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二八話⑤

「っ」

 勝永かつなが甲蓋こうがいの魔法射撃を擲槍移動ブースターを用い、限々で回避しては足で勢いを殺し、身体を半回転させながら、起動句を口にしては旋颪つむじおろしを振り抜く。放たれた駆刃くじんは無数に広がり、甲蓋の首手足の比較的に攻撃の通り易い部位を切り裂いていった。

(高機動戦闘、やれるぞ!)

 高揚を覚える彼が使用しているのは、試験型の制限付き零距離擲槍れいきょりてきそう百々代(ももよ)のように一から一〇まで自力で運供するのではなく、使用可能部位を足に限定し移動の加速のみの魔法だ。

 足に魔力を集中する必要はあるものの、魔力操作が得意な者であれば慣れることで自在に起動できるようになっており、魔法実技も優秀な成績を修めていた勝永は上手く扱い始めていた。

 今まで百々代が使用していた零距離擲槍は、二重の纏鎧で衝撃を緩和していたのだが、今現在は放散型纏鎧という防御性能と、耐衝撃に優れる魔法もあるため、これらを用いれば百々代でなくとも素早く動けるようになったのだ。

 ちなみに陽茉梨ひまりは半日と掛からず習得していたが、後衛ということもあり実戦での使用はしていない。製作者たる百々代以外が使えるようになったのも、時間を掛けて調整してきた賜物たまものであろう。

 少量飛来する魔法射撃は障壁で受け流し、踏み込んだ瞬間に擲槍移動を起動。甲蓋を跳び超えて後方から再度駆刃を使用すれば、相手は危機感を覚えたのか甲羅の中に頭と四肢を引っ込め防御の姿勢。

 こうなってしまうと威力不足な勝永では突破が難しくなるのだが、後方では陽茉梨の準備が完了して、陽芒ひのすすきが一帯を爆破し尽くしてこの戦闘は終りとなる。

「ここはこれで終わりですね。百々代さんの方はどうですか?」

「あっちも終わったな。…、百々代、こっちも無事終わったから急がずに戻ってこい、…ああ、大丈夫だ」

 現在は一九階層、これで二〇階層の中間拠点を解放し、迷宮内の防衛官を全員外へと連れ出すことが叶う。

 死骸の大まかな片付けなどを行っていれば、百々代が合流し二〇階層へと向かう。


 二〇階層に到着すれば、現在進行形で防衛戦を行っている風で、百々代と勝永が先陣を切る。

(下手に駆刃を使えば拠点を巻き込みかねないから、内側に跳んで外向きに使用しなければ)

(外郭側の処理を中心に行って、細かな後詰めは一帆かずほと陽茉梨さんに任せよっかな)

雷放らいほう。起動。回削まわりけずる籠手かごのて

 前衛二手に別れて各々の戦いやすく、効果的な場所へと移動し、戦闘へ加勢した。

「うおっと!!」

(連続使用は未だ)

 飛び越えるには距離が足らず、空中での擲槍移動をした勝永は盛大に体勢を崩しては地面を転がり、ひっくり返りながら防衛官らの許へと辿り着く。

「だ、大丈夫、…ですか?」

「丈夫なんで問題ありません!巡回官の篠ノ井(しののい)隊です、防衛官の皆さんを援護すべく加勢します!」

「おお!」

 見るからに疲弊していた防衛官らは、水を得た魚が如く活き活きとした表情へと変わり、応援が来たことを仲間へと伝えては士気を上げていく。

「駆刃」

 無数に分かれ広がっていく派手な範囲攻撃を見せれば、応援という言葉にも実感が湧いてきて、魔法射撃の勢いもわかりやすく増し。少し離れた地点で放電を伴う攻撃が炸裂し始めれば、安堵の色まで見え始めた。

(籠手の構造は正解かな。硬化の魔法を持っていても甲羅を貫通できるし、風嶺龍ふうれいりゅうにも有効だった。前世で観た巨大具足ロボットの武装は正しかったってことだねっ)

 甲蓋を五、六匹倒した頃に回削籠手の表面に罅が入り始めて、あと何匹保つかと試せば、八匹目で砕け散ってしまい、耐久性に難があるのか、はたまた相手が硬すぎるのか考える。

(壊れちゃったかぁ。発条はつじょう心臓機しんぞうきをこれ以上使えないし、性能は打ち止めなんだけど。それでも記録は集めないとね)

 無数の魔法射撃は走って躱し、攻撃を終えて隙を晒した相手の頭部へ、零距離擲槍ブースターの乗った回し蹴りで頭を吹き飛ばし、手からの擲槍で回転する勢いを殺しては、また再び駆け出していく。

 そうこうしていれば、甲蓋の視線は百々代が掻っ攫っており、防衛官への被害が著しく減っていく。

(これで皆動きやすくなったと思うし)

「すぅー…」

 敵を撹乱すべく不識を使用しては視線を切り払い、死角に移動しては郡中に跳び零距離擲槍踵落パイルドライバーで一匹の頭を潰しては、放電で周囲を焼く。

(そろそろ、かな)

 時間的に恢浄かいじょうを用いた無数の擲槍が届く頃かと視線を動かしていけば、ちょうど発射されたらしく数え切れない程の擲槍が一度高く打ち上がり、通り雨の如く降り注いで甲蓋を一掃していった。

 下手に動かなければ当たらないように軌道線を組んでいるだろうと踏んだ百々代は、一切動くことなく仲間の攻撃を見守り、残党狩りへと動き出すのであった。


「いやぁ、お陰様で助かりましたよ。…その、随分と汚れてらっしゃいますが、大丈夫ですか?」

 防衛官は風嶺龍との戦闘そのままに潜行してきた百々代の姿を見ては、大丈夫なのかと疑問を口にした。

「大丈夫ですよ、ちょっと強敵がいただけなんで。一〇階層の防衛官さんにも治療をしてもらいましたしっ」

「そ、それならなによりです」

 男装と身長で男性だと勘違いしそうになったが、声色とやや可愛い顔立ちから女性だとわかり防衛官はやや困惑する。彼女一人が襤褸々々(ぼろぼろ)な状況に。

「とりあえず、わたし共と迷宮の外を目指しましょうか」

「あっはい」

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