごしらえの作戦だったが、うまくいった。


 しかし、思いつきの作戦には穴があるもので……。

 画面に視聴者からのコメントが流れる。


》みんなを安全な場所に待機させて、そのあいだにオーガを倒そうというんだね

》さすがハルナっち

》ハルナっちならきっと倒せるよ

》それにしても、ゴブリンソードで扉を封鎖するなんてよく考えたね

》扉が開かないように、つっかえ棒にしたんだね

》まあ、剣じゃなくて、鞘でも同じだったと思うけれど

》そうだね、結果は同じだね

》たぶんね

》同じ結果になるだろうね

》まあ、無駄なことをしただけだよね

》意味のない行為だね

》それに、手ぶらで倒しに行くつもり?

》武器は?


「あ……」


 私はオーガを倒すための剣がないことに気がつく。


 そして、扉を振り返った。


 内側から、ダーン、ダーンと叩きつけるような音。部員たちが体当たりをしていると思われた。

 やがて、バキンッと大きな音がしてゴブリンソードは折れ、扉が大きく開かれた。


 弾け飛ぶのは剣の刀身と柄。根本から折れ、床に転がった。

 5,000DPで買った剣。無惨な姿になった。


 オーガの間から飛び出してくる5人の部員たち。


「ひどいよ。春菜さん。僕たちを閉じ込めるなんて……」


 口をへの字に曲げながら、部長は不平を漏らした。

 彼らをこの部屋に閉じ込め、私が単身でオーガを討伐する作戦。あっさりと失敗に終わった。


 その時、遠くから激しい轟音が聞こえた。固いものを岩に叩きつけるような音。遅れて、悲鳴が聞こえてきた。


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節約して買った剣が…姫強く生きろよ
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