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二六話⑨

 百々代(ももよ)たちは迷宮内の中間拠点に物資を送るための、防衛官らの進む道を切り拓くべく迷宮内の魔物魔獣を処理していく。

 一階層一階層をしっかりと探索し、確実な処理を行っていくのは陽茉梨ひまり勝永かつながに経験を積ませるのも目的のひとつなのだが。何時も世話になる防衛官へ感謝を込めての行動でもある。

 彼らとて実力があるのだが、物資の運搬中に襲われるのは厄介この上ないわけで、こうして制圧仕切ってくれるのは楽になるとのこと。

 常駐の巡回官も処理はしているのだがそこまで人数が多くないらしく、全七九階層(首魁階層と回廊階層を除くと七七階層)を全体的に対処しないといけないので、手が回り難いのだ。

 現在は三八階層。足を踏み入れた途端に鉄蝿てつようと遭遇し戦闘を開始することとなる。

「先ずはわたしが出るから」

 そういって百々代が飛び出していけば、建物の陰から人型の敵が現れては彼女へと攻撃を仕掛けた。だが、この程度を対処できないはずはなく、尾装びそうを巧く使い相手の脚部へ尾先突き刺し、動きを遅らせてからあごを蹴り上げて倒す。

 金属で出来たな人型の体躯に黒を基調とした衣服を着た魔獣、鋲影びょうえい。蹴り飛ばされた対象は首が折れているのにも関わらず起き上がり、首の位置を直しては腰を低く百々代を見据える。

 顔には目と思しき発光機官が備わっており、一応のこと口らしき構造の凹みがあり、青紫の液体が漏れ出ている。右腕を持ち上げ、手首に空いた小さな穴を百々代へ向ければ、金属製の弾丸が勢いよく、そして短い間隔で発射された。

(アレが鋲影の遠距離攻撃、魔法ではないけれど一応のこと食らわないようにしないと。…右に遠距離攻撃があるなら、左腕に近接用の刃が隠されていて、両膝から鉄線が出るんだったはずだから―――)

 百々代は不識しれないを用いながら零距離擲槍ブースターで急加速をし、遠距離攻撃を行う右側から近づいては蹴りで腕の関節を殺し、後ろから相手の首を鷲掴みに高く持ち上げ、助走を付けながら地面に叩きつけた。頭部を中心に相手の前面は大きく損傷し、青紫色の液体を飛び散らせて動かなくなる。

(よし、問題ないね。おっとっと)

 倒した相手はあくまで鋲影一匹のみ。未だ未だ無数の鉄蝿が宙を飛んでおり、派手な立ち回りをした百々代目掛けて、銃弾をばら撒き攻撃を行う。

 手元にある鋲影の亡骸を咄嗟とっさの盾にして、腰にいた障壁の魔法莢へ触れては展開。一頻り防いでは亡骸を鉄蝿に向けて投げつけてから、目立つよう擲槍移動で駆け抜ける。

「お待たせ!」

 数には手数を。蜂杖うじょうの設置を終えた蘢佳ろかは照準器を覗いては引き金に指を掛け。

 ――、ズダダダダダダ。装填されている擲槍は円筒型ながら、百々代とはやてが調整した蜂杖専用とも言える高威力仕様。並の装甲では軽々と貫通するそれは、魔力への耐性を持たない魔獣なんぞに耐えられるわけもなく。

 地面行きの切符を配られた鉄蝿は殆どが墜落していった。

「二つ先の左曲がり角から増援、来るよっ」

 真っ先に百々代が敵集団に姿を見せて、先頭の鉄蝿へ擲槍を命中させて一身に敵視を集めてみせる。

「ッ」

 それと同時に左右から、腕から刃を伸ばした鋲影が襲いかかってきて。

「起動。成形兵装くにもりの武狼ラクエン

 武狼を展開し横薙ぎの一振りにて鋲影二匹を一度に討ち取る。

 一人と一基は鉄蝿の下を駆け回り撹乱し、適度に擲槍で応戦していれば陽茉梨が準備を終えたようで、百々代は武狼を解除して一旦距離を置く。

「――擲槍!!」

 飛来する無数の擲槍に、駆け寄ってくる勝永。一頻り攻撃が終われば旋颪で終わり、というのが何時もの流れなのだが、どうやら鋲影の数が非常に多い階層らしく、建物の上層に鉄線で張り付いた相手から勝永を守るべく首根っこを引っ張り手繰る。

「駆――、おうわっ!何を?!、!!」

 足元に弾丸が届き地面に穴が空いたのを確認すれば、驚き頻りな勝永も納得したようで、姿勢を整えてから旋颪つむじおろしを構えなおす。

駆刃くじんは届きそう?」

「届きはしますが躱されますね、…うわっ」

「一旦退こっか、よいしょっと」

 ぞろぞろと現れるは鋲影の軍隊。数は三〇匹程だが一匹一匹が鉄蝿なんかよりも強力なので、百々代は勝永を小脇に抱えて零距離擲槍で急加速をした。

「うおあああ!?!!」

「舌噛まないようにねっ」

 身体に掛かる衝撃に驚き、一声欲しかったなんて要望を言うこともなく、二人は一帆らへ合流をする。

「鋲影が三〇くらいくるよ」

「承知した。蘢佳は敵が見え次第射撃を開始、陽茉梨は蘢佳の攻撃が終わり次第、まあ何時も通りだ。勝永は…動けるか?」

「大丈夫、です」

「なら百々代と近付いてくる相手の露払いをしろ」

「承知、しました!」「りょーかいっ」

 わらわらと現れたそれらに銃口を向けては、引き金を引いて擲槍を射出していく。鋲影は鉄蝿と比べて動きの速い魔獣なのだが、高速高威力高連射の蜂杖は厳しく多くが蜂の巣へ変えられていった。

 そんな中で色合いが違う、両腕から刃を伸ばした鋲影が擲槍の雨を掻い潜り接近を試みていた。

(なんか厄介そうだし、さっさと片付けた方がいいね)

「勝永さんは駆刃で牽制をお願い」

「わかりました。…、駆刃!」

 巧いこと蘢佳の射撃に合わせられた駆刃は、直撃確定の起動で色違いの鋲影に向かっていったのだが、両腕の刃を一度振れば駆刃が斬り裂かれ進行の妨害にすらならない。

「起動。数打かずうち蜉蝣翅かげろうばね』。…雷放らいほう

 蜉蝣翅を展開した百々代は、一歩二歩と距離を詰め刀の背に魔力を集中させては逆袈裟斬さかけさぎりを繰り出すのだが、相手は右腕の刃で百々代の音すら斬り裂く一撃を受け流しては、左腕で刺突攻撃を行う。

 攻撃を受け流されてしまった大きな隙に差し込まれる攻撃に、対処が遅れた彼女は左肩を突き刺されるも、雷放の発動で敵の攻撃が緩み擲槍移動で逃げるも、後を追うのは鋲影で膝から鉄線を射出する。

(百々代さんはとらせない!)

「駆刃!」

 大きく振り抜いた旋颪から繰り出された駆刃は彼女に迫る鉄線を切断、そして勝永も鋲影に肉薄せんと踏み込み、刃を振り下ろす。

 だが百々代の一撃すら受け流す相手、そうそう有効打を許すはずもなく片腕で受け止められてしまった。

(無理か。…けど、百々代さんを潰すなら脚でないと)

(ありがと、勝永さん)

 気がつけば相手の頭上に掲げられた百々代の脚、そこから繰り出されるのは零距離擲槍踵落パイルドライバーなわけで。

 足から展開された擲槍による加速、そして放たれる雷の数々。勝永は脇目も振らず全力疾走で百万雷の影響圏外まで移動すれば、後方では色違いの鋲影が鉄屑に変わっていた。

「擲槍!!いきますわよ!」

「了解っ!」

 蘢佳の狩り残りを潰すべく放たれた無数の擲槍は鋲影の尽くを潰していき、百々代たちの勝利となった。

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