表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
ダンジョン部の姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/149

第95話 オーガの間へと向かう

 ダンジョンのマップはあらかじめネットで検索してあった。

 最短経路でシューターを通り、私たちは地下15階へとやってきた。時間にしたら20分もかかっていないだろう。


 空気がとても冷たい。洞窟内は静まり返っているが、時々岩が転がるような音が聞こえてくる。上層とは違い、ここは張り詰めたような緊迫感がある。話す声も必然的に小さくなる。


 私たちは囁くようにか細い声で会話をしていた。


 部長が他の部員に話しかけた。


「き、来ちゃったね。地下15階」

 

 緊張感が声に乗り、全員に伝わっていた。


「そ、そうでござる」

「ゆ、油断は禁物である」

「静かに行くのである」


 私はやや後方からデバイスで撮影をしている。

 腕にはめた能力制限の腕輪リミッター・アムレットの能力を確認した。

 

 この階層では私のレベルは20相当に設定されている。

 これはダンジョン部の部員たちとほぼ変わらない能力のはずだ。


 リミッターはいつでも解除できる。万が一危険が迫ったとしても、即座に対応することができる。


 部長が注意すべきことを伝えてくる。


「ここからは二足歩行のモンスターも増えてくる。ゴブリン、コボルド、そして強敵はオークだ」


 ここにいる誰もが知っている情報だったが、念を押すために部長は解説した。


「注意点としては絶対にモンスターを集めないこと。遭遇した順番に、確実に仕留めていく。もしもモンスターを集めてしまったり、あるいは誰かが集めてしまったモンスターに遭遇したら、そこで今回の探索は終了。僕たちは即撤退。いいね?」


 部長の言葉に、全員が無言で頷く。


 部長の話を聞きながら、私はPKのことが気になっていた。

 数学の先生がチョークに刻んでいた文字のことだ。

 あれからPKについて調べたが、プレイヤーキラーのことだった。プレイヤー殺し――他のハンターを殺して金品を奪う行為だ。


 だが、実際にはPKを行う者はほとんどいない。なぜなら、返り討ちにあう危険があるし、犯罪者と認定されたらハンターを続けることはできない。


 可能性としてあるのはMPKと呼ばれる行為だ。モンスターを集め、他のハンターを襲わせることだ。これなら証拠が残りにくい。

 しかし、これすらも自らを危険に晒すことになる。


 その時、部長が人差し指を立てて口元に当てた。声を出すなという意味だ。

 全員が部長に注目する。


「さっそく、ゴブリンのお出ましだ。それじゃあ、打ち合わせ通りに」


 言葉少なに、私たちは行動を開始する。


 まだゴブリンはこちらに気がついていない。

 子供の背丈ほどの子鬼は、細い棍棒を手にしている。薄手の布をまとっているだけで、鎧のような防具は身につけていない。

 部長がゴブリンに向かって大盾を構えた。

 その後ろには葛城さんが弓を手にして待機している。

 葛城さんは男性にしては細い腕で、あまり筋肉はなさそうだ。その腕で弓の弦を引き絞った。


 ヒュウと風切り音を立てて矢が飛ぶ。ゴブリンには命中せず、足元の地面に刺さった。こちらを向いたゴブリンは、葛城さんではなく、部長が視界に入ったようだ。まっすぐ部長へ向かってきた。


 石田さんと九条さんが洞窟の壁に張り付くように立っていた。動きを止め、気配を殺しており、ゴブリンには気づかれていない。


 ゴブリンが、真横を通り過ぎようとしたと同時だった。左右から一斉に斬りかかった。石田さんは首を、九条さんは足を狙った。


 ギ、ギャッとわずかに悲鳴にも似た声だけを残して、ゴブリンは倒れた。あっさりと討伐された。


「て、手汗をかいたでござる……」


 石田さんが長剣に付いた血を払いながら言った。


「さあ、次。いくぞ。のんびりしている時間はない」


 部長の指示で、休む間もなく洞窟を進んでいく。このあとも同じような戦闘が続いた。端から見たら何の問題もない戦闘かもしれない。それほど強くはないモンスターを、確実に仕留めているように見える。だが、わずかな失敗が死につながることもある。


 失敗を許されない戦闘は精神力を削っていく。死角からいきなりモンスターに襲われることもあるかもしれない。そうしたイレギュラーにも、確実に対処していく必要がある。計画通りにいくとは限らない。


 絶対に集中を切らさないという、張り詰めた緊迫感の中、私たちは進んでいった。さらに数体のゴブリンを倒し、やがて地下16階へ降りる階段へ到達した。


 階段を降りると道は左右に分かれていた。ダンジョンデバイスのナビゲーターが指し示す通り、左の道を選び、しばらく歩くと曲がり角があった。曲がった先を、部長がそっと覗き見る。


「ゴブリン2体、コボルド1体。3体同時はやっかいだ……」


 部長は小さく呟いたが、その情報は間違っていた。椎名さんが訂正を入れる。


「天井にジャイアント・スパイダーが2匹」


 ちゃんと見れば見落とすことはない。巨大な蜘蛛だ。

 気づかずに下を通れば、頭の上から落ちてきただろう。


 その大きさのモンスターを見逃すほど、部長の精神は張り詰めていた。


「ごめん、見落とした。全部で、5体か……。ジャイアント・スパイダーは弓で落とすとして……。それから、1対1の戦闘に持ち込むしかないな」


 一番良くないのは混戦になってしまうことだ。仲間のサポートができないし、被害が拡大することもある。

 私は自撮り棒の先に装着していたデバイスを外し、肩に取り付けた。


「私も参戦します」


 部員たちがいっせいにこちらを見た。


「いやいや、春菜さんを危険にさらすわけには。別のルートを選択することもできるわけですし」


 私は首を振った。


「そんなに強い敵じゃないです。このくらいは倒せないと」


 正直に言うと、見ているばかりだったのでうずうずしていたのだ。

 ゴブリンソードはせっかく5,000DPで買った。なのに、まだ一回も使っていない。せっかくなので、使ってみたいではないか。


「守れるであろうか……」


「いや、守らなくちゃいけないんだよ」


 不安そうに言う石田さんに、部長の力強い返答。


 軽く打ち合わせをしてから、戦闘が開始した。

 葛城さんと椎名さんが弓矢を撃ち、2本ともそれぞれのジャイアント・スパイダーに命中した。


 ジャイアント・スパイダーはもがきながら地面へと落下し、同時に私たちは駆けた。


 全員が剣を手にし、それぞれの担当モンスターへと向かう。


 私と部長はコボルドだ。一体のモンスターに対して二人で挑む。


 犬を二足歩行にしたようなこのモンスター。ゴブリンよりもやや知的であり、素早さもあって腕力もある。


 左右方向に別れた私と部長に、コボルドは目標を定めることができなかったようだ。剣を手にしながら、首を左右に振って戸惑っている。


 部長はコボルドの頭をかち割ろうと垂直に剣を振り下ろした。私はコボルドの左足を狙った。


 刀身の短いゴブリンソードは扱いが難しい。軽いステップで左足を切り落として、そのまま胴体を真っ二つにする予定だったのだが、足を切り落とすだけに留まる。切れ味が悪いのだ、この剣は。


 部長はコボルドの頭を叩き割ろうとしたが、無理だった。頭にヒットしたが、石頭のコボルドはまだ生きている。


 抵抗しようと剣を振り上げたので、私が対処することにした。コボルドの右腕にゴブリンソードを突き刺した。もう少し剣に切れ味があれば、腕ごと切り落としていたところだ。


 持っていた剣を落としたコボルドに対して、ゴブリンソードをすぐに引き抜き、今度は心臓めがけて突き刺す。ようやくこれでコボルドは絶命した。


 ほかの部員はというと、苦戦しながらもそれぞれのモンスターを倒していた。

 だが、さすがに無傷というわけにはいかない。


 私と部長以外の4人の部員は、それぞれ切り傷などを負っていた。


「なんとか……倒せたでござる……」


 石田さんはその場にへたり込む。

 傷を負った部員たちは各自ポーションを使っていた。今は回復を待っている。


 時間が経てば傷を完全に治してくれるが、そこまで待つつもりもないようだ。

 5分程したら部長がみんなに声を掛けた。


「さあ、先へ行こう」


 部長が促すと、部員たちが立ち上がった。

 

 そこからほとんど休むことなく、地下18階、地下19階へと進んだ。


 やがて、下へ降りる階段を発見し、無事に目的地である地下20階へと到達した。


 ここに来るまでで最も強いモンスターはオークだった。


 豚の顔をしたオークは非常に強い攻撃力で私たちを襲ってきた。

 だが、1体のオークなら、連携がとれているダンジョン部の敵ではなかった。


 最も苦戦したのはゴブリン2体、コボルド1体、ジャイアント・スパイダー2体の合計5体を同時に相手にした時だった。やはり数が多い相手には手こずることになる。


 そして、私たちはオーガの間と呼ばれる部屋までやってきた。


 ここは天井が高い。

 見上げるほどに大きな扉は複雑な装飾が施されている。ひと目で豪華だとわかるものだった。


「やっと、たどり着いたね」

「この扉を姫に見せたかったのである」


 部員たちは感慨深そうに、巨大な扉を見上げている。


「この向こうにオーガがいるのであるな」


 石田さんが興味深そうに言うと、部長は釘を刺す。


「オーガとは戦わないからね。僕たちでは絶対に倒すのは無理なんだから」


「扉を開けてしまったらどうなるのであるか?」


 石田さんが問いかけた。

 私も気になる。この扉を開けたらどうなるのだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ