表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
泥にまみれた戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/150

第35話 お猿さんを閉じ込める

 マッド・エイプはすぐ目の前にいる。

 階段の入口は石で囲まれ、螺旋状になって上へと伸びていた。


 マッド・エイプは被っている兜をくるっと回転させた。猿の顔は完全に覆われ、これではこちらを見ることはできないはずだ。


 楽しそうに両手を振り上げ、踊るような仕草を見せている。『お前なんか見えなくても怖くないぞ、雑魚め』とでも言っているかのようだ。


》完全に遊ばれてるな

》もう兜も剣も、取り返すのは絶望的か?

》まだ取られやすいものがあるから気をつけろよ。神王のネックレスとか。

》とりあえず、現状をなんとかしないと

》なにか、方法はないものか……

》そうだ! 空間収縮ユニバース・リジェクトでやつの後ろへ瞬間移動したら?


 神王スキルである空間収縮ユニバース・リジェクトを使えば、短距離を瞬間移動することができる。ただし、発動には条件があった。


「すでに試みたのですが……。移動先に障害物があると無理なんです。マッド・エイプの背中には神王の長剣が刺さっていて、それが発動を阻害しているようなんです」


》あのお猿さん、そこまで考えているのかね?

》たまたまだろ? ハルナっちのスキルまでは知らないはず

》いずれにせよ、逃げ道はない

》戦うのか? それしかないのか?


 今の私は完全に泥だらけだった。配信画面には全身が泥で汚れた私の姿が映っている。カメラのレンズに付いた泥を拭ったものの、完全に落としきれてはいない。視聴者には不鮮明な映像が送られていた。


「お兄ちゃんの剣に続いて、兜まで……。なんとか取り返す方法はないものでしょうか……」


 私は唇を噛みながら、込み上げる悔しさをこらえる。


 ダンジョンデバイスをマッド・エイプに向けてHPを確認するが、100%のままだ。剣が背中に刺さっていてもダメージにすらなっていない。


 正確には0・001%ほどのダメージは与えているようなのだが、致命傷にはほど遠い。


 マッド・エイプは相変わらず挑発を繰り返す。兜を前後逆さまに被ったままでいるが、私が逃げようとすれば飛びかかってくるだろう。視界が塞がれていても、奴にとっては造作もないのだ。たぶんまた、私を泥に突き落としたりするに違いない。


「憎たらしいです……」


 なんとかこの猿をぎゃふんと言わせる方法はないものか……。あわよくば、倒せないだろうか……。


 懸命に思考を巡らせるが、良い案は一つも浮かんでこない。


 だがその時、私に天啓のような閃きが降りてきた。


 この方法ならどうだろうか。

 もしかしたら、可能性があるかもしれない。


 今のこの状況を逆に利用する。

 階段は閉鎖された環境だ。

 そこへ自ら入ったマッド・エイプは、愚かとしか言いようがない。


「私のことを、舐めすぎです!!」


 私は叫び、背負っていた盾を勢いよく下ろした。


「神王スキル――絶壁の大盾(ウォール・シールド)!」


 叫ぶと同時に、盾が私の身長を超える大きさへと拡張される。そのまま階段の入口に力任せに押し付けた。


「閉じ込めてやりました!」


 ダンジョンデバイスのカメラは泥で汚れ、画面も半分ほどしか見えない。どうせ視界は悪いし、なにより視聴者からのコメントを追っている余裕はなかった。


「このまま押しつぶしてくれます!」


 私はぐいぐいと盾を押し込む。


「キキ! キキィ!」


 当然、マッド・エイプも抵抗してくる。凄まじい力で押し返してきた。


「神王装備を舐めるなよお! 腕力上昇(ブースト・パワー)! 大鬼の小手(オークズアーム)! 脚力上昇ブースト・レッグパワー! 巨人の脚力(オーガズレッグ)!」


 装備とスキルの力でひたすらゴリ押しする。じりじりと押し込んでいき、階段を一歩、また一歩と登っていく。


「どうだ! これがお兄ちゃんの装備のパワーだ!!」


 この先は地下216階。

 モンスターによる階層間の移動は不可能だ。


 そこに逃げ道などないのだ。


「キ、キ、キ! キキィ!」


「このまま押しつぶしてくれます!!」


 マッド・エイプの抵抗も相当なものだったが、装備を奪われた私の恨みのほうが勝っていた。私は一歩、もう一歩と階段を登り、地下216階の目前まで追い詰めた。


「キイキイキイ?」


 ここにきて、マッド・エイプが茶化すような声を漏らした。

 

 このまま圧殺しようと考えたが、現実はそう甘くなかった。

 力比べでは勝っているものの、マッド・エイプに致命的なダメージを与えるまでには至らない。


 デバイスでHPを確認する。マッド・エイプのHPは100%のままで変わらない。これほどやっても、有効なダメージを与えることができていなかった。


 盾の向こう側にいるマッド・エイプに対し、私に直接攻撃する手段はない。押しつぶす以外に方法はないかと思案したが、別の神王スキルを発動させる。


「なら、これではどうですか!!」


 極大重力エクストリーム・グラヴィティ!!


 このスキルは私を中心とした重力を増大させる。効果範囲を絞り込むほど、かかる重力はより大きくなる。


 ぎりぎりマッド・エイプに効果範囲が及ぶように調整し、最大限の出力を発揮する。


 ずしん、と重い圧力がのしかかる。

 私の体重4?Kg(自称)は約100倍の4千Kgとなる。約4トンだ。


「こ……れ……で……どうだ……!」


 神王の鎧を纏っているおかげで、なんとか自重に耐えられる。はたして、マッド・エイプは……。

 ダンジョンデバイスで奴のHPを確認する。


「だ……だめ……か……。変わらず100%のまま……」


 さすがのマッド・エイプも苦しそうに呻いてはいるものの、ダメージを与えることはできなかった。


「くっ……。もう、攻撃手段がないよ……」


 私は手持ちのカードをすべて使い切っていた。


 天啓が降りたと思っていたけれど、結局ここまでが限界だった。


 神王スキルには制限時間がある。盾を押す力も弱まり、やがて力尽きるのを待つばかりだ。


 一方でマッド・エイプは、盾に押され重力に潰されながらも、まだ余力を残しているようだった。


 代わりに、私にはどっと凄まじい疲労が襲いかかる。


 スキルを維持しているだけでも、みるみると活力が奪われていくような感覚だった。

 いつまでもこの状態でいれば、こちらのほうが先に倒れてしまうだろう。


 有効な策もなく、それでも必死に盾を押し続けるしかなかった。


「やっぱり、私では……た、倒せない……の……かな……?」

 

 だめかな……。


 諦めかけていた。


 限界も間近だった。

 もうすぐスキルが強制解除されてしまいそうだった。


 ふと、何かの光明が差したような感覚を覚えた。

 すべてを覆す、運命の反転現象。

 

 ――覚醒LV2


 運命が新しい方向へと進み出す、世界が変転する流れ。


 なんだろう、これは。

 覚醒の連鎖? 共鳴反応? 新しい覚醒者? どこでそんな存在が生まれた? いつ? どこで?


 なにげなく、ダンジョンデバイスに視線を向けた。


》【もりもり】お……またせ……しまし……た


 泥で汚れていてよく見えない。

 それは、もりもりさんからのコメントだった。


 画面を擦って泥を落とすと、ようやく文字が読めるようになった。


》【もりもり】春菜さん。お待たせしました! そのままの状態を維持してください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ