俺と栞と変態と
どうも、初めまして、まだまだ至らぬ作品ではありますが、どうぞ最後までお楽しみ下さい。
「ハッハッハ、ワタシはそう、愛の死神、ハイルである!君のその未練、ワタシがなんとかしてさしあげようじゃーないか。」
「は?」
俺は夕刻レン、今年高校一年生になる16才、スクールカースト最底辺の陰キャでほぼ誰とも話せない。身長は175と無駄にでかいが度のきつい丸眼鏡をしていていつも文庫本を読む。オタクではない、こんな高いような低いようなスペックの狭間にいる俺だが、自ら陰キャになった訳ではない。それは過去に一人だけ彼女がいた事だ、そこで起きた事がトラウマとなり人と話すのが苦手になってしまったのだ。だから徹底的に人との関わりを無くした結果今に至る。
授業終了を告げるチャイムが鳴る、挨拶が終わる、それを期にクラスメートは各々休み時間に入る。高校に入ったはいいものの人と話せないせいで退屈だった。この小説も読み終わってしまった、主人公が神と戦うものらしいがあまり面白く無かった。役目を一旦終えた栞を適当な適当なページに挟む…それはオシロイバナの押し花を栞にしたもので既にオシロイバナは茶色に変色し美しい色は失われてしまっている。まだ二年間しか使っていないが花の寿命は短いものだ、栞という外界から隔絶された空間でも流れる時間を止められるわけではない、そうして中の花は朽ちていく。自分もいつかは過去を忘れ人と再び話せるようになるのだろうか…いや、それはない。栞の中と違って自分の心の中は今もあの時のまま時間ごと凍りついている。チャイムは今日の授業が終わったことも示すチャイムだったので高校を後にする。家に着いて暫く寝た後…もう午前1時じゃねぇか。
「はあ、もう嫌になったな…」
そんなことを独りぼやいてスマホの電源を入れる、…すると突然スマホが光り出した!
「う、なんだなんだ?」
光が収まって目を開くと
「ハッハッハどうやらお困りのようだぁーねー。」
うん、えーと、なんだか身長が180はありそうなスラッとした好青年が立っていた、えー、この時久しぶりに自分より高い人を見た、見たといっても俺より高い奴はいるが意識を向けないので久しぶりに上を見上げた。そしてこの時首をやった…首をさすりながらもう一度見るとそいつは緋色の着物に黒の袴を履いている変な格好をしていた。いや、スマホが光ってこいつが出てくる方がよっぽど変だけど…目は切れ長で瞳は着物と同じ緋色を湛えていた。
「え、誰?」
俺が聞くとそいつは口を開いた。
「ハッハッハ、ワタシはそう、愛の死神、ハイルである!君のその未練、ワタシがなんとかしてさしあげようじゃーないか。」
「は?」
それが自称愛の死神、ハイルとかいう変態との出会いだった。
「うーん?君のその目は…ワタシの言葉が信用出来ていないようだぁーねー?」
「いや、唐突にスマホから出てきた変態からそんなこと言われたって不信感を抱くに決まってんだろ、だいたい、変な格好と喋り方は何?未練をなんとかって何?」
「君さっきから変とか変態とか失礼だな、ワタシが来たのは君がいつまでも未練タラタラだから来てやったんだぁーよ、もう二年も誰も呼んでない悲しい部屋に久しぶりの客人が来たんだ、さっさとお茶くらい出しやがれくださいって話じゃーないか。」
「しれっと二年人が家に来てないことディスってんじゃねーよ!呼んでもない客に出す茶なんぞねぇよ!あと急に口悪いな。第一、俺は人と話すのが苦手なんだよ!」
「口が悪いのは君じゃーないか、それに今君はこうして初対面のワタシと仲良くレスバしてるじゃぁないか。」
「…」
「やっと、話を聞く気になったみたいだぁーね。それでは改めて話を聞いて貰おうか、ワタシがなぜ君の所に来たのか、何をしに来たのか。」
仲良くレスバとかいう意味不明な単語が引っ掛かったが、要はこういうことらしい。
・自分は故人からの最期のメッセージを届ける愛の死神だということ。
・俺宛の最期のメッセージがあること。
「…成程。」
「やっと解ってくれたようで何よりだぁーよ。それじゃ、君へのメッセージを届けるとしようか。」
するとハイルはごそごそと懐を漁り始めた、そして翡翠色に輝く30センチくらいの球体を取り出した。
「これが、君へのメッセージさ、我々はこれを夢見の手紙と呼んでいる。これに触れてその人の事を強くイメージするとメッセージが見られるんだぁーよ。差出人は朝倉コウ、だったっけな。」
「…!あいつが…これを?」
朝倉コウは俺が中学2年生の時に付き合っていた人だ、俺はハイルから夢見の手紙と呼ばれる球体を受け取るとハイルは言った。
「さぁ君へのメッセージを聞こうじゃーないか。」
黙って頷く、夢見の手紙はふわふわと浮かんで仄かに点滅している、そこに綴られた想いを表すがごとく。
「コウ…」
俺は夢見の手紙に触れてコウを想い描く、しかし何も起こらない。
「あれ?」
「イメージが足りないのさ、仕方ない、ワタシも忙しいが君がどうして人との関わりを無くしてしまったのか、事の顛末を聞こうじゃぁー無いか。」
「何でお前に俺のトラウマを教えてあげなくちゃいけないんだよ。」
「イメージが足りないからだと言っているだろう、それに君は此度の真相を知らないみたいじゃーないか。人に話して出来るイメージもあるだろう、それに1時とはいえ、夜はまだまだ長いからねぇー。」
そう言ってハイルは胡座をかき、こちらを待つように見上げるのだった、俺はそれに従って昔話をする他無かった。
俺は中2の時、陰キャのグループに俺はいた。陰キャとはいえどみんな明るい人達でいわゆる陽キャまでとは行かないけど、といった陰陽師?とか周りとかから言われる感じだった。その子はコウ、青髪の長いロングで前髪は目元まであった。いつも遊んでいる時一人でいて黒のジャージを着ていた、いつも少し寂しそうにしていた。グループは同学年の男女合わせて五人と一つ年下の四人で構成されていた、その年下の子の一人だった。馴れ初めは覚えていない、誕生日の帰り突然告白された。嬉しかった、本当に…陰キャのグループといえど土日には大きな公園や、ショッピングセンターに行って遊んでいた。もちろんゲームも。付き合ってからはグループの人にヤジを飛ばされながらも遊んでいる間は楽しかった。おどおどした子であったが、時折見せる笑顔が可愛かった。しかしそうして付き合ってから三ヵ月後、唐突に呼び出され、
「別れましょう。」
と言われた、何か俺に悪いところがあったのか、色々と勘ぐったが答えは出なかった。理由を聞きたかったが、別れを告げられた直後、彼女はトラックに轢かれて死んでしまった。事故か自殺かは解らない。
「うーん、つまるところ君はー、コミュニケーションの失敗によって彼女がトラックに轢かれて亡くなったと、そしてそれを自分のせいなんじゃないかと…人との関わりを無くせばもうこんなことにはならない、そういった所かな?」
「あぁ、そうだな。」
「どうやら人に打ち明けて気持ちの整理が着いたようだぁーね。そろそろイメージも固まってきたことだろう、夢見の手紙をもう一度試してみるといい…そこに君の知りたかった現実があるだろう。」
頷いてもう一度夢見の手紙を触れる。イメージといってもやっていることは変わらなかった、イメージが足りないというよりかコウが残したものを見るという覚悟が足りなかったのかもしれない。
ポゥ…という淡い音を立てて夢見の手紙が何かに反応するかのように俺を包み込んだ。目を開けると俺はコウの記憶を見ていた。
私はコウ、今年になってやっと中学生になった。名前の由来は母親がガーデニングが趣味で、青紫の美しい花をつけるコリウスからとってコウだそうだ。私はこの名前を自分でも結構気に入っている。私は根っこからの陰キャで、小学校から友達が通算して五人いない、今喋られる友達は同級生のA君とBさんだけ、二人とも私と同じ陰キャで、小学から仲良くしてくれているし、私が好きな花の話題もよく聞いてくれるいい人達だった。しかし最近、遊んでくれる頻度が少なくなった気がする。理由は聞いてみるとすぐに分かった、一つ年上の人たちと遊んでいるのだと、私は人付き合いがとても苦手だけど、その人たちとなら仲良くなれるかもしれない、そう思って、そのグループに混ぜて貰うことにした。
しかしもともと人付き合いが苦手な上に、年上ということもあって、全然馴染めなかった。やっぱり私にはこんなこと向いてないのかもしれない、明日ちょっと遠い公園に行くらしいからそれを最後に関わるのを止めにしよう。二人はこれからも関わると思うが、流石に遊んでくれなくなる事はないだろう。よし、そうしようと思って今日公園で摘んできたオシロイバナをスマホカバーに紙で挟んで押し花にして、布団に入った。夢は覚えていない。
翌日、私は憂鬱な気持ちで集合場所に行ったそもそも陰キャのグループといえど陽キャがいれば何も出来ないだけで元は明るい人たちだ、それに比べて私は本当に人と関わるのが苦手で、今日も一言も話せないんだろうな、なんで来たんだろう、とネガティブになっていた。聞けば今日はグループのリーダー格でもあるレンさんの誕生日らしい、何か持ってきたら良かったと思ったけどいや、持ってきてもどうせ渡せないなと諦める。
公園に着いたのは昼だった。みんなで弁当を食べた後、ちょっと鬼ごっこをしようという話になって、私は真っ先に荷物番をすると名乗り出た。そしてみんなはそれを了承した。山の公園だったのでブランコに荷物を置いてみんなは各々逃げていった、頑張れー、とささやかに応援してみんなが帰る時間を待った。
そして午後六時になった。みんなが帰って来て、改めてレン、お誕生日おめでとうーと盛り上がっている。しかしその輪の中にレンがいない、まだ帰ってないのかな?そう思っていると唐突に声を掛けられた。
「コウっだったっけ?」
「ひゃいっ!?」
余りに唐突に声を掛けられたせいで変な声が出てしまった。
「お前さ、いっつも一人だよな、向こう行かないの?」
「うん、人と話すの苦手で。」
「何かお前寂しそうにしてるからさ。一緒に向こう行こうぜ、みんな楽しみに待ってるぞ?」
そう言ってレンは私の腕を引く、話掛けられたことに驚いたが、それ以上に嬉しかった、今まで話しかけられることが無かったからそれは尚更だった。その嬉しさを誤魔化すために私は咄嗟にスマホカバーから押し花にしたオシロイバナを差し出す。
「レンさん、こっこれ、誕生日プレゼント…大した物じゃ無いけど、栞に出きるから今度…一緒に作ろ?」
今日で終わりにしたかったのに、何でこんなしょうもない物をあげてしまったのか、後悔が心を駆け巡る。こんなものいらないと言われてしまうのではないか、不安で堪らなく、レンが言葉を発する二秒間が、永遠にも感じられた。
「…ありがとな。」
「え?」
「いや、俺本よく読むし、大事にするよ。それに栞なら今度またみんな呼んでみんなで作ろうぜ。」
「うっうん!」
「あ、そうだ、オシロイバナって内気、思案とか花言葉があるらしいな、お前なりに考えてくれたんだな、ありがとう。」
そう冗談っぽく言ってレンは私を置いてみんなの所へ振り返りながら走っていく、まるでついて来いとばかりに。私は思わずレンの後を駆け出した、この人達は自分が思ったよりずっといい人達だった、これからも関わっていきたい。私が自分から人と関わりたいと思ったのはそれが初めてだった。そして微かに、恋の予感がした。
そして件の日、あの時とは違う、今日はグループが私の為に集まるんだ、今日は地味な黒のジャージじゃなくて、青を基調としたワンピースを着ていこう。
「そんじゃ、今日はみんなで押し花の栞を作ろうか。」
「わー」
「オシロイバナって実を潰した粉しかイメージ無かったわ」
「案外簡単だねー」
みんな各々楽しんでくれて、私も嬉しかった。
「うん、みんなこうして楽しんでくれてよかったな。あ、もちろん俺も楽しんでるぞ。」
レンが話掛けてきた。
「うんっ、みんな喜んでくれてとっても私嬉しい!」
実際うれしかった。それと同時に、何か胸のなかで大きな感情が揺れ動いていた。
その帰り、私は思いきって思いを伝えることにした。そうしなければまた後悔すると思ったのだ。
「れっレン?」
「ん?」
言葉を発した途端上ずってしまい諦めかけるが勇気を振り絞って続ける。
「この間は、ありがとう、私、今まで人と関わるの苦手だったけど、この前、レンが…話掛けてくれて、そっそれで私、ちょっと人と関わるのも、悪くないかなぁって、で、でもそれ以上に今、私レンが…好き、お願いします、私と、付き合って下さい!」
言い終わった瞬間、何てことを言ってしまったんだと思った。我ながら展開が早すぎる…しかし同時に自分の気持ちに改めて気がついた。私はレンが好きだったんだ。一人という孤独から救ってくれたレンがとても眩しくて、あの時名前の「向」(コウ)の通り、初めて上を向くことができたのだ、だから言ってしまった。
「…」
「れ、レン?」
「…いいよ、よろしくお願いします。これからはグループのメンバーとしてじゃなく、彼氏として。」
「!」
とっても嬉しかった。もう一人じゃない、グループのみんなとも、そしてレンとも。
今日はレンをデートに誘うことができた、嬉しくってたまらない、そうだ、あの時のように押し花を作ろう、レンの誕生日以来、押し花を作ることは私の中でただの趣味では無くなっていった。手頃な花を探すと廊下の花瓶にマリーゴールドがあったのでそれにした、ちょっと難しそうだったけど紙ではさんでスマホカバーに入れる。やっぱりちょっとボコッとなって潰れる。まぁそんなことはどうでもよくなるくらいこの時私ははち切れそうな程幸せだった。この時は…
翌日、私はレンとの初めてのデートに行く日。朝からもう幸せでいっぱいだった。その時スマホに通知が来た、知らないアドレスだと思いながらもリンクを開く、そこには目を疑うことが綴られていた。
「今お前が付き合っているやつ ただのどクズだよ 浮気してるしさ 」
「…!?」
私は言葉を失った、レンが浮気?嘘だ、信じられない、そう、信じられないけど考えるほどに浮気されているのではないかと、そう考えてしまう。フラフラとした足取りで集合場所に行く、正直レンへの愛情は半分冷めてしまっていた、でもレンならもう一度私を愛してくれているかもしれない、それならと思ってカフェに入る。レンはもう既にいた。レンはスマホでゲームをしていた、その時レンは暇潰しにゲームをしていただけだったが、その時の私にはもう私に興味が無いからゲームをしていたのだと思ってしまった。
「お、おまたせ。」
無機質な声で何とか声を発すると、
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。」
そう言ってレンはトイレに向かってしまった、とりあえず席に座ってレンを待つことにしよう、話しは彼が帰ってきてからゆっくり話そう、間違いは誰にでもあるから…そんなことを思っているとふとレンのスマホが見えた、ロックは掛かっていない。これの履歴を見れば浮気相手の素性がわかるかもしれない、そうやって私はレンのスマホをいじり出した。するとメモ帳のところに「誰も見てはいけない」と書かれてあった。これかと思い私はそれを開いた、
「…っ!?」
そこには浮気相手の事なんて書いておらず、私とあった日のことがつらつらと書かれてあった。
「今日はコウに告白された。」
「今日はコウに押し花の作り方を教えて貰った。」
「今日は初めてコウから雑談をしてくれた。」
「今日は初めてコウとデートする日だ、今からとても楽しみだ。」
レンは浮気なんてしていなかった、私はレンより知らない人の言葉を信じて勝手に半ば探偵かのようにレンに探りを入れた。途端にレンとの愛情はレンではなく自分の手によって永遠に失われてしまったことに気がついた。
「あっ見られちゃったかー。」
レンが帰ってきた。咄嗟に
「別れましょう。」
そう言ってカフェを出る。他の客の目が痛かった、でもそうするしかなかった。レンは紛れもなく私を愛していた、でも自分はそれを信じきれていなかった。だから私はあの人の側にいる資格が無い…行きしよりもフラフラとした足取りで私は家へと帰っていた、無我夢中で走った、申し訳なくて…あのままレンといればレンは私への愛の言葉をかけてくれただろう、しかしそんなものは愛する人を信じれなかった売女にとってはこの世の全ての罵詈雑言を浴びせられるようなものだった。レンは優しいから私がいなくても大丈夫だろう、そう滅茶苦茶なことを考えている内に私は赤信号に飛び出し、大型トラックが来たことに気がつかなかった。
バンッ
辺りの通行人が悲鳴をあげる、自分が今どうなっているのかすらも解らず、頭の中にはレンの笑顔だけがあった。
「レン、ごめんなさい…」
そうして私、コウの意識は急速かつ永遠に遠のいた。皮肉にも私は仰向けで上を向いていた。頭をなんとか真横に向けた、レンの方向を向くため。スマホが落ちている、結局マリーゴールドは押し花にはならず、スマホはカバーがボコッしていて、マリーゴールドはただ潰れただけ、自分もこうしてマリーゴールドと共に潰れるだけなんだと微かに絶望を覚える。コリウスの花言葉は叶わぬ恋、私はもとより結ばれることは無かったんだ、そして死ぬ。レンへの贖いすらも果たせず…
空間が歪みコウの記憶から離れていく。そして目の前にコウが顕れる。
「そうだったのか…」
「れ、レン…ご、ごめんなさいっ!私、私…」
「お前、いやコウ、今はこうしてまた逢えたことを喜ぼうぜ、俺はあれから勝手に人との関わりを無くせばいいと思って僅かにいた友達さえ裏切ってしまったんだ。そんなみっともない俺をお前は好きになってくれたんじゃ無いのにな。それに俺こそ、デートの前にお前に一言メールとか電話とかしておくべきだったよ。」
「レン…ありがとう、こんな私を愛してくれて、私嬉しかったの本当に、誰とも話せない私を暗闇から引っ張ってくれて、楽しかったの、でも本当に私なんかを愛してくれてるのかってたまに思ってしまったの、レンは人気者なのに私なんかって、そんなこと、無いって、解ってるのに、解りきってるのに、なのに!」
コウは泣きじゃくって謝罪の言葉を続ける。
「もういいよ、泣き言なんてコウらしくない。また逢えたのにお互い反省会じゃつまらないじゃないか。俺はお前を許す、というか何も怒っていない。あの世でも沢山押し花作れよ、まだまだ先だけど俺もそのうちそっちに行くから…」
そう言って俺はコウを抱き締める。暖かかった、まるで生きているように、コウは泣き止んで抱き締め返してくる。
「うん、私レンのお陰でまた上を向けそう、あんまり早くこっちに来ちゃだめだよ…あと最期に、栞大事にしてくれてありがとう、栞の中の花は枯れてしまったけど私との思い出は時が流れても決して枯れることなんて無い、色褪せることなんて無いから、だから、レンも私を忘れないでね。ずっと見守ってるからね。」
腕のからコウの感覚が消える。夢見の手紙が空気に霧散して消える。
「コウ、ありがとな。俺も上、向けそうだよ。」
「どうやら、過去とけじめを着けることが出来たみたいだぁーねー。」
「うん、ありがとう、ハイル。変態なんて言ってごめん。」
「ややっ!忘れていたと思ったのに覚えていたのか君は。」
「そりゃあね、でも本当にありがとう。お陰でコウとまた話せた訳だし。」
「お役に立てたようで何よりだぁーよ。そんじゃ、ワタシはそろそろお暇させて頂こう。」
「うん、ありがとう。またね、ハイル。」
「おやおや、死神に「またね」なんて演技が悪いですよー。まぁでも、礼を言われると此方とて嬉しいことですな。それではワタシはこの辺りで。」
ハイルが消えた、そして部屋は何事も無かったかのように静まり帰る。今は午前3時、2時間だったがそれはとても長いように感じられた。
それから風呂に入ってご飯を食べて午前3時半、高校生になって初めて、明日は人に話しかけてみようと思って俺は布団に入った。いつもはうつ伏せで寝るのに今日は仰向けで寝た。
どうにかはじめのレンの物語を完成させられました。これからレンがどうなっていくのか楽しみにしていただけると幸いです。