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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
新しいダンジョン

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第109話 隣の席の春日井君

 (みなと)ちゃんとの会話に夢中になっていて、春日井(かすがい)君が登校してきたことに直前まで気づかなかった。

 私の右隣が春日井君の席だ。

 彼は不器用に左手で椅子を引いていた。見れば、春日井君の右腕は包帯で首から吊るされていた。


 そのことに先に気づいたのは湊ちゃんだった。


「どうしたの! 春日井君!! その腕!?」


 おそらく春日井君は教室に入ってから席に着くまでに、いろんな人に同じことを聞かれていたはずだ。

 腕は包帯をぐるぐる巻きにして体の前で固定している。目立たないわけがない。


「うっせーな。いいだろ……」


 春日井君は心底うざそうに答えた。

 今度は私が問いかける。


「ダンジョン?」


 春日井君は確かダンジョンハンターで、レベルは12だったはずだ。


「ちっ」


 私の問いかけには舌打ちで返してきた。こんな春日井君は珍しい。

 普段は私に気があるんじゃないかと湊ちゃんがからかってくるくらいに、軽口を叩いたり、陽気に振る舞ってくるからだ。


「ゴブリン? コボルド?」


 春日井君の舌打ちは気にせずに、私は尋ねる。


「レッサーウルフ……」


 春日井君は消え入りそうな声で答えた。

 包帯が巻かれた腕を、湊ちゃんは心配そうに見ている。


「噛まれたの? 骨が折れてるの?」


 そっと手を伸ばした湊ちゃんから、包帯でぐるぐる巻きになった腕を春日井君は遠ざけた。どうやら触られたくないらしい。


「骨にひびが入っただけだよ」


 レッサーウルフはダンジョンの低層に出現するモンスターだ。ゴブリンなどの人型モンスターよりは弱いとされている。

 だが、現実世界の犬などと比べたら凶暴で、熊と戦うくらいの危険度はあった。

 特に、顎の力は強力で、生身の人間なら骨ごと噛み砕かれるだろう。


 私はダンジョンデバイスを取り出して操作した。


 本来は学校での使用は校則で禁止されているが、何本かの初級治癒ポーションを実体化させるためのコマンドを選ぶ。


 机の上に、カチャカチャと音を立てて複数のポーションが出現した。


「これ、使って」


「いらねーし。学校で使うのは校則違反だろ」


 校則違反とは、もちろん私の行為のことだ。

 春日井君がこのポーションを使うことは違反でもなんでもない。

 すでに実体化されているポーションを使うことは問題にならないのだ。


「春日井君のことだから、中級治癒ポーションだと受け取らないと思ったから」


「中級ってお前、1本で50万DPはするだろう」


「だからこれだよ。初級治癒ポーションなら1本の治癒能力も少ないし、効果時間も短いけれど、何本も使えば骨折だって治せるよ」


 ダンジョン内なら、怪我を短時間で治す必要がある。しかし、ダンジョンの外でなら、時間をかけて治せばいい。


「骨折じゃなくて、ひびだって言っただろ。そうは言っても、この数。全部で数万DPはするぜ。いらねえって。払えねえし」


「別に、お金なんていらないよ」


「だから、いらねえって」


 春日井君は頑なに受け取ってくれない。

 机の上で乱雑に出現したポーションを、湊ちゃんが1、2、3と数えながら立てていく。「12本」と声を出し、すべてのポーションを並べ終えた。

 その湊ちゃんが春日井君の方を向く。


「春日井君、どうせ無理したんでしょ? 春菜に触発されて、俺もいいところ見せようとか思ったんじゃない? どこまで潜ったの?」


 湊ちゃんはポーションの1本をつまみあげ、目の前でぶらぶらと揺らしていた。


「地下13階……単独……」


「ええ!?」


 驚いた湊ちゃんがポーションを落としそうになり、慌てて掴み直していた。

 私は呆れながら、春日井君に話しかける。


「春日井、あんたさあ。確かレベルは12だったよね?」


「ああ。悪いかよ」


「こんど、いっしょにダンジョン行く? オーガの間でも見に行こっか?」


「い、いかねーし」


 なぜだか顔を赤くする春日井君。

 そして、それを見ている複雑な表情の湊ちゃんがいた。


「そういうの、ダメだよ。良くないと思うよ。2人で、とか……。危ない目にあったら大変だし。パーティで行ったほうがいいよ……」


 前から思っていたけれど、湊ちゃんは春日井君のことを気にしていることが多い。

 春日井君は私に気があるんじゃないかとか言っていたが、もしかして、湊ちゃんは春日井君のことを……?

 私は友人に探りを入れてみた。


「じゃあ、湊もハンターになってさ。3人で行こっか」


「行かないよ! ハンターにもならないし!」


 湊ちゃんは少し頬を膨らませながら、自分の席へと戻っていった。

 そうやって少し機嫌を損ねるところが、逆に怪しいんだよね。


 私は横目で春日井君の様子をうかがうと、春日井君と目が合ってしまった。

 春日井君が断るのをわかっていて、一緒にダンジョンへ行かないかと言ってしまった。もしも了承されていたらどうなっていたのだろう?


 まあ、その時は本当に湊ちゃんを無理矢理にでもハンターにして、3人で行くことになるんだろうな。


 私の前ではいつもおちゃらけている春日井君だけど、剣道部の副部長でそれなりに女子からも人気がある。だから、間違えても2人でダンジョンになんて行くわけにはいかない。


 それに友人の恋路も少し気になる。

 湊ちゃんの席は少し離れた前から2列目だ。席に座った湊ちゃんがこちらに顔を向け、ちらっと見てきた。その視線は私とは少しずれたところにあった。

 これはこれは……。

 もしかしたら、席を代わってあげたほうがいいのかな?

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