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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
ダンジョン部の姫

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第89話 逃げるダンジョン部

 悲鳴を上げながら、ダンジョン部の部員たちがこちらに駆けてくる。

 さらに向こうには巨大鼠(ジャイアント・ラット)の群れ。数は推定で20体ほど。


「え? 逃げるの?」


 私が呟くと、部長は即断した。


「に、逃げます!」


 部長は私の手を引き、モンスターとは反対の方へと走り出す。

 4人の部員も追いつき、私たちは全力疾走で逃げだした。


「倒さないんですかーー?」


 走りながら問いかけるが、返ってきたのは「ひえええ」「ひゃああ」「うわああ」といった悲鳴だけだった。


 やがて、目の前には地下2階へ続く階段が見えた。

 あそこを降りれば助かる。


「ぼ、僕たち。ここで死ぬんですかー?」

「やだ、死にたくない!」

「まだ女子とお話していないのに!」


 部員たちは、この世の終わりのような言葉を次々と吐き出す。


「くそ、ここまでか!」


 部長までもが、諦めたように呟いていた。


 彼らは知らない。モンスターは階層を越えて追ってこられないということを。


「モンスターの階層間移動はできません! つまり、下へ降りればいいんですよ!」


 私は叫んだ。


「おおお!!」

「おおお!!」

「おおお!!」


 部員たちの表情が一変する。

 絶望の淵から一気に光明を見出し、歓声にも似た声を上げた。


「我々は助かります!」

「きっと助かるのです!」

「生きて帰るのです!」


 そして目の前に迫る階段。

 私を先頭に、部長と4人の部員が突入する。


 次の瞬間、私は押され、頭から階段へ突っ込んだ。

 そのまま、ずどどどど、と段差を滑り落ちていく。


 地下220階へ落ちた時と同じだ。押されて頭から落ちる展開。ただし、今回は重装鎧など着ていない。


 貧弱な装備のまま、部長と4人の部員たちも巻き込み、最初に地下2階へ到達した私の上に5人の男子高校生が折り重なるように降ってきた。


「ぐえっ」


 潰れたカエルのような声が漏れる。

 まさに押し潰されたカエルの気分だった。次々と降ってくる男子高校生の重みで、私は身動き一つ取れない。


 ぺちゃんこにでもなったんじゃないかというほどの重圧。

 このまま押し潰されて死ぬのか。

 それが、私の人生の終着点なのか――。


 そんな考えが頭をよぎった、そのとき。


「助かりましたぞ!」

「春菜どののおかげであります」

「我々の命の恩人です!」

「春菜どのの機転がなければ、死んでいたであります!」

「我々の女神なのです!」


 私の上で、部員たちが歓喜の声をあげている。

 下に私がいることも知らずに。


「い、いいがら……早ぐ……どいで……。重い……。ぐええぇ……」


 私は動くことができず、潰れた肺で必死に声を絞り出す。


「うわあああ、申しわけございませぬ!」


 部員たちは一斉に飛び退き、私はようやく圧迫から解放された。


「死ぬかと思った……」


 起き上がり、ようやく深く息を吸うことができた。呼吸すらできないほど、押さえつけられていたのだ。


「女子を潰してしまったのでござる!」

「我々はなんということを!」

「罪を犯してしまいました!」

「だ、大丈夫でござるか? 生きているでござるか!?」


 部長は腰が抜けたように、その場に座り込んでいた。


「お前ら、うろたえるな。春菜さんのお陰で僕たちは助かったんだ。まさに、頭脳明晰、才色兼備、豪華絢爛なこの女子のお陰で命を拾った。僕たちでは、下の階層に逃げるという発想は浮かばなかっただろう。春菜さんのとっさの判断のお陰なんだ」


 ……豪華絢爛って、私に使う言葉だろうか?

 フレイムドラゴンを倒したときの黄金の神王装備なら、確かにぴったりだけど。


「とりあえず、ここなら安心ですね」


 私はほっと息をつきながら言う。

 階段を降りたこの場所は行き止まりになっていて、小さな小部屋になっている。

 部長も4人の部員も、その場に座り込んでいた。


 私も、以前ミリアがしていたように、膝を閉じて足先だけを開く座り方をする。正座から足先だけを崩した形だ。


 狭い部屋の中央で、私たちは輪を描いて座っていた。


「じゃあ、せっかくなので自己紹介でもしましょうか。私は筑紫春菜(つくしはるな)。千の宮中学の2年1組、14歳です。ダンジョン配信をしていて、今日が2回目のダンジョンになります。みなさん、お名前は?」


 そう言いながら、自撮り棒に装着したダンジョンデバイスを掲げた、その瞬間。


 私の頬に、冷たい剣先が突きつけられた。


 背後に人が立っている。剣を握っているのは、その人物だ。


 同時に、部員たちの背後にも1人ずつ。

 剣先が、それぞれの顔の横に添えられていた。


 人数は偶然にも同じ。

 鎧を着た6人のハンター。顔は黒いスカーフで覆われ、目だけが覗いている。


「配信を止めろ……」


 一人が、低い声で呟いた。


 どうやら、私たちより先にこの部屋にいた〝住人〟らしい。

 いかにも悪者然とした6人のハンターが、逃げ場のない状況を作り上げている。


》降りちゃいけない階段を降りたようだね。

》こいつら、初心者狩りで有名

》ハルナっちたちは誘導されたんだよ

巨大鼠(ジャイアント・ラット)すら倒せない弱いハンター狙い

》小部屋で逃げ場はなし

》上には巨大鼠(ジャイアント・ラット)の群れがいるから逃げられない

》これがあるからダンジョン配信は面白いよね

》ハルナっちがいなかったら詰んでた

》わくわく

》通報しません

》俺も

》私も

》今度は何するの? ハルナっち


 上層の巨大鼠(ジャイアント・ラット)は私たちをここに追い込むための罠だったようだ。


「まず、ダンジョンデバイスを出せ。そして金と装備を置いていけ。抵抗しなければ、命だけは助けてやる。2時間もすれば、上の巨大鼠(ジャイアント・ラット)は散っているはずだ」


 部長を含め、部員たちは無言で両手を上げ、抵抗しないことをアピールしていた。


 私たちは、自己紹介どころではない状況になっていた。


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