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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
ダンジョンからの脱出

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第55話 モンスターを倒す

 私は配信をしている向こう側の視聴者たちに話しかける。


「みなさん、この壁の向こう側に無敵の兎(ヴォーパル・バニー)がいます。モンスターはマッピングアプリ上で紫色の表示でした。私たちでは倒すことが困難な敵です。苦戦が予想されます」


 もりもりさんは少し後方で撮影をしている。両手を空けるため、デバイスは肩の上に装着していた。すぐ横にはミリアがもりもりさんに張り付いている。


「魔法を解除して壁を消します。準備してください」


「はい、いつでもかまいません」


 私はごくりと唾を飲み込む。剣を握る手には、わずかに汗がにじんでいた。この場に緊張感が走る。


「では、いきますよ。無敵の兎(ヴォーパル・バニー)は、かなりの強敵だと思います。初手で不意をつけるかどうかが、勝敗を分けるはずです。今回の戦闘に限らず、一回一回の戦闘が薄氷を渡るような、ぎりぎりの攻防になるでしょう」

 

「小さなミスも許されませんね」


「私も可能な限り援護しますが、装備がないため直接戦闘はできません」


「ところで、もりもりさん」


「はい」


「ミリアに、しがみつかれていますね……」


 半ば無視しながら進んできたが、ミリアは相変わらず、ずっと涙目のままだった。


「あのね、ミリアね。役に立つよ……」


 もりもりさんにしがみついているせいで、逆に足を引っ張ってしまいそうだ。


「じゃあ、ミリアもいっしょに戦ってくれるの?」


 私が聞くと、ミリアは急に嬉しそうな声を上げ、走り出して、私よりも前に出てしまった。


「いいの!? 戦う! 戦うよ! ミリア、戦うんだよ!」


 もりもりさんは、すでに魔法の解除を始めていた。私と土壁の間にミリアが飛び込み、壁が消えると同時に、ミリアと無敵の兎(ヴォーパル・バニー)が鉢合わせする。


「ギー!?」

「!?」


「ミリア、危ない!」


 私は叫び、ミリアの前に割って入ろうとした。

 しかし、ミリアと無敵の兎(ヴォーパル・バニー)の激しい攻防が、即座に始まった。


 ミリアは攻撃能力こそ皆無だが、動きは素早い。一方の兎も、地上の動物とは比べ物にならないほどの速度を誇る。両者の動きを、目で追うことすらできない。


 兎はミリアに噛みつき、引っかき、後ろ脚で蹴り上げる。天井に跳び、横の壁を蹴り、狭い洞窟を縦横無尽に駆け回った。


 ミリアもまったく引けを取らない。同じように壁を蹴り、真横に飛翔するかのように跳ぶ。


 狭い洞窟内で、壁に反射しながら、二つの影が高速で飛び回っているようにしか見えなかった。


 私ともりもりさんでは、苦戦どころか、勝負にすらならなかったかもしれない。


 兎は長い前歯と爪が武器だ。ミリアの顔や腕、脚に傷を刻んでいく。しかし、ミリアは武器を持っていない。殴り、蹴ってはいるが、有効なダメージを与えているようには見えない。ミリアに勝ち目はないように思えた。


 けれど、兎はレベル151、ミリアはレベル173。

 この差は、想像以上に大きかった。


 突然、両者の動きが止まる。


 ミリアは、兎の長い耳の根元を掴んでいた。そのまま持ち上げる。

 兎は短い手足をばたつかせる。耳を掴まれた状態では、ミリアを攻撃できない。


 顔を傷だらけにしながら、ミリアはこちらに笑顔を向けた。


「捕まえたー」


「すごいね、ミリア……」


「褒めて、褒めて。もっと、褒めてー」


「じゃあ、そのまま持ってて!」


 私は長剣を横薙ぎに一閃した。

 ミリアは、私の剣がすれすれを通ったはずなのに、身じろぎ一つしない。


 兎の腹を斬ったつもりだったが、硬い毛に阻まれ、HPをほんの1%ほど削っただけだった。


「私も支援します!」


 もりもりさんが、土魔法で援護してくれる。

――土の刃(アース・カッター)

――土の槍(アース・ランス)


 剣と魔法の攻撃が、兎を襲う。


「ギイイィ! ギギイ、イイィ!!」


 無抵抗となった無敵の兎(ヴォーパル・バニー)を二人がかりで攻撃し、ようやくHPを0%にした。


 ミリアがいたからこそ、倒すことができた。

 やはり、ミリアは強い。


 顔も腕も傷だらけなのに、ダンジョンデバイス上では、ミリアのHPは100%のままだった。


「ありがとう、ミリア」

「ミリアさんがいなかったら、どうなっていたか」


 私ともりもりさんは、ミリアにお礼を言う。


 ミリアは「えへへへ」と、得意そうに笑っていた。


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