新しい仲間とヤンデレの中の愛
えー、作者の白虎さんです。私が小説を書いている時に一番難儀することは何でしょうか?
答えはキャラクターの名前です。ストーリーはすぐに出てくるのですが名前だけで3時間とか余裕で持っていかれます、(つらい)なのでキャラクターの名前はその話の内容にあやかったものとなっています。
さて、今回の話の中心人物、差出人は「村瀬ハク」さんです、何が名前のモチーフになっているか考えながら読んでいただけると幸いです。
あと、今回から新しい死神、ハイル直属の部下も出てくるのでお楽しみに!
PS、感想、いいねなどいただけると白虎さんがとても喜びます。
初仕事を終えて死神になって2ヶ月後、この仕事にも慣れてきた。高校は夏休みに入ってもう後半、8月でもまだまだ暑い日は続く。夏休みに俺が出来たことと言えば家でゲームしたり二度寝を何回出来るか世界記録に挑戦したりしていた。でも仕事もあるので去年程は堕落しなかった。そして夏休みも残り一週間になったある日、俺はハイルに連れられて死神郵便局に向かっていた。ほぼ立ち入る事は無いが一応仕事場(事務所)でもあるので案内くらいはしておこうという事だった…
……………………
移動中、ハイルが五芒星の魔方陣を書いてワープホールを作っている途中、俺は気になった事をハイルに尋ねた。
「ねぇハイル、そういえばハイルの言うMPって何?」
「そういえば君には説明していませんでしたねぇー、MPとは死神が使う力の源みたいなものです。」
「ごめんさっぱりわからん……」
「うーむ、そうですねぇ…あまり難しく考えなくても良いですよ、RPGでよく使うやつと同じです。使いたい死神の力をイメージして五体(全身)からMPを抽出する、そうするとこんな風に、ほら」
そう言ってハイルは手のひらに五芒星のマークを出して見せる。
「ほえー…」
感嘆の声を漏らす俺にハイルは続ける。
「ワタシレベルの死神になれば大抵の事ではMPが枯渇する事は無いんですが……」
「じゃあ何でこの間とか枯渇したんだよ?」
「無茶だぁーよ。」
ハイルはぽつんと言った。続けて、
「例えばワープとかいつも使う力なら消費量も少ないんだが、死神の力も万能じゃーない…何でも出来る訳じゃーないんだぁーよ……でもワタシレベルの死神ならイメージ出来る事は大抵出来てしまうんだぁーよ、それ程他の死神や手伝い人よりも圧倒的にMPもあるしその辺の融通もきくからねぇー。でもそんなあまりにも荒唐無稽な事……例えば君のスマホから光と共に出てくるとか死神の制服を収納可能なバッチ化するとかね。それで枯渇したのだぁーよ。」
なぜかハイルは得意気に言った。
「いや、制服をバッチ化してくれたのは嬉しいんだけどさ、俺のスマホから光と共に出てくる必要あった?」
「茶目っ気というやつだぁーよ。」
「無駄に消費されたMPに謝れよ……」
「いやいや、MPもたまには枯渇するレベルで使わないと上限が少なくなったりするんだぁーよ。それにイメージは頭の体操にもなるしね。」
「な、なるほど。」
そんなMPに関するハイルの豆知識を聞いた所で「死神郵便局 本局」に着いた。
「わぁ……」
俺は思わず言葉を失った。そこに広がっていた景色はこの世のものでは無かった。いや、実際違うんだけど……空はオレンジとピンクの間のような優しい色をしていてハイルによると昼夜の概念は無いという、周りには色々昔風の建物が建ち並んでいてまるで時代もワープしたようだった。そしてそのメインストリート?をはずれた所に一際大きな建物があった。外観は10円硬貨で見たような平等院鳳凰堂のようだった、大きな鳥居を40回もを越えるとその左右対称的な建物が姿を顕した。
「これが…」
「えぇ、此処が死神郵便局、その本局です。まぁ普段君が来る事は滅多に無いからささっと済ませましょうか。さて…案内しますよー。」
まぁそう意気込んだ割に説明自体は淡白なものだった。ハイルから仕事のデスク、受付、部屋の構造、MPの回復施設…なんかただの温泉だったが。
「本当にささっとしてたな……」
……………………
そんなこんなで今日の仕事に取り掛かろうとハイルに言うとハイルは今日は別の仕事があると言って今日は代理と現場に向かってくれと言われた。
「あと、厳格な性格のカタイ奴だからその辺よろしくたのみますよぉー。」
「……えぇ……」
よりにもよって知らない人(死神)と仕事なんて…コミュ障を舐めているのかあの死神は、と今この場にいないハイルへの恨み言を呟いていると。
「あなたがレンさんですか?」
後ろから突然声を掛けられた。
「はいっ!?」
うん、すっごいびっくりした。うん……そこにはハイルと見比べると少し背丈の小さい…170くらいの赤く腰まである長い髪をポニーテールに括った人が立っていた。
「これはこれは…驚かせてしまい申し訳ありません。」
「あ、あなたは?」
「おっと、自己紹介がまだでしたね。ワタクシはハヤテと申します。今日は仕事を共にすると聞いてこうして迎えに来た所存です。」
「あ、ありがとうございます、俺はレン、レンです。今日はよろしくお願いします。」
「えぇ…此方こそ。」
厳格な人と聞いて身構えていたがハイルとは違い、おっとりとしているが大変行儀の良い人だった、だから自分も何となくそれっぽくなった。そしてハイルと似た目をしていたが鼻から口元まで睡蓮をかたどった朱色の布を巻いていた。着物も朱色で背中に長い刀を背負っていた。
……………………
死神は移動中によく説明をするのかと最近思い始めたがハヤテもハイルに似たのか移動中に説明をしてくれた……というよりは自己紹介の延長だった。なぜか歩きで……
「ワタクシはハイル様直属の部下…といったところでしょうか、かれこれもう250年になりますかね…着物が朱になってからは。」
「死神って時間感覚とか狂わないんですか?俺達人間から見ると途方も無いくらい長生きですが…」
「それは我々死神から見ても同じ事が言えましょう…あなた達人間から見ると悠久の時を生きる死神でも此方から見ると儚いものですよ…お気に障ったら申し訳ありません。」
「いえいえ……」
「まぁその儚い者達が織り成す夢見の手紙を届ける我々の仕事はとてもやりがいがありますよ。」
「なるほど。」
ハヤテはハイルとは違、とても丁寧な喋り方をする。慣れるまで暫く時間が掛かりそうだなと思いながらハヤテの説明を聞いた。相変わらず歩きで……
・死神はそれぞれランクがあって、最上位の死神は四人いること。
・その通称「色死神」の中にハイルがいること。
・それぞれ色死神は緋、藍、山吹、紫苑に別れていて、その各色の中にも三段階の序列があること。(例えば緋の場合緋、朱、橙となる。)
・ハヤテはその中の朱でこの階級になると一人で仕事をする事が出来ること。(基本的に朱の階級の死神は五人いる。そしてそのそれぞれにお付き(橙)が三人付くが俺は直接緋のハイルにスカウトされた為着物こそ橙だが扱いとしてはお付きを必要としない緋のお付きというポジションらしい。)
ハイルってそんな位高かったのかよ!ちょっとだけ態度を改めよう……
「まぁ死神についてはこんな説明ですかね、それでは今日の仕事について説明しましょうか。説明ばかりですいません。」
「いえ、大丈夫です……」
・今日の届け先は小林キョウスケ22才、差出人は村瀬ハク当時18才。当時小林キョウスケと15才から交際関係にあり家の部屋にはキョウスケの写真などが大量に貼ってあったという。しかし交際三年後の18才の時に自宅のマンション四階から落ちて死亡した。
「まぁ、大体こんな感じかな…それじゃ、今日はレンさんにワープゲートを出して貰おうか。」
「へ?」
「あなたも死神になった以上、MPの概念が芽生えた筈です。どうせこれから多用する力ですから試しにやってみましょう。」
そう布のマスク越しでもわかるくらい満面の笑顔で言うのだった。歩きでの移動はこういう事だったのかと思ったが逃げられそうもないのでハイルの言っていたように五体に集中してワープゲートをイメージしてみる。
「こ、こうかな?」
するとポゥ…と音を立ててワープゲートが出来た。
「レンさんすごい…完璧だよ。なかなか初めてで出来る事じゃないからね!」
そうハヤテは興奮したように捲し立てる。
「……突然すいませんでした、それではワープしましょう。」
「……そうですね…」
ほんの少し気まずくなりながらも俺はハヤテとワープゲートをくぐった。
「あ…そうそう。」
「なんでしょうか、ハヤテさん。」
「ワタクシは死神の中でも最も死神らしい仕事をする事が多いです。今日の仕事は危険が伴う可能性があるのでその辺よろしくお願いします。」
「…はいっ。」
……………………
小林キョウスケは村瀬ハクの名前を聞くと少し顔が強張った。目元の傷が見る者に厳つい印象与える。夢見の手紙を受け取るとハヤテに言われるがまま村瀬ハクをイメージして会話を開始する。あとはこの会話を見届けて今日の仕事は終わり、2ヶ月もこの仕事をしているが何だか恋愛に関係した仕事が多い気がする。ハヤテいわく、来る仕事の依頼にも一定の周期があって、今は恋愛係の仕事の繁忙期らしい……そんな事を思い出しながら村瀬ハクの夢見の手紙をみていた。
……………………
俺は夏の終わりにあいつの事を思い出す…15から18まで付き合っていた彼女…村瀬ハクの事だ。昔はまだ無かった言葉だが、ハクは所謂メンヘラだった。俺はハクと付き合う前からストーカーされて学校でも後ろを見ると常にいるくらいだった。でも一度休み時間にトイレに行って用を足して振り返っていた時には本当に驚いた。うちの中学、高校は地方で制服が無かったため私服制だったが、ハクはいつも真っ黒でフリルがゴテゴテについた長いワンピースを着ていた。長い睫毛、それに隠れた瞳は青かった。
そして15才の中3の時に帰り道ふと背筋がピリッとしたのを感じて振り向くとハクが包丁を持っていた。あっという間に行き止まりに追い込まれた俺は。
「キョウスケくん……好きぃ…」
そうこの世で俺の知る限り最も恐ろしい告白を受けた。
……………………
とは言っても付き合ってからハクとの関係はあまり変わらなかった。いつも真後ろにいてたまに話し掛けてくる、そんな事が日常になって3年後、暑さの残る8月のある日俺はハクに誘われて断りきれずハクの家に行った。ハクの部屋は一面黒の壁に俺の写真が貼ってあった、恐怖を覚えた俺は逃げるように帰ろうとすると部屋のドアは開かなかった。
「キョウスケ君、今日は来てくれてありがとう。私ね、いつも不安だったのキョウスケ君がいなくなるんじゃないかって……」
「だからハクちゃんはいつも俺の後ろにいたのか……」
「そうよ、でも私気づいたの!キョウスケ君をこうすればキョウスケ君はどこにも行かずに私の中で永遠に生き続ける……」
そう言ってハクは包丁を取り出して自分の首を搔き切る仕草をした。
「え……?」
「さあ…キョウスケ君……一つになりましょ。」
最後にそれだけ言ってハクは俺に向かって包丁を突き出して走ってくる。俺はそれを避けようとしたが目元を浅く切られた。鋭い痛みが目元に走る。次が来る。咄嗟に窓を開けて飛び込む…我ながらよく反応出来た…ここは四階、窓枠を掴む。しかしその後飛び込んできたハクはそのまま落ちた。その後は覚えていない。何とか窓枠を登りきり駆けつけてきた警察に事情を説明した。壁に貼り付けられた写真には壁に包丁で直接留めた物もあったという。ハクは頭から落ちて即死だったらしい。
……………………
こうして俺は8月の終わりになると目元の傷が疼く。そして今日死神を名乗る二人組から夢見の手紙?とやらを受け取った。そして言われるがままにハクをイメージするのだった。
「キョウスケ君?」
「ハ、ハク……。」
震える声で何とか言うとさっきと場所が違う事に気が付いた……さっき俺は玄関にいたはずなのにこの古傷を受けたあのハクの部屋でハクと向かい合わせに座っていた。
「ここは?」
「キョウスケ君、やっと逢えた!場所なんて私達の愛にはどうだって良いことじゃない!ねぇキョウスケ君、キョウスケ君!」
「う、うんそうだね。」
久しぶりにあったハクは何だか興奮していた。本人から見ると嬉しいのだろうが今の俺にとっては恐怖でしかない。震える声でやっと言い切る。
「キョウスケ君!キョウスケ君は私が死んでも私の事を忘れないでいてくれたね!私嬉しい!」
「うん、ハクの事は忘れたことは今までの人生で一度も無いよ。」
実際そうだった、夏の終わりになると特にだが、夢の中にハクが出てくる事はよくあった……まぁあの時のように包丁を持って追い回され、最後には追い詰められるところで目が覚める。
「私、ずっと見てたの。」
「な、何を?」
純粋な青い瞳を可能な限り開いてハクは言った。
「私は死んでからキョウスケ君の事をずっと見てた。後ろにいつもいたのよ!キョウスケ君が好きだから!」
ハクの血の気の無かった顔の頬が赤くなる。
「それにキョウスケ君は私の事、忘れてなかった!……ねぇキョウスケ君…私達は世界一深い愛で結ばれているのものねぇ……ねぇキョウスケ君……」
「う、うん、そうだよね。」
ハクの喋り口調はだんだん粘着性を帯びてきた。
「キョウスケ君……私ずっと寂しかった……ずっとキョウスケ君の側にいたのに私は15才のままなのにキョウスケ君は22才になったもの……ずるい。」
「ごめん…ずるかったかな……」
最早何に謝っているかさえ解らなくなってきた。そしてハクは的確に弱いところを突いてきた。
「ねぇ、キョウスケ君は今お見合いを控えているね?もちろん断るよね……私の私達の愛のために!」
「う……」
そうだ、俺は今お見合いを控えている。親父の工場が不景気で潰れそうと知り合いに言ったところその人の工場も後継者がいないということで俺が婿入りすることで助けてやると言われたのだ。俺は親父の提案を受け入れた。お見合い相手とはもう何回か会っており、向こうも俺を気に入ってくれていた。来月には婿入りする予定も立っている。
「そ、それは……」
「何?無理なの?」
「ちょっと……ねぇ…」
「……やっぱり…」
瞬間、ハクの言葉から粘着性が消え、代わりに冷たさが入った。
「ハ、ハク?」
「やっぱり…死んだ私の事なんてどうでもいいんだ!私……ずっとずっとずっと信じてたのに!キョウスケ君を信じてたのに!キョウスケ君は私の事を何とも思ってないんだ!それで私達の愛を裏切ってあんな女と結婚するんだ!キョウスケ君の嘘つき!嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき!」
ハクは冷たい口調から怒りへと変化し、叫び始めた。
「ハ、ハク!」
「……そうだ……やっぱりこうするしか無いんだ……」
「っ!?……」
いつも間にか俺の座っている椅子に俺は鎖で手と足を縛られていた。鎖は皮膚に食い込む程きつくてまるでびくともしない。ハクの方を振り替えるとハクはあの包丁を持っていた。
「今度は逃がさないわ…キョウスケ君…私の…私だけのキョウスケ君……」
そう言ってハクは机に乗り俺の心臓に向かって一直線に包丁を振りかざしてきた。
「う、うわぁぁぁぁ!」
「危ないっ!」
遠くで誰か…死神の方だろうか叫んだような気がした。
「ごめんな、ハク……」
包丁が振り下ろされる0.5秒の間に俺はハクへの謝罪を口にしていた……もう何回目かわからない謝罪の言葉だった。せめてハクに殺されて向こうでハクとやり直そう…親父……ごめん…俺、親父の工場継げそうにないや。
ザクッ!
……………………
「………え…」
「き、キョウスケ君……」
そこには睡蓮を象った布を顔に巻いた死神がハクを刀で袈裟斬りにしていた。
「ハ、ハク!!!」
「キョウスケ君…愛して……」
最後に「る」が付いたのかそれともハクは俺に愛して欲しかったのかは解らない。死神は俺に向き直りこう言った。
「小林キョウスケ様…申し訳ありませんでした。あなたをお守りするためにはこうするしかなく…」
「い、いえ…守ってくださりありがとうございます…は、ハクは?ハクはどうなったんですか!」
「ハクさんはこの刀で一時的に魂へと返しました。しかし死者が生者を傷つける、または傷つけようとするという冥界の禁忌を犯しました。ハクはあの世でその罪を裁かれることでしょう。」
「……そうですか。」
「ハクさんは確かにあなたを殺そうとしました、それも2度もです。これはあってはならない事です。しかしあなたもこの先心得ておく必要があることがあります。」
死神の口調ははっきりしていた。
「俺が心得ること?……何でしょうか?」
「それは……」
一拍置いて死神は答えた。
「それはハクさんは確かにあなたを愛していたことです。人は人の数だけ人の愛し方があります、ハクさんは本当にあなたが好きで堪らなかったのでしょう。殺して一つになることが彼女の愛し方とは言いませんが、あなたも彼女の言葉をあしらうように彼女のイエスマンのように軽々と愛してるとか同調していたのも事実。」
「っ!……はい…」
「彼女は裏切ったと言っていた。決してそれが間違った喚きでは無かったことを心に留めて置いて下さい。」
「はい…解りました……」
俺は本当にハクの事を愛していなかったのかもしれない…そう思った瞬間、俺は心が押し潰されそうになった。そしてさっきハクが持っていた包丁で自殺しようと包丁を自分に振りかざした。そうしないとハクに申し訳が立たないと思ったからだ。
が…その包丁はもう一人の死神に取られてしまった。そして俺にこう言った。
「死ぬことだけが罪に対する贖罪ではありません。俺は死神になってまだ日が浅いですが…手紙を受け取ったどの人もその人の死にちゃんと向き合っていました。でもあなたのように罪を償うために死を選んだ人はいませんでした。それにあなたはお父さんの工場を継ぐのでしょう?泣いてへこたれてばっかりじゃなく、あなたもちゃんとこれからの事を考えましょう。」
「はい……ありがとうございました…本当に。俺、ちゃんと前向けそうです。俺、強くなれました。」
布を巻いた死神が、
「そう、それでいいんです。これからちゃんとお父さんを支えるんですよ!」
「はいっ!」
そう言い残して死神達は空へと飛んで行った。俺はこれから親父を支えるために工場に足を向けた。目元の傷はいつの間にか消えていた。8月の夕暮れ、工場は人手が足りないのでまだまだやる事は沢山あるだろう。俺は少し暑さの涼んできた夕暮れの空の下を駆け出した。
……………………
「ハヤテさんのその刀、そう使うものだったんですね……」
「そうですね、最も死神らしい仕事、おわかりいただけましたか?」
「はい、解りました…あの人、キョウスケさんはちゃんと前に進めそうですか?」
「あぁ、進めるでしょうね。レンさん、死神の仕事は二つあります。一つは死者をあの世へ送る事。死神と聞くと死を連れてくる者だと思うかもしれませんがもう一つは残された人の未練を連れていく事です。レンさんもこの仕事を通して見たでしょう、残された「宛先」とされた人が死者、故人との一定時間最期の会話を通して前に進んで行ける姿を。」
「はい、俺も死神になれて残された人が前に進んで行くのを見て、ハヤテさんがこの仕事にはやりがいがあると言っていた意味がわかりました。」
「それならなによりです。」
そう言って刀をしまうハヤテさんはにっこりしていた。そして何故巻いている布や刀に睡蓮の意匠が施されているのか教えてくれた。それは睡蓮には古くから死者に対する敬愛の意味があって、こういった仕事をよくする自分に戸惑いを覚えていた事をハイルに話したとき、ハイルはこの刀、「睡蓮刀青峰」をくれたそうだ。刀身は朱色をしているのに峰は青く輝いている不思議な刀で今では自分の一部とも言っていた。
「今回の仕事を通してレンさんがこの仕事を懐疑的に思われたらどうしようかと思っていましたが、その心配は無さそうですね。」
「はい、大丈夫です。」
俺は今回の仕事を通して前に進むことの大切さを学んだ。少し教えと違うかもしれないが夏休みはまだ一週間あるし3日後には納涼祭もある。うじうじしてないでクラスの人を誘ってみよう。前に進まないと俺は永遠に人と関われないだろうから。
……………………
翌日電話にて
「もしもし。」
「何?レン君?」
「明後日の納涼祭、一緒に行かない?」
俺はやっと出来た友達を納涼祭に誘う事が出来た。
さて、今回の話の中心人物であるハクさん、モチーフはわかりましたでしょうか?……答えはいつかにして、名前の決め方で一つ、小説を書く時に事故要素を紹介します。それは、ストーリーに基づいてキャラクターの名前を決めているため、執筆途中によくキャラクターの名前が変わってしまうのですが、その変えた部分をよく直し忘れます(ポンコツ)なのでもしこの先そんな事があったら誤字報告お願いします。以上、白虎さんでした!