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推しの衣装を手がけてます!  作者: 葵 紀柚実
一章 恋心は内密に
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9 休日の買い物

有給休暇が溜まっている。代休も。

土日に現場回りが入ったり残業の多くなる職場だから班の中で順番に休みを取るようにしていたけれど、後輩たちを優先したため一向に私の分が消化されず、並木チーフに注意をうけてしまった。

「いい?りこが下の子たちを管理するように、私が三つの班全てに目を向けなきゃいけないの。休むことでリフレッシュしていい仕事に繋げる。まぁ、りこの場合は職場も楽しいんだろうけど、ちゃんと切り替えて休みなさい」

「…はい」

センパイは大学時代からの知り合いなので、私の光稀くん推しを知っている数少ない人物だ。

「半休、有給、代休ね。はいサインして」

すっと出されたタブレットの休日提出画面。あとはサインしてポチっと押すだけになっている。

「今週末に三日も?大丈夫ですか?」

「だから、半休で午前中指示出せるようにしたんだけど。なんなら一週間ぐらい休んでもらいたいんだよ、こっちとしては」

センパイはわざとらしくため息。

「じゃぁ、その。日付を来週にしてもいいですか?」

不規則で残業多め。そんなイメージを脱却すべく、ゆとりある職場環境を推奨してくれてるんだけど、なかなか難しい。

「りこは自分で仕事抱えすぎ。サブになったばかりで慣れていないなんて言い訳、そろそろ通用しないよ。下に任せて育てないと」

「はぁ…」

私の作業部屋に来るのではなく、チーフ室へ呼び出されたので、なんかヤな予感はしてたけど、休みのことだけじゃなく、面談が始まってしまった。

「ほら、一人手をかけてる子がいるでしょ?雪…ちゃん?」

「雪乃、小塚雪乃(こづかゆきの)です」

「そうそう、彼女はどんな感じ?」

どう、とは。

後輩のアピールをするべきか、それともシビアに評価することを望まれているのか。

普段から倉沢班は馴れ合いがすぎると注意されることがある。

楽しくないと職場に来たくなくなると思うんだ。

締めるときは私だって厳しく言うもん。

それに、普段から仲良くしとかないと、個性や技術力が見えてこないんじゃない?

そもそも並木センパイが私のことを『りこ』って下の名前で呼ぶからゆるーい雰囲気になったのでは?

学生時代を知ってる人が社内にいると、やりやすいけどやりにくい。

えっと、雪乃ちゃんの事だっけ?

「元々装飾の分野に興味があり、知識に偏りがあったのですが、今は本人の努力もあって弱点のない人材ですね」

私がどれだけ部下を理解しているか、そして部下の評価、色々聞かれたあと、今抱えてる仕事についても報告をしてセンパイから開放された。

サブチーフになって管理職っぽいこともするようになってしまった。私は、生地を触って作品を作って、そんな感じでいれば幸せなんだけどな。



休日。

まぁ、今日は半休で午前出社でしたが。

街はランチ時、でもまず行くべき所がある。そう、ご飯よりも買い物だ。

本社から二つ先の駅へ向かう。

若者で賑わう駅前を通りぬけ、脇道を少し入るとSSR公式ショップがある。

うーっ。久しぶりに来たー!

入る前からテンション上がるぅー。

どーしても、入荷したばかりのF2グッズが欲しいんだ。そう、どーしても。


公式ショップの前には入店待ちの列ができていた。朝一番で配布される整理券、又はネットによる来店予約により入店制限があってもこの賑わい。

私はスマホで予約画面を提示して中へ入る。

SSRのグッズは公式通販でも買えるんだけど、送料かかるし、写真が5枚でセットAとかBとか。一枚づつ選べないんだよね。

ここだと一枚づつ選んで買える。

まずはその写真売り場へ。お目当てのグッズは写真の奥かレジの近くにあるはずだけど、混み合っていているので、先に写真を選んだ方が、人の波に逆らわずにすむ。

はぁ、光稀くんの写真…尊い。

笑顔が眩しくて眺めていられないよ。でもじっくり見ちゃう!

素敵に微笑んでるのはもう、何枚も持ってるから、くしゃっと笑ってるのとか、ぼーっとしてるのとか、ここでしか手に入らないオフショットの光稀くんが欲しいんだけど、そーゆーのってほとんど智史くんと二人でいるときの表情だから、ソロじゃなくてF2ショットになっちゃう。

目が合って照れる二人。

一人掛けのソファーに二人でギュウギュウにじゃれ合う…とか、なんだそれ?

王子と天使が炸裂だろ!

コレ、前回のファンクラブの会報のオフショットだ。衣装と小物がそーだもん。

会報の写真はめちゃくちゃクールだったのに、裏ではこんなイチャイチャかっ?

もぉ、ホントご馳走様です!

有難う!

うん、うん。箱推しだからツーショットでもいいけどね。

でも、やっぱり光稀くんだけの一枚も欲しいなぁ〜。

あ、嘘。一枚じゃなくて何枚も買う。


おっと、写真に興奮してる場合じゃなかった。

本命、店舗先行販売のアクスタを買わないと!

通販に先駆けてアクリルスタンドが販売されているんですよ!

…ん?同じ事二回言ってる?

まあいいや。大事なことは二回言う。


去年発売されたアクスタは数日で完売しちゃって、なかなか入手できなかったの。

再販の再販の…あー思い出したくないっ!

それを受けて今回は生産数を大幅に増やし、店頭と通販で販売時期をずらしてくれたらしい。

休みを今日にして良かった!発売日なら絶対ある!はず!

お目当ての商品は写真コーナーから少し離れた場所にあった。

うわあぁ。踊ってる!

F2がダンスしてるよ!

キメっキメだよ、カッコ良すぎかっ!

前回はカメラ目線の王道アイドルポーズだったから、今回はどのグループも動きのあるものにするって、ファンクラブサイトに書いてあったけど、すごく良いね!これ、いいね!

へへ。

ちょっと口元緩んでにまにましてしまう。

腰に結んだサッシュベルトがひらっと舞うのも、髪が乱れた感じも。

少し屈んで下の角度から煽って見たい。

…フィギュアと違ってアクスタだから下から見たところで、変わり映えしないんですけど…

いや、雰囲気変わるし!横からとか、逆に上からとか舐め回すように見るべきだし!

まぁ、そーゆーのは購入してから家でやろ。

一人二個限定か、二個買おう。


レジへ向かう前に一度店内を確認。知ってる人はいないよね?

入店するときも確認したけどいなかったから大丈夫。

大体、ここで会ったら向こうもSSRファンってことでしょ?

それでも一応『よくわからないけど、姪っ子に頼まれちゃって、困るなぁ、これで買い物合ってるかしら?』の、雰囲気を醸し出す。

姪っ子?いないけど?

従兄弟の子供なら女の子がいるけどまだ、赤ちゃんだし。


社員割引があればいいのにね。

そしたら、ファンなのバレバレか…

無事に購入できたアクスタを、自宅の玄関付近にあるF2コーナーに飾るか、ベッド横の光稀くんコーナーに飾るか迷いながら歩く。…テレビ横でもいいな。

溜まってる雑誌のスクラップも整頓したいし、部屋を暗くしてコンサート鑑賞会もしたい。

とりあえずは『F·F』で紹介してたビーフシチュー食べに行こ。

凛々子の萌え話を書いておこう。というだけの回です。

次回はSSRの研修生のお話。小中学生男子がわーわーしてます。

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