第56話 モンスターの定義
ミリアの助けを借りて、モンスターを倒していく。
けれど、なかなかレアなアイテムは出ない。いくつかポーションやアイテム合成用の素材は手に入ったが、期待していたようなものではなかった。
焦りを抱きつつも、この階層の攻略は中盤に差し掛かる。
すでに50体以上のモンスターを倒しているが、そのほとんどはミリアの貢献によるものだった。
ミリアのHPは100%のままだが、顔も腕も傷だらけだ。
この階層のモンスターは小動物系が多く、噛みつきや引っかきによる傷が絶えない。
ミリアの着ているピンクのフリフリのワンピースはまったく損傷していないが、流れた血で汚れてしまっていた。
》リアルホラー
》必死だな。懸命にモンスターを抱え込むミリアの姿
》必死さがかわいい
》ミリアたんの顔が血みどろ
》か弱い少女を生贄に、ダンジョン攻略
「ミリア、役に立ってうれしいよ。るんるんだよ」
ミリアはスキップしながら、先頭を進む。
少女としか思えないミリアからは、悪意のかけらも感じられない。
「ミリアってさ。私たちが来るまで、何をしていたの?」
私の問いかけに、ミリアの動きがぴたりと止まった。
「何を?」
真顔になるミリア。顔は引っかき傷だらけで、少し血も流れている。
表情が消え、どこか不気味さもあった。
「何をしていた、とは?」
聞き返され、私は答える。
「ミリアってモンスターなんでしょ? でも、この階層に侵入する人なんて、いなかったわけだし」
私の言葉に、ミリアは首を傾げた。
「ミリア、モンスターなの?」
逆に問い返されて、私も疑問に思う。
人間と同じような自我があり、愛嬌を振りまき、殺されることを恐れ、いっしょに健気に戦ってくれる。
そんな存在を、モンスターと呼ぶのだろうか。
もりもりさんが答えた。
「モンスターと呼ぶのは人間の都合であって、人間を脅かす存在がモンスターなのだと思います」
「じゃあ、ミリア。モンスターじゃないよ。あれ? モンスターかも? どっちだ?」
ミリアは首を左右にかしげる。
「ミリアねえ、ハルナお姉様ともりもりお姉様が来た時、殺そうと思った。でも、男の人がいなくて、完全魅了が使えないから、逆にミリアが殺されるって思った。助けてほしいって思って、役に立てばいいんだって思ったの」
「最初は、私たちを殺したいって思ったの?」
「あ、えと。最初だけ。最初だけだよ。今は違うの。信じて」
「気持ちが変わったってこと?」
「わかりあえれば、敵ではなくなるということでしょうか?」
私ともりもりさんが、同時に問いかけていた。
「ミリア、もうお姉様たちを殺したいって思わないよ。だって、ミリアのことも殺さないでしょ?」
「まあ、そうだね……」
「え? まだ決まっていないの?」
「いや、もう殺せないよね。気持ち的に」
「人間に対して敵意や悪意があるなら、私たちの敵と言えるでしょう。ミリアからは、いまのところ、そういった敵意は感じません」
「仲間意識が生まれちゃったよ」
私が言うと、真顔だったミリアがぱっと笑顔になった。
「やったーーー」
両手を高く挙げて、喜んでいた。




