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6話  作者: マグciel
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緑風竜王との出会い

 5人と別の行動をし始めたソイルは、エンスタシナの北にも広がっている森を抜けて海岸の方へ来ていた。辺りは砂浜が広がっており、波も風も穏やかで変わった様子はなかった。打ち上げられているものが無ければだが…。ソイルは“それ”に近づくと、右半身が無くなっている結機族オートマタであることが分かった。その姿に多少驚いたが、声を掛けてみた。

「とりあえずイリスに連絡入れとくか。(イリス、海岸で結機族を見つけたから保護する。こっちのことは気にすんな、俺がなんとかしとく。)…っと、大丈夫か?…って大丈夫じゃないか。何があったんだ?」

「…あなたは?」

女の子のような声で返事が返ってきたが、その声はか細いものだった。ソイルは右手を見せながら自分のことを伝えた。

「俺はソイル、賢者だ。」

「賢者。対象者発見。メッセージを再生します。」

『レイネールにて結機族による逆襲が起こっており、急遽救援を頼む。』

メッセージからはこの結機族とは別の女性の声が聞こえ、詳しいことを話していないことからも、大変な状況だということが伝わってきた。

「急いで行かなきゃいけないのは分かったが、ここからだと数日はかかるぞ?俺はレイネールに行ったことがないから転移もできないしな。」

「ゼータの体、直してくれれば、行ける。」

「…俺が直せと?」

「そういうこと、頑張れ!――スリープモード起動――」

「…まぁ、直すか。」

ソイルは滑らかな石を魔法で生み出して部屋を作ると不可視化の魔法をかけ、クロス博士の研究室で入手した設計図や素材を利用して、ゼータと名乗る結機族の修理を開始した。しばらくして修理が終わると、辺りは暗くなっていた。ソイルは最後に少し電流を流すと、ゼータは再び動き出した。

「――スリープモード解除――ソイル、ありがとう。」

ゼータは修理された自分の体を触ると何かに気付き、寝転がっているソイルに一言告げた。

「盛った?」

「不満か?」

「…変態。」

「おいおい、それが修理してやった恩人に対しての言葉か?」

「冗談、ありがとう。」

ゼータはソイルの頭付近に座ると、ソイルの頭を少し持ち上げて膝枕をした。ソイルが目を開けると、覗き込むような形で見ているゼータと目が合った。ゼータは紺色の長い髪に、紫の瞳が綺麗な少女だ。しかしソイルは特に意に介することもなく再び目を閉じると、そのまま寝ることにした。どれくらい寝たのか、ソイルが目を覚ますとゼータとまた目が合った。

「ずっと起きてたのか、悪かったな。」

「おはよう。大丈夫、“ソイルだから”。」

「じゃあ早速行きますか~」

ソイルは立ち上がり伸びをしながらそういうと、ゼータも立ち上がり、ソイルに話しかけた。

「ゼータの手、握って?」

「?」

疑問に思いながらもとりあえず指示通りにゼータの手を握ると、ゼータはレイネールへ向けて転移魔法を唱えた。砂浜から二人の姿が消えると同時に、滑らかな石の部屋は消滅した。

―――――

白たち5人は、イトク村での問題を解決したのち、エンスタシナに戻ってきていた。そこにある世界樹と一体化している城の中の玉座へと入った。

「村の方はどうだったのじゃ?」

「村には鏡に化け人々を攫うモンスターが居ましたが、私たちで討伐し人々の救出に成功、行方不明事件も起こらないと思われます。」

この国の女王であるイリス・シルフィードから依頼を受けていた5人は、村で起きたことの報告をした。

「そうかしこまらなくてもいいのじゃヘスティア。そなたらなら解決してくれると思ってたのじゃ。おっと、竜王の事を教える約束だったのじゃ。彼は“緑風竜王りょくふうりゅうおう:しょう”この国の南にある山、リーフベルクを越えた先に“閑静の丘”があるのじゃが、普段はそこにいると聞いておるのじゃ。」

「ってことはいないこともあるのか。上手く会えるといいんだけどな~。」

イリスは約束通り竜王について白たちに教えた。白はそれを聞き、いつものように気楽な感じでそう呟いた。

「ところで兄さんは居ないの?」

「ソイルなら海岸で結機族を見つけたと言っていての、そっちの対処をするらしいのじゃ。“こっちのことは気にすんな”って言っておったし、そなたらは先に進むのじゃ。」

シエルが心配そうにイリスに聞いてみたが、イリスはソイルに対し特に心配している様子はなかった。

「そう…なんだ。うん分かった、ありがとう。」

「うむ。今日は休み、明日出発するといいのじゃ。」

「そうさせてもらいますね。僕は少し疲れましたし。」

「気を付けていくのじゃ~。」

多少の疲れが見えるアルスの手を握る白と何やら悩みがありそうなシエル。普段通りのエリスとヘスティアを、イリスは気楽そうに手を振り見送った。城の1階に部屋が用意されており、そこで一行は休むことにした。そして夜が明けると、5人は軽く朝食を済ませてリーフベルクの方に向かった。エンスタシナを出てリーフベルクへ辿り着くと、石碑が置いてあり進むことのできそうな道があった。

「ここを進んでいけば着けるのかな?」

「おそらくそうでしょう。この石は反魔石と呼ばれる鉱石ですし、低ランクのモンスターであれば寄ってこないと思います。」

白が道を見ながら言うと、アルスがその道に沿って置いてある石について解説した。白たちはそのまま山道を登って行った。登りの途中に部分的に反魔石が置いていない所があった。

「あれ?ここ置いてないね。」

「誰かがどかしたのかな?」

シエルが無いことに気が付くと、白も不思議に思った。すると、5人の横の茂みで何かが動く音がした。そこから白い球体がいくつか飛んできた。

水纏みてん:五月雨さみだれ

白がその球体を無数の水属性斬撃で斬ると、地面に落ちるものや木にくっつくものがあった。攻撃をしてきた正体は茂みから出て、その姿を現した。蜘蛛の見た目をしたモンスターのようだが、その大きさは2Mもあった。

「ベタベタしてそうだと思ったけど、ポイズンスパイダーだったんだね。」

冷静に刀を構えた白はそう呟くと、ポイズンスパイダーに距離を詰め斬り上げた。蜘蛛は周りの木に瞬時に糸を付けるとその攻撃を回避し、今度は毒液を吐いてきた。しかしその毒液は白に当たることはなく、展開された光属性の壁に当たり蒸発した。そしてその後ろでは

「蜘蛛!やだー-!!!!!」

と、両手で頭を抱えてしゃがみこんでいるヘスティアがいた。他の4人はその光景に多少驚いたものの、すぐに切り替えた。

「白さん、僕が補助しますので討伐をお願いします。シエルさんはヘスティアさんを、エリスは周りからモンスターが寄ってこないか警戒してください。」

シエルはヘスティアの傍に付き、エリスもその近くで、真実のファクト・アインを使って周りを警戒した。

「プレ(イス)チエ(ンジ)(ペネトレ)イション」

アルスは魔導書を広げ蜘蛛に向けて光属性の矢を放ったが、蜘蛛に避けられてしまい光は蜘蛛の後ろの木に刺さっていた。蜘蛛はアルスの方に向けて毒の混じった糸玉を放つと、アルスは光属性の壁を展開させ防いだ。

「水纏:一水いっすい

次の瞬間、蜘蛛は後ろにいた白によって叩くように斬られ討伐された。アルスの横には先ほどまで横にいた白と変わり、光属性の矢が地面に落ちていた。ポイズンスパイダーを倒した白とアルスの2人は他の3人の元へと近づいた。

「ヘスティア~終わったよ~。」

「ヘスティアさん、大丈夫ですか?」

討伐した事を白が伝え、アルスはヘスティアの心配をしていた。ヘスティアはシエルの腕にくっつきながらなんとか立ち上がることが出来た。

「ご、ごめんなさい。私、虫が苦手なの。」

「大丈夫、苦手なものの一つや二つくらい誰にでもあるよ。」

「シエル…ありがとう。」

「とりあえず持ってる反魔石を変わりに置いておきますね。」

アルスは反魔石を置くと、腕にくっついたままのヘスティアとそれを許してるシエル、いつの間にかアルスの近くに寄っていた白とエリスは、再び山を登りだした。やがて山頂に着き道が間違っていないかを確認すると、道に沿って山を下り始めた。

「それにしてもさっきのアルス、混合同時詠唱なんて~すごいじゃん!」

「これでも[[rb:然精種 > エルフ]]の血を引いてますからね!それに賢者でもありますし、このくらいは出来ますよ。」

白の横を歩きながらドヤ顔したアルスに耐えられなくなったのか、アルスを抱きかかえて頬ずりし始めた。

「ん~アルス君はえらいね~さすがお姉ちゃんの子だね~」

「ちょっ、やめてください!降ろしてくださいよ、恥ずかしいですよ。」

その言葉により降ろすのをやめた(元から降ろすつもりはなかった)。抱きかかえたまま山を登り、やがて頂上へと着いた。アルスから本気で嫌そうな目を向けられた白は流石に下ろし、5人は山を下り始めた。

「あと半分だね…ってまたなんか来そうだけど。」

シエルがそういうと、また反魔石が無くなっている箇所を見つけた。その間は当たり、今度はソーサリーアピスの群れが賢者たちの前に現れた。

「また虫~!」

「数が多いね、お姉ちゃん」

「大丈夫!私がなんとかするから。波状水刃」

またしゃがみこんだヘスティアの近くにシエルは寄り、白が妖術を唱えると、周りにいるソーサリーアピスは倒されていった。しかし次々に現れ、キリがない状態になっていた。

「これじゃあキリがないなぁ…」

白がそう言った時、5人の周りに強力な風が吹き荒れ、ソーサリーアピスを一網打尽にした。やがて風が止むと、そこには緑髪の男性が立っていた。

「こちらから出向くつもりだったのだが、遅れてすまない。」

「あなたが翔さんですか?」

「うむ、我の名は翔。緑風竜王とも呼ばれている。お前たちのことは知っているから紹介は不要だ。我の秘境に用があるのだろう?案内する、ついてこい。」

白がその男性に対して聞いてみると、その正体が緑風竜王:翔であり、自分たちのことを知っているということが分かった。翔は白たちが竜王の秘境に用があることまで分かっており、案内するために先導した。

「この先だ。」

翔が山を下り木々の間を抜ける時にそういうと、辺りに広がっていた草原に懐かしさを覚えた者と、驚きに言葉を失った者がいた。

「この草原見てるとザフトユーク思い出すね。」

「ですね、懐かしいです。」

「あの丘の上に我の秘境があるのだが…白とシエルの二人は我と共に来い。他の者は異なる場所で鍛錬を積むか、休養を取るのもいいだろう。好きにしてくれ。」

感傷に浸っていた5人はそれを聞くと、白とシエルは他の三人に手を振り、翔の後を付いていった。

「やっぱりあの二人でしたね。」

「そうね。私たちどうしましょうか。」

「一回エンスタシナに戻ってみない?ギルドの依頼とかやるのがいいと思ったんだけど。」

アルスとヘスティアの二人がこの後どうするか考えようとした時、エリスがエンスタシナに戻ることを提案した。

「え、また山を越えないといけないの!?虫嫌なのだけれど…」

「大丈夫ですよ、一度ここへ来れたので転移魔法で移動できます。」

「じゃあ早速行こ~!」

そして白とシエルが竜王の試練に行っている間、アルスとエリスとヘスティアの3人はギルドの依頼をこなすことにした。3人はエンスタシナに戻りギルドへ移動し、受付嬢と話した。

「何か大変そうな依頼とかってありますか?」

「賢者様方が出るような難易度の高い依頼はありませんが、ブリーズの街で起きた窃盗事件についての依頼は誰も受けたがりませんので、やって頂けるとありがたいです。」

「決まりね、その依頼を受けるわ。」

「ありがとうございます!」

アルスが尋ねると一つの依頼を提案されたため、ヘスティアはその依頼を受けることにした。アルスとエリスも不満はなく、その依頼を受けることに賛同した。3人は早速、エンスタシナの西にあるブリーズの街へ向かった。

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