カシオペヤの夜に、星は時を刻んで
木の実時雨の
音を聴きながら
落ち葉を鳴らして
歩く神楽月の朝
和草と笑栗が
微笑み合う小径
さしこむ葉洩れ陽と
枝の長い影が
やわらかにゆれて
少しずつ開く
冬の扉の隙間から
時折凍て風が
街へ吹きわたる中
ツワブキは金色の
花びらをつややかに
風にそよがせて
やがて空を渡りゆく
天紅を見つめながら
白銀の芒が
ゆれるいくつもの
波をかき分けて
カシオペヤは
今宵も星の
シャンデリアのように
北天の空高く
地上を照らす五つ星
北斗七星が
水平線の彼方に
時を汲み上げる頃
月は静かに
瞳を閉じるように
空に飾られた
星のシャンデリアが
街を照らして
カシオペヤは
今宵も星の
階段のように
一段ずつ階段を
上がっていくように
時も一瞬一瞬を
飛ばして先へは
進めないから
見上げた星空は
時が集う場所
数年前の光も
数十年前の光も
幾星霜の彼方の光も
様々な光が
いま、この一つの
宙に寄り添って
昨日があったから
今日ここにいて
今日があるから
明日へと
進んでいけるから
どんな道を
行くかもきっと
大切だけれど
その道を
歩き出したこと
そして
いま歩いていることを
大切にしながら
これから歩いていく
未来の自分の
背中を信じて
月の女神が
眠りにつく夜
星のシャンデリアに
照らされながら
五つ星はまるで
時を刻む
時計台のように
昨日までと今日と
そして
未来を見つめて
カシオペヤの夜に、
星が刻む時を
カシオペヤ座は、2等星を3つ含むWの形で秋から冬に北の空高く上がります。古くから北極星を探す目印とされ、その位置で時を知る星座ともされました。北極星から見て時計の振り子のように見えます。
11月13日は新月で、月の代わりに夜を照らします。なお、「カシオペア座」と表記されることがありますが、国立天文台による星座の呼称は「カシオペヤ座」です。
和草は「やわらかい草」の意味で、丸い小さな沢山の葉がつくアジアンタムのこととされます。笑栗はイガグリが開いた様子が笑むように見えることです。
ツワブキは、鮮やかな黄色の花が初冬にかけて咲き、花言葉は「困難に負けない」です。「天紅」(あまがべに)は、紅く染まる夕焼け雲のことです。
神楽月は11月、「木の実時雨」は、木の実が枝から時雨のように地面を打つ様子を表す言葉です。
季節の星や花をモチーフに、詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。