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二八話⑭

「つまり、また人が増えたと」

「そういうことになるね」

 迷宮から出れた一行は、防衛官へと偽装された事情と、篠ノ井(しののい)家で保護するという報告を行った。ついでに外で変な魔物を見なかったかと問うてみるも、何も不審な点はなかったのだという。

 利市りいちは身分証もなく、そもそも百港国民でもないので、一帆かずほが身柄の保証をする形で迷宮管理区画での滞在許可を取り付けた。

 宿舎で食事を行って、大部屋を一室借りては話し合いの場としている。

「彼女はわたしの奥さんのはやて。名目上は一帆の側妻そばめさんだけど、色々とね」

「英雄、色を好む。とはよく言うが重婚者とは驚きだ」

「貴族には偶にいるみたいなんで、なんとかなってます」

「紹介に与った、篠ノ井颯だ」

阿連楠あれくす利市こと、アレックス・リーチ三世サードだ。よろしく頼む」

 颯は一帆と比べれば棘々した対応をするでなく、友好的な態度で対応を行っていく。

(過去のことは色々あるだろうが、この男がいた結果、百々代くんと出会えた事を考えれば邪険にはできないな)

「ところで、…異界人が何故に百港国の言葉を流暢に話せるのだ?来たのは初めてだと思うのだが」

「「そういえば」」

 潜行組は利市の言葉に対して疑問に思う前から、色々と有りすぎて完全に失念していた事に気がつく。

「細かなことは私も理解していないのだが、魔法に近い事象だと思ってくれ。異界への道を通すのには他所からの協力もあった故」

 異界の魔法に反応したのは、一帆と颯。新たな技術になり得るのであれば、知識を得ない理由はない。

「あっちの魔法って、なんか長々言葉を話して火の玉とかだすやつですよね、翻訳も出来るんですか?」

「それは人族や神族の用いる詠唱魔法だ。それとは別に魔王族の用いる、フーリの使っていた取り込んだ魔物を再現する力なんかが、魔王族の魔法だ。個人個人で使えるものは異なっており、千の魔法を操るとも言われる魔王族に協力を仰いで、数十年掛かりで完成したのが転移術となっている」

「利市は詠唱魔法とやらは使えるのか?」

「残念ながら洗礼は受けていないので、魔法を使うことはできない。逆にこちらの魔法は誰でも使えているみたいだが、使用するために特殊ななにかをする必要はないのだろうか?」

「魔力質というのが一定値以上必要ですが、日常魔法であればほぼ気にならない程度まで魔力質の必要水準が下げられていまして、ほぼどんな人でも使用できます。利市さんは迷宮門を使えていたので、こちらの魔法は軒並み殆ど使用は出来ると思いますよ」

「迷宮門というと、出る時に使用した構造物か」

「はい。アレは魔力質が低いと使用できないんです」

「運が悪ければ出れなかった、ということか…」

「…そうなりますねっ。とりあえずなんですけど、コレ使ってみてください」

 手渡したのは魔法莢。

「起動句は『起動。蘢佳』です」

 そう、これは蘢佳の予備魔法莢。何かあったときのために製作していあったもの。

「理愛さんは蘢佳みたいな状態なんですよね、なら成形体を使用できるかもしれません」

「ほう」

(やってみるかサテーリア、いや理愛りあ

(やるやる!)

「それでは、起動。蘢佳」

 起動句を口にすれば成形体が現れて、少し待つと少しずつ動き出す。

「うわ、なにこれ、微妙に動きの癖があるんだけど?おおっ?!声が私のじゃなくて、違和感がすごい!」

 百々代っぽい声で話す、成形体の動きに慣れてない様子の理愛は、ペコリとお辞儀をして腰を下ろした。

「どうもはじめまして、天神族のサテーリアこと茶天さてん理愛よ。百々代さんと蘢佳さんは久しぶり、他の皆さんははじめまして!」

「見た目と声の都合か…、味の変わった蘢佳だな」

「これといって違和感もありませんね。そういう芸ですか?」

「自分で言うのもアレだけど手前とそんな変わんなそうな感じ」

「あれ、思ってた反応と違うんだけど?!」

「今度になりますが声とか見た目とか、調整しましょうか」

「ハイ、オネガイシマス」


「さて、これからの話しだ。先ず俺たち篠ノ井隊は槍山迷宮の首魁を倒し、その後、天糸瓜港へと戻って利市の市民登録を行う」

「ちょっと予定は早まっちゃうけど仕方ないね。それと同時にの魔王族二人の情報を仕入れたいんだけど、情報筋なんてある?」

「迷宮内であれば迷管で集まるだろうが、外となれば港防だろう。俺の方でなんとかしよう、叢林が使える筈だ」

「会いに行くときは手土産を持ってってね、颯と結衣姉を助けてもらったお礼が出来てないしさ」

「あの時は俺もいたんだがな」

「それはそれ。今回はお世話になっちゃうわけだし、そういうところしっかりしないと。親しき仲にも礼儀あり、だよ」

「まあ、礼はする予定だったが。いいだろう」

「何から何まで手間を掛けさせてしまう…」

 利市と理愛はわかりやすく小さくなっている。

「助け合いですよ、助け合い。それに迷宮内で起きた事象なので、迷宮管理局の管轄業務ともいえますし、頼っちゃってください」

「恩に着る。ならば、こちらも全力で迷宮管理局に協力しよう。…出来ることは戦うことばかりだけども」

「えへへ、頼りにしちゃいますねっ。迷管は何時でも人手不足なんで」

 そんなこんなで話し合いは続いていく。

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