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三〇話⑤

 百々代(ももよ)が大心臓を破壊してから一〇日ほどが経過し、数多くが集結した巡回官らは場所々々(ばしょばしょ)に簡易中間拠点を設営しながら、大群を打ち払い大心臓を壊し進んでいた。巡回官とは元より魔法師の中でも上澄みに位置する優秀な者たち、頭数が揃ってしまえば数が多いだけの有象無象程度であれば対処は用意となる。

 現在地は四八階層の大心臓を破壊しきって、魔物魔獣を処理しながら一息ついているところだ。

「大心臓から大型の魔物が現れたのは五階層と三六階層、ここも無し。現れないほうが此方としては助かりますね」

「だな」

 文子ふみこ忠岑ただみねは大きく息を吐き出して、地べたへと腰を下ろす。彼女らはそろそろ現役引退を視野に入れなくてはならない熟練巡回官、鍛えられているとはいえ若い面々と比べると疲労の蓄積が早い。

「引退前の先輩方には厳しい場所でしたかね?」

伊那いな、貴女もあと一〇年もすればわかりますよ」

「流石に一〇年も持ちゃしませんよ。先輩が通り名を付けた彼女、本当に頭抜けていますね」

「篠ノ井隊そのものがご老人や侯爵の組んだ、対大魔宮の最大戦力として数年を目処に活躍してもらう心算だったみたいですけど」

「即戦力だとは誰も思わなかったんだろうな。それに見慣れない新人に、自立成形獣とやらもなかなか」

「お陰様で被害なしに進めているんですけどね。…若い子たちにおんぶに抱っこでは示しがつきませんから、私共も尽力せねばなりませんね」

 熟練巡回官たちが腰を上げれば、ぐらぐらと迷宮全体が揺れ動き四八階層へとやってきていた巡回官らが一処に集まっていく。

「何でしょうか、この揺れ…」

「何があるかわからん、範囲を広く障壁を張る。迷宮遺物の効果で触れた対象を凍結させるから気をつけろ」

 一帆かずほは広く大きく障壁を張り、旱魃湖階層の全方へ巡回官が視線を張り巡らせた。すると、四九階層へと繋がる通路辺りが盛り上がって破裂し、砂煙の中からは大鱗をびっしりと纏った四脚二翼の六肢龍で、体長は一〇間(20メートル)程で樹董龍に近しい形状をしている存在、つまり千生龍が這い上がってきていたのである。

「「「!?」」」

「ああ、やっぱりこっちにいたか、篠ノ井百々代(ももよ)。だが遅かったね、もう既にこっちは準備を終えて千生龍これを地上へと連れて行くだけ、君は滅んだ世界を背に嬲り殺してあげるよ」

「させるものですかッ!!」

 百々代は一切の躊躇なく、千生龍の許へと駆け出していき、擲槍射撃で気を引こうと試みる。

「甘い甘い、なんで僕が同行していると思ってるんだよ」

 四九階層から這い出てきた有象無象の魔物魔獣は、千生龍の縦となるべく飛び出しては擲槍射撃を阻害した。津波のように押し寄せる敵の数に、百々代は歯牙をむき出しに両目を露わにしてはフーリ諸共敵群へと金の瞳を向けていく。

(あの瞳はまずい、壁になれよ僕の生成物たち)

 作られた高波の影響で本命には金の瞳が及ばず荒れ狂い同士討ちは始めた相手に押しつぶされないよう、百々代は一旦退いていくと。

 フーリと千生龍は隙を突いて空を飛び、通路へと突撃して破壊、四七階層へと進んでいってしまった。

「くっ」

「チッ、この数を処理していたらアレは追えんぞ」

「仕方ありませんね…。私共が時間を稼ぎますので、篠ノ井隊は彼の龍を追い討伐してください。若手の貴方たちに重荷を背負わせてしまうのは本望ではありませんが、最小且つ最大戦力の篠ノ井隊であればなんとかできる、そんな気がするので」

「…、また顔を見せろよ、先輩方。篠ノ井隊は千生龍を追う、行くぞ!」

 一帆の言葉に肯いた六人は全力で階層を上がっていく。

「また顔を見せろ、か。そうも言われちゃ、おちおち骨も晒せないか」

「ですね。小町を中心に陣を敷き、防衛戦を行います!一匹たりとも通さず、邪魔をさせませんよ!!」

「「「応!!」」」

 三河隊を中心とした計六個の隊は、魔物魔獣を殲滅すべく徹底抗戦を開始するのであった。


「ははっ、他の人族を見捨てて僕たちだけを追ってきたのかい?なんていうんだっけ、ジコギセイ?くだらないな」

 耳障りな雑音を無視した百々代が金の瞳で千生龍のみを狙っては睨めつければ、僅かに巨躯を震わせて飛行を停止、回頭しては彼女のことを睨めつける。

「おい、なんで止まるんだよ!僕が取り込んで生成したんだぞ!?」

「グルルルル…」

 フーリの言葉など意に介すこともなく、千生龍は大きく息を蓄えて口の端から炎が漏れ出す。

 バチリと痛みを感じるほどの感覚が百々代の火傷痕を走り、拙い攻撃がやってくると察知して。

「一帆!障壁を出せるだけ出して!!ほんと、有りっ丈の!!」

「範囲を狭めて数を用意する!お前ら詰めろ!!」

 顎が降りて凶悪そうな牙が生え並ぶ口の奥、喉からは日光を思わせる眩い光が渦を巻いており、篠ノ井隊が防御姿勢を取った瞬間に光線として灼熱の炎が放たれたのである。

「あっはっはっは!後で殺す心算だったけど、死んだのならまあいいや!厄介なやつだったよ、篠ノ井百、ぐべっ!!」

 宙に浮くフーリは今まで何処にもいなかったはずの、何者かに蹴飛ばされて地上へと落下していく。

「またか!またかよ!篠ノ井百々代!!!」

 自身を見下す青と黄色い瞳をした女に激情をぶちまけて、フーリは地面に叩きつけられる。

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