表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
ハロー、アメリカ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/170

第166話 飛行機なんて怖くない

「ところで、筑紫春菜は飛行機に怯えていたように思えたのじゃが、勘違いかえ?」


「…………」


 少しの間、お互いに無言になる。スマホの向こうでは、ユカリスさんが私の返答を待っているのがわかる。


「……あれはきっとアメリカ軍の最新鋭機だったんだと思います。だって、加速が尋常じゃなかったですし、常に轟音が鳴り響いていました。揺れも凄かったので、超音速で飛んでいたのかもしれません。普通は特殊な訓練を積んだ人間しか乗れない機体なんです。ジェットコースターが平気な私でも怖かったくらいですから」


「なるほどのう」


 なぜかユカリスさんの声は棒読みだ。軽く聞き流されたような気がする。


「でも、おかげで怖いものがなくなりました。あの体験に比べたら、どんなモンスターにでも立ち向かえる気がします」


「宇宙飛行士などは専用の装置で強烈な重力加速度(G)に耐える訓練をすると聞く。筑紫春菜はそんな訓練もなしに、いきなり宇宙飛行士なみの体験をさせられたわけじゃな」


「そうなんです! きっとあれはアメリカ軍の極秘事項にあたるような、特殊な飛行機だったはず!」


「動画ではずっと配信されていたがな。映像はモザイク処理もされずに、しっかり流れておったぞ」


「されていましたね」


「機体名やら性能やらをウンチク垂れる視聴者もいたしな」


「いましたね」


「まあ、機密というわけではなかったようじゃがな。あの機体は」


「……とにかく、あの強烈な加速は体験した人間じゃないと分かりません。動画じゃ伝わらないものがあります。伝えられなくて残念です」


「つまり、筑紫春菜にとっては民間の旅客機など何ともないわけじゃから、飛行機に乗ることは問題ないと? そういうことでいいんじゃな?」


「……いえ、せっかくですし、次は船でもいいかなと。そう思っています」


「海路じゃと10日くらいはかかるぞ」


「まあ、それも貴重な体験ですし。次回は絶対に船で。なんとしても船で。是が非でも船で行こうと思います」


「飛行機で行ったほうがいいと思うぞ。さすがにビジネスクラスやファーストクラスの交通費は出ないかもしれんが。……よし、今回はユカちんが奮発してファーストクラスを……」


 私は慌ててユカリスさんの発言を遮る。


「船で行きます! 行かせてください! 私はとっても船に乗りたい気分なんです。海が好きなんです。なんなら泳いで行きたいくらいですが、泳ぐには距離があるので、船で行こうと思います。あー楽しみだなー。船で優雅な旅だ。一度乗ってみたかったんですよね、豪華客船。きっと大きくて立派な船なんだろうなー」


「…………」


 少しユカリスさんが無言になり、


「……まあ飛行機で行くことになるとしたら、配信は切っておくことじゃな」


「…………はい……」


 私は小さな声で応えた。


   ◆ ◆ ◆


 放課後になり、校門を出る。


 いつもは1人で帰ることが多いが、今日はミリアを含めて4人だ。教室に戻るとミリアが湊ちゃんと春日井君と話をしていたので、いっしょに帰ることになった。


 湊ちゃんとはたまにいっしょに帰ることがあったが、春日井君と帰るのは初めてだ。というか、男子といっしょに帰るなんて、これが私にとって初めての経験かもしれなかった。


 ユカリスさんとの電話の内容を3人に話していると、春日井君が興味深そうに反応した。


「へー。筑紫はまたアメリカへ行くんだ」


「いや、まだ決まっていないけどね。ユカリスさんによるとロサンゼルス・ダンジョンが選ばれたハンターに開放される可能性があるんだよね。もし私にも許可が出たら行ってみたいなと思って。ミランダさんはすでにダンジョンに入ったみたい」


「すげえ、羨ましい。俺も行きたい」


「さすがにレベル12じゃ許可が下りないと思うよ」


「でもなんで急にアメリカは門戸を開くんだ? 今まで通りアメリカ軍だけで独占してもよさそうだけれど」


「それは存在が世界に知られてしまったから、ダンジョンの資源を独占していると思われるのが嫌なんじゃないかな。それに日本のようにダンジョンを公開することで得られる利益もあるから」


「そうなのか? 独占したほうがいいんじゃないのか?」


 その質問には私の代わりに湊ちゃんが応えてくれた。


「私、ダンジョンについていろいろと調べたんだ。日本のダンジョンはどちらかというと実験的な意味で公開されていたところもあるんだよね。一説によると、アメリカや諸外国からの圧力もあったみたいだけれど、公開したことで広く探索が行われて、モンスターの情報やアイテムの研究、ダンジョンデバイスの開発なんかが他の国より進んだんだよ」


「湊、詳しいね」


「まあね。春日井君がダンジョンハンターになったのを聞いて、大丈夫かなって心配になって、私なりにいろいろと情報収集して……」


「え? 俺?」


 急に名前が出たので、春日井君が自分を指差す。

 湊ちゃんは顔を真っ赤にし、手を振りながら否定した。


「あ、違う違う。春日井君とか春菜とか、他の生徒とか、だよ。中学生なのにハンターなんて危ないんじゃないかなって。それで調べたの。ほら、私が調べ始めたのがたまたま春日井君がハンターになった時期と重なったというか、その時はまだ春菜はダンジョンに入ったこともなかったから。だから、春日井君の名前を出したってだけで……」


 恥ずかしそうに否定する湊ちゃんは、なんだかとても可愛いと思った。

 一方で春日井君は「ああ、そういうこと」とそっけない態度だ。

 さすがに鈍感すぎる。


 もじもじして俯く湊ちゃんを見たら誰でも好きになってしまうはずだ。

 それなのに、そんな湊ちゃんを見ようともせず、会話の流れをアメリカへ行く話に戻してきた。


「いいよなー。俺もアメリカに行きてえ。ほら、日本のダンジョンじゃ俺はぱっとしなかったけど、アメリカなら活躍できるかもしれねえだろ」


「そんなわけあるか」


 と、私はツッコミを入れ、春日井君を湊ちゃんの方へと押し出す。


「おっとと……」


 と言いながら春日井君は湊ちゃんにぶつかりそうになってよろめいた。湊ちゃんの肩に手を置き、春日井君の顔が湊ちゃんのすぐ近くまで接近した。


 湊ちゃんは顔を上げ、視線が春日井君と交錯した。

 時間が少し止まったかのように、2人は見つめ合った。すごく距離が近い。顔と顔の距離は15センチほどだ。


 湊ちゃんは茹で上がったタコのように顔を真っ赤にして固まっている。

 春日井君ははっと我に返ったように、慌てて飛び退いた。私の方へと大きく後退してきたので、春日井君のお尻が私のお腹に当たる。


 私は押されて尻餅をついて転んでしまった。

 こちらに振り向こうとした春日井君は、慌ててしまい、足をもつらせてしまう。

 

 私に覆いかぶさるように転んできて、春日井君は両手を私の顔の横についた。

 まるで押し倒されでもしたかのような格好になってしまった。


 今度は私と春日井君の顔が接近してしまった。その距離5センチ。

 この距離のヤバさがわかるだろうか?

 今にも鼻と鼻が接触してしまいそうな、互いの息遣いが伝わってしまいそうな、そんな距離だ。


 こんな時には何を喋ったらいいのか。どう反応したらいいのか。


 正解がわからないでいると、ミリアがダメ押しをしてくる。


「湊は見ちゃ駄目なのです」


 そう言って湊ちゃんの目を塞いでいた。


「お姉様は春日井と愛の営みを始めようとしているのです。子供は見てはいけないのです」


「そんなわけあるかあ!」


 私は叫んで春日井君の腹を下から膝蹴りした。


「ぐぇ」


 と叫んで春日井君は腹を押さえ、悶絶しながら地面に転がった。


「ご、ごめん。春日井君!」


「営みは失敗に終わったのです……」


 ミリアの残念そうな声に、湊ちゃんは目を塞がれながら当惑する。


「何? 何が起こったの? 2人とも大丈夫なの?」


 湊ちゃんはミリアに後ろから目隠しをされている。


 心配そうに手だけを動かす湊ちゃんは、おろおろとしていて、その姿も可愛らしい。

 春日井君はこの可愛さに気がついていない。鈍い春日井君には、まだ恋愛は早いのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ