表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
ダンジョン部の姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/147

第90話 春菜はお金持ちのお嬢様?

 私たちは全員、両手を上げている。降伏の意思を示すためだ。


 顔を黒いスカーフで覆った怪しげなハンターたちは、私たちからダンジョンデバイスを取り上げた。

 ハンターたちが手際よくデバイスを操作し、そこからポイントを抜き取ろうとしている。


 部員たちはみんな泣きそうな顔だった。


「拙者の溜め込んだダンジョンポイントが……。ああ……」

「やっと2万DPを貯めたというのに……」

「せめて……、せめて、半分は残しておいてくださらぬか……」

「昨日、現金からチャージしてしまったでござる。3万DPは入っていたのである……」


 部員たちのダンジョンポイントが次々と奪われていった。


「ぶ、部費の……5万DPまで……。それは部活の活動費……」


 ダンジョン部の部費までもが奪われてしまった。


「合計で12万5千DPか。まずまずだな」


 リーダー格の男が満足そうに言った。

 最後に残ったのは私のダンジョンデバイスだ。


 すると、部員たちが両手を上げた状態のまま、私のことをかばおうとしてくれた。


「春菜どののポイントは勘弁してあげてくださいでござる!」

「そうでござる。女子のポイントを奪うなんて、非道すぎる!」

「我々は装備をすべて差し出すでござる。だから、春菜どののポイントは勘弁してくだされ」

「女子にひどいことをしないでくだされ。(なさ)けをかけてくだされ」


 覆面のハンターは剣を持ち上げ、その鋭い剣先がぎらりと光った。


「静かにしろ。殺されないだけマシだとは思えないのか?」


 男は部員の頬すれすれに刃を寄せた。


「いただくのはダンジョンポイントだけだ。こんな初心者ども、どうせ大したアイテムも持ってないだろうしな」


 部員たちは顔に悲壮感を漂わせる。


「そ、そんな……」

「殺生な……」

「無体な……」

「不憫でござる……」


 それを無視して、男は私のデバイスを操作した。


「さて、こいつはいくら持ってやがる?」


 直後、デバイスを操作していた男の指が、ぴたりと止まった。


「ぶほっ!!!!」


 突然、男が盛大に吹き出した。異変に気づいた仲間の覆面が近寄ってくる。


「おい、どうした?」


 問いかけながら画面を覗き込んだその男も、途端に目を丸くした。


「32,150,256DP……。さ、三千万!? 三千万だと!? なんだこの額は!? なんでこんな大金を!?」


 ほかの覆面のハンターたちも近寄ってデバイスを覗き込み、驚愕の声を上げだした。


「さ、三千万だと!?」

「なんなんだ、このダンジョンポイントは!?」

「金持ちか!?」

「どこぞのお嬢様か!?」

「金持ちのお嬢かい!!」


 しかし、実際に操作していた男は不満げだった。


「たったの44,000DPしか引き出せない……。三千万のうち、たったの4万……。これしか出せねえぞ……。どういうことだ?」


 困惑する男に向けて、私は冷静に告げた。


「1ヶ月に5万DPしか使えないように設定されているんです。さっき6,000DP使ったので、今月は残り44,000DPです」


「な、なぜ……?」


「お兄ちゃんから制限されていて」


「お、お兄ちゃんって……」


 呆れたように言ったハンターだったが、次の瞬間、その声に激しい動揺が混じった。


「ま、まさか……お前……」

「筑紫春菜とか言っていたが……」

「筑紫? どこかで聞いたことがあるような……」


 ざわざわ、と騒ぎ出す。


「や、やべーぞ。こいつの兄は……」

「ワールドランク2位のあいつか!?」

「まずい。まずいことになる……」

「すぐに警備隊が来る。そうしたら俺たちは終わりだ」

「くそっ。逃げろ!」

「逃げられるわけねえだろ」


 男たちの一人が頭を抱えた。別の男はわかりやすく動揺していた。


「そうだ。上は巨大鼠(ジャイアント・ラット)を集めちゃったんだ」

「ひえええ。これって自爆じゃん。自ら逃げ道を塞いじゃった」

「だから、こんなことはやめとこうって言ったんだよ」

「俺達はまだ中学生なんだぞ。いつかはこうなるって……」


 私は彼らの言葉を聞き逃さなかった。言葉をそのまま繰り返す。


「まだ中学生?」


 目を細めて彼らを睨みつけた。

 これは、ただのカツアゲではないか。

 しかも、中学生が高校生から巻き上げるなんて。


 よく見たら、鎧の下に着ている学ランの襟章が見える。これは隣町の中学校のものだ。

 落ち着いて聞いてみたら声も若いし、背格好も華奢だった。

 上級ハンターのような鍛え抜かれた肉体とは程遠い。


 彼らはダンジョンポイント欲しさに悪さをする中学生なのだ。少し脅かしておいたほうがいい。


「お兄ちゃん、すごく強いよ。たぶん、みんな微塵切りにされちゃうよ」


 覆面の一人が、ビクッと肩を震わせる。


「ちなみに、お兄ちゃんは見守り機能を有効にしています。私のデバイスの見守り機能です」


 それを聞いた男たちは一斉にわめき出した。


「やべえって!」

DPSダンジョン・ポジショニング・システムだ! ハンターの居場所がわかるというやつ! GPSのダンジョン版!」

「なんて、過保護な!」

「シスコンか! お前の兄は!」

「いや、そんなことより、ここにいたら……」

「兄が来ちまう……」

「俺達はもう……」


 顔を隠した6人のハンターたちは、示し合わせたようにその場へ正座した。


「すいませんでした!」「すいませんでした!」

「すいませんでした!」「すいませんでした!」

「すいませんでした!」「すいませんでした!」


 6人は一斉に、見事なまでの土下座を繰り出した。


「妹様とは知らず、カツアゲをしようとしてしまいました!」

「すんません、高ランクハンターに喧嘩を売るつもりはありません!」

「お兄様にはどうか、内密に!」

「ニャンテンドーのゲーム機を買うお金が溜まったら、やめるつもりだったんです!」

「奪ったダンジョンポイントは全部返します! だから、どうか、微塵切りだけは、勘弁を!」


 私は彼らを見下ろすように仁王立ちする。


「みんな、何年生?」


 一人が弁解するように顔を上げる。


「1年です。ここにいるみんな、中1です」


「もう悪いことはしない?」


 少し声を低くして問いかける。


「しません! 誓って、もうしませんとも! いやあ、姉御(あねご)も人が悪い。ワールドランカーの妹様とおっしゃっていただけたら、手なんか出しませんでしたのに」


 胡麻を擦るように手をこすり合わせている。

 ……こっちから言うわけないでしょ。


「言っておくけど、私だって強いんだからね」


「そんなわけねえだろ……」と言いかけたハンターの口を別のハンターが慌てて塞ぐ。


「むぐぐ」ともがくハンターを押さえながら、「そうですよね。ワールドランク2位の妹様ですものね。僕たちなど相手にならないはずですよね」とおべっかを使う。


 リーダーらしき男が他のハンターを立たせながら、階段を登っていく。


「上の巨大鼠(ジャイアント・ラット)は僕たちが片付けておきますので。どうか、お兄様をお呼びにならないように。なにとぞ、お願いします。僕たち、もう、絶対にこんなことしませんから」


 私がギロリと睨むと、6人の顔を隠したハンターたちは一斉に階段を駆け登って逃げていった。


 ダンジョン部の面々は床に正座をして座っていた。上げていた両手は下ろしている。

 呆然と私を見つめ、それぞれが呟く。


「は、春菜どの……」

「あいつらを睨んで追い返したでござる」

「それに、ダンジョンポイントを三千万以上持っているとは」

「お金持ちのお嬢様であったのであるか!?」

「お、お嬢様!?」

「我々では手が届かない存在……」

「姫? 正真正銘の姫であるか?」

「我々とは違う世界に生きているのでござるか?」

「2度も我々を助けてくれたのでござる」

「我々のような下々の人間を……」

「姫……」

「姫でござる……」

「我々の姫なのである」


 なぜか、部長と4人の部員たちは、私に向かって深々とひれ伏していたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 お兄ちゃんとかもりもりさんとか救援に来てくれた皆さんみたいな、上澄みだけ見てたせいか……底辺連中がゴミ揃いでうんざりしますな。 無論そこの役立たず×5もダメダメですが…ハルナちゃ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ