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三〇話⑥

(ごめん一帆かずほ。わたしは行くよ)

(こっちに残られても困る、さっさと行け。龍の攻撃程度を防げん訳が無いのだからな)

 頷いた百々代(ももよ)は息を潜め、不識しれない零距離擲槍ブースターの連続使用、そこに浮き渡る黄を織り交ぜて空宙を誰にも気取られず走っていく。

(先ずは魔物を生み出すフーリからッ!悪いとは思わない、から!)

 回された足には擲槍加速、相手が一般人であれば頭蓋が砕けて頭が爆ぜるだけの威力があるそれを容赦なく命中させて、落ち行くフーリを見下みおろしては、千生龍せんしょうりゅうへと視線を向ける。

「ふぅー…」

(目が痛い…、酷使しすぎたか、長時間の負荷に人の身体が耐えきれないか。これ以上は拙いから地上に引きずり降ろさないとッ!)

 火傷痕に痛みが走り攻撃が迫ることを察知し一度跳び上がってみれば、百々代のいた場所には千生龍の顎があり、動けなければ腹の中に押し込まれていたことは必至。頭上を陣取れた百々代は片足を高く上げては擲槍で自身を加速させ。

雷放らいほう!」

 零距離擲槍踵落パイルドライバーを脳天にお見舞いさせた。

 外傷を与えることは敵わなくとも、振動で脳を揺らすことは出来、千生龍と百々代は地上目掛けて落下してく。


「あの馬鹿力女!まだ弾はあるんだ、絶対に殺してやる!!」

 落下してくる一人と一匹を視認したフーリは、自身の身体から魔物を生み出しては軍勢を作り出していくのだが、その内一匹の首が刎ねられ視線を向けると襤褸々々(ぼろぼろ)になった利市と理愛の姿が。あの光線を一帆は受け止めていた、然し余波を喰らって篠ノ井隊の面々は全身軽症塗れである。

「フーリ、お前はここで仕留めさせてもらう」

「私達のツケだけらね」

「どいつもこいつも、邪魔ばかり!親父もだ!魔王族の誇りを失い腑抜けて和平なんか結びやがって!なんもかんも全部お前のせいなんだよ、勇者が!!」

 獣型の、機動力のある魔物をけしかけては次から次へと魔物を生成し、物量で圧し潰すべく陣を敷く。

「時代なんだよ、時代。何処も彼処かしこも戦争で疲弊ひへいして、人族だけじゃない魔王族だってそうだったろう?」

「知ったこっちゃない!僕がいれば軍勢なんていくらでも作り出せるし、兄さんがいればどんな強敵にだって渡り合える!親父がいれば、未だ戦えたんだ」

「領地を奪い奪われて戦った結果が和平アレなんだ、混獣魔王ヤーズイショウも悟ったのだろう!あれ以上の戦乱は無意味であると!」

「だったら戦のために育った僕たちはどうなるんだ!?死ねとでもいうのかよ!」

「そういった魔王族も各々が生き方を決めて進んでいただろう!何故それを見ない!模倣しない!」

「勇者アレックス!お前だって今正いままさに戦の只中にいるだろう!!お前は何を見つけたんだ!?」

「…。見つけたさ、私はな」

「起動。陽芒ひのけさき!」

 起動句は向こうの世界でいう詠唱。魔法が飛来すると感じたフーリは、飛び退いて攻撃を躱そうと試みたのだが、理愛りあが使用したのは狙い通りの運用できていない陽芒。数本の光線で貫き焼かれ、フーリは痛みに悶え苦しみ地面へと転がっていく。

「クソ、クソクソ!どいつもこいつも!!こうなったら最終手段だ!もう手段なんて考えてやるか!!ぐぁあ」

 彼は自身に取り込んだ魔物を生成する力を持つ。そして今、百々代たちが戦っている千生龍も、フーリが取り込み生成した対象。つまり。

「もう一匹だと!?」

「あんなデカいの…一匹しか制御しきれないから、作ってなかっただけなんだよ…。はぁ…はぁ…、くたばれクソッタレの勇者と人族ども」


「なっ!?千生龍がもう一匹!?一帆、ヤバいんじゃないのアレ!」

 蘢佳ろかは慌てた声色で一帆かずほに報告するも、彼は覆成ふくせい氷花ひょうかの準備中。途切れさせて指示をだす選択肢がなきにしもあらずだが、もはやこの状況で出せる指示などありはしない。顔を引きらせては思考を巡らせていく。

利市りいちと理愛で対処が出来る相手ではないし、百々代を抜いた俺達で此方を仕留めきるのも難しい。そもそも雷迎電辿なしで突破するのは不可能だろう…)

「一帆、陽茉梨ひまりさん、蘢佳と勝永かつながさんも!!とりあえずの魔法で首に狙って打ち込んでッ!後はわたしがなんとかするから!雷迎電辿らいごうでんてんッ!!」

 千生龍相手に地上にて人知を超えた攻防を繰り返していた百々代は、雷纏鎧に課せられた成約の全てを取っ払って相手を仕留める準備を整える。

「はい!」「バレ(りょうかい)!」(自棄っぱちだ!やってみせろよ一帆おれ!)(百々代さんと皆となら!)

駆刃くじん!」「――氷花!!」「――陽芒!!ですわ!!」

 四人による魔法射撃に合わせて百々代が一点集中の金の瞳を用いる。左眼には優しくない痛みが走り続けているがお構いなし、一帆の氷花が罅割れた鱗を突き破っては凍結の脆弱化、そこに対して三人の魔法が一斉に押し寄せて肉が見えるほどに破壊し尽くす。

「起動。回削まわりけずる籠手かごのて。成形兵装武狼!!」

 自身を武狼の太刀の峰に乗せては、擲槍加速で射出。雷の溢れ出る籠手を肉に押し付けては手放し、蹴りを加えて内部まで差し込んだ。そして百々代は雷迎電辿の負荷で意識が沈みゆき、僅かな可能性に賭けて防御姿勢を取ったのである。

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