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三〇話②

 大魔宮へと足を踏み入れた篠ノ井(しののい)隊が目にしたのは、おびただしい数の魔物魔獣を押し返すべく防衛戦を敷く同業者。基本は天閣楼てんかくろう迷宮で見かけた面々に、足早に参じた者らが加わったの連合部隊。

「百々代。先ずは一発、花火を上げてくれ」

「うんッ!離れててね!」

 一帆は自身らを守るため障壁を展開し、放電から仲間を守る。

「雷、放!」

 一歩、踏み込んだ瞬間に脚部から雷が放たれて、零距離擲槍ブースターが展開。雷轟と共に百々代は吹き飛んでいく。その姿は迷宮内を走る一筋の流星で、彼女を知る巡回官らは口端を上げた。

 敵群中央目掛けて飛んでいった人間砲弾ももよは、背部から零距離擲槍を連続起動。超威力を以て三点着地を決めると、百万雷で周囲を焦土に変える。

「巡回官の篠ノ井隊、参上です!」

(敵の大半は木人。そういえばここは樹海階層だったっけ)

 見るも無惨な荒れ地とかした階層を見ては、襲いかかってくる木人へ回し蹴りをお見舞いし、衝撃とともに生じた放電で天牛虫かみきりむしこうと試みる。が、イマイチ。

「おーい、『小雷龍』!そいつは中に虫がいて、それを潰さんと意味がないんだ!」

「あ、はいッ」

 ぷっくりと尾装を細長く展開し、木人に巻き付けては手繰り寄せ擲槍加速及び放電の乗った踵落としで、本体ごと叩き潰しす。

駆刃くじん!」

 勝永の起動句を耳にした百々代は地面を蹴っては高く飛び、浮き渡る黄で着地までの時間を遅らせつつ目下を伺う。旋颪つむじおろしが無数に広がって木人を細切れに変えていくも、天牛虫を的確に狙える迷宮遺物ではない。

 所々から現れる天牛虫を視認できた百々代は。

「起動。開花蕾かいからい

 雷で出来た球体が発生したことを確認し、擲槍移動で一切の迷いなく離脱を行う。膨らんだ球体は開花するが如く広がっていき、広範囲を雷で埋め尽くし木人と天牛虫を焦き殺し、荒れ地を煙立ち込める焦土へと帰る。

「ここはわたしたち篠ノ井隊が受け持ちます。皆さんは一時撤退をして、休息をとってください」

「承知しました。では撤退しますよ、小町は負傷者の治療をお願いします」

「畏まりました」

「ふぅ…、」

 姿勢を低く二階層へと向かう道を検めていれば、木人とそれに紛れた黒い狼型の敵がわんさか現れてきて、巡回官らが苦戦をしていたことを悟る。

「一帆も陽茉梨さんも、未だ溜めててね。蘢佳は冷却時間無視して牽制射撃、弾幕を張って、勝永さんは合間に駆刃を。利市さんと理愛さんは抜けてきた相手の露払いをお願いね」

「「了解」」

 これでいいかを一帆に尋ねるべく視線を向ければ、小さなうなずきが返ってきて胸を撫で下ろす。

「それじゃあ、わたしはもう一回ッ」

 百々代は再び敵陣へ吶喊とっかんする。

 轟の蜂杖から繰り出される無数の擲槍は貫通力も高く、木人に空洞を作り出していくのだが、やはり見えない部位に隠れた相手を狙えるほど密度も高くないため一匹二匹が精々なのだが。

 そんな状況に腐ることなく、蘢佳は自身の役割を果たしていく。

(魔法が出なくなった)

「勝永!」

「承知。駆刃!」

 広範囲に展開する駆刃は前方を進む木人たちを細切れに変えていき、合間合間から飛び立つ天牛虫を発見した蘢佳が石火砲で射潰していき。蘢佳と勝永の手が止まった合間時、戦場を掻き乱そうと現れるのは勿論百々代である。

「起動。成形兵装くにもりの武狼ラクエン

 一人と一基、堅実に対処する武狼と自由自在に動き回れる掻き乱す百々代の組み合わせは、正に一騎当千の活躍であり派手に目立っては敵を一箇所へ集めていった。

 そんな折りに、信号弾が一つ上空へ昇っていき。

 魔法を溜めていた二人が口を開く。

「――氷花」「――陽芒ひのけさきっ!」

 二人の迷宮遺物を経由して放たれた魔法射撃は一度高く上がり、百々代がまとめた地点へ目指して落下していく。最初に氷花が相手を囲うように氷の檻を作り出し、ど真ん中へと陽芒が降り注ぎ相手を塵芥へと変えていったのである。

 迷宮内での対魔物魔獣は篠ノ井隊が頭一つ抜けており、一隊で軽々と対処していく。

(敵の発生は一貫して深い階層から…何処を見ても自然な発生は無いように思える。…一旦先行して様子を探ってこよっか)

 単独行動を示す組み合わせの信号弾を打ち上げれば了承されて、百々代は単身で階層を潜る。

「百々代が外れたが俺たちであれば他の巡回官が戻ってくるくらいの時間は稼げるだろう。利市りいち理愛りあ、お前たちにも積極的に動いてもらうぞ」

「ああ、承知した」「あいよー」

 成形武装を構えた利市と理愛は並び立っては魔物魔獣の群れへと向き直る。

「理愛と肩を並べて闘うことになるとは、思いもよらなかったよ」

「こういうのやりたかったのよね、基本補助ばっかりだったし。さあ百々代さんの代わりを努めよう」

「わかっているさ」

 追風おいてを起動しての高速機動を開始した二人は、群れをなし迷宮外を目指す木人たちを切り裂いていく。一匹一匹蹴りを就けるのではなく、一定の場所で動けなくなるよう脚部を斬り落としては、縦横無尽に駆け巡る。

 理愛の成形体は武狼に近い、細かな動作補助のない一から一〇までの全手動。それ故に細かな調整などが行えて、人体では出来ないような動きを戦闘に落とし込んでいた。

「勝永さんの、来るよ」

「私に掴まれ理愛」

「わかった!」

「ふんっ!!!」

「駆刃!!」

 飛来する駆刃に合わせて利市が使ったのは百々代も使用する零距離擲槍。追風と擲槍移動、どちらかの上蓋に触れることで片方が有効化する、黒姫工房の職人が考案した機構が採用されていたりする。

「起動。陽芒!ってやっぱこっちは制御難しいー!」

 放たれた理愛の陽芒は、矢鱈滅多に、それこそあざみの花が如く広がって木人の一部を焼き貫くのだが、思い描いたようにはいかず悔しがった声色をしており、如何に陽茉梨の魔力制御が上手いのかが伺える状況だ。

 そうこうしていれば、本家本元の陽芒が飛来。日の眩杖の効果が十分に乗った爆撃で辺りを一掃しきったのだった。

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